EPISODE17、光と闇を重ねて
「先生!攻撃が効きません!」
ライの元へと立つと、困った表情を浮かべ、耳も垂れていた。
「私が足止めする。援護頼むぞ」
「はいっ!」
エスティから、七色に輝くした魔力が溢れ出る。
「デイルさん!」
「おう!」
ライの合図で、デイルも距離を取る。
「聖魔法と闇魔法が入り交じっているのなら、これは効くだろう」
エスティの全身へ魔力が巡る。
「純血魔法、純心無垢の花園《ヴァージン・ガーデン》」
エスティが杖を振り下ろすと、黒き騎士の周囲に草木が生い茂り、花が咲き乱れる。
手付かずの土地、踏み入れる事さえ躊躇わさせる程の花園だ。
それは儚くも美しい。
純血魔法。
混じり気のない魔力を保有する者にしか扱えない魔法で、どの魔法にさえも効果があり、ある条件を満たしていれば、精度も威力も底上げされる。
「純血魔法って…」
デイルは驚いている。
腹黒いエスティとは程遠い魔法だからだ。
「はい!先生は凄いんですよ!!」
ライが目を輝かせる。
「お、おう?」
「何せ、先生は今まで殿方と交わった事がないのでそこらの純血魔法よりも格上ですよ!!」
「え?」
デイルは顔を抑える。
ライに悪気がある訳じゃない。
大声で女の子がそういう事を話して欲しくないと言いたいところだが、何よりも驚きを隠せなかった。
「つまり…あいつ、しょ…」
口走ろうとしたデイルをエスティが睨み付ける。
最早、殺気だけで人を殺せそうだ。
「純粋なる者の歩む道《ヴァージン・アルク》」
咲き乱れていた花びらが、より一層咲き乱れ、宙を舞う。
花びらの1つがデイルの鼻に付着する。
「あっづッ!?」
ジュッ。
という音を立てて、デイルの鼻を花びらが焼く。
ただの嫌がらせだ。
生い茂った草木は、黒き騎士の足元に絡みつき、どの魔法にも効果がある純血魔法で形成されているため、崩れる事がなく、黒い枝も絡めとっている。
「グギギ…ッ!」
黒き騎士が膝を着き、身動きが取れなくなっている。
「ティー!今だ!」
「準備オッケーだよっ!」
ティルシアの左手には、聖魔法と闇魔法が入り交じる球体が作り上げられていた。
不完全な為か、球体は歪に変形しながら球体を保っている。
「行くよっ!」
ティルシアが距離を詰めていく。
「グガァァァァッ!!」
黒き騎士も抵抗を見せ、純血魔法に縛られた状態でも黒い枝を突き伸ばして来る。
ティルシアは避けながら距離を詰めるも、枝は肩や足を掠めていく。
それでもティルシアは止まらない。
「くらえええええっ!」
ティルシアが突き出した左手は、黒き騎士の胴体へと触れる。
「聖闇公転《セイクル・ダークネス》ッ!」
聖魔法、闇魔法。
この2つは決して交わる事がない。
どんなに複合しても互いに打ち消しあってしまう魔法だ。
ティルシアは2つの魔力の流れを一定に保つ事で作り出す事が可能となった。
しかし、強制的に魔力の流れを一定にしているため、下手をすれば自身の体が損傷しかねない危険性を持つ。
触れた瞬間、辺り一帯を包み込む閃光が走り、黒き騎士の纏う鎧の隙間からも閃光が走る。
光が溢れ、黒い瘴気も晴れていき、空には青空が広がった。
黒き騎士が生成していた黒い枝が塵となって消滅していく。
「倒したんだな!?」
デイルや他の皆も黒き騎士に近付く。
黒き騎士は、完全に両膝を着き、再び動く事はないだろう。
すると、角の生えた兜が砕け散り、倒れ込みそうになったところを思わず、デイルが受け止めたまま横たわせる。
砕け散った兜からは、赤髪が靡き、左目が赤黒く染まった瞳、右目は碧き瞳を持っていた。
「こいつ女だったのか!?」
デイルが驚いていると、赤髪の女は震える手をデイルの顔へと伸ばしていく。
「ティ…ルト…すまない…約束を…守れなか…」
赤髪の女は涙を流し、意識を失った。
次回、第二章の幕があがるーー




