EPISODE16、わざと?
「先生っ!お待たせしました!」
追い付いたライが合流する。
「思ったよりも時間掛かっちまったぜ」
騎士団を一人残らず打ち倒し、ライに追い付いたデイルは、聖魔法を付与してもらい合流する事が出来た。
「助かった。ライ、デイル、力を貸せ。ティーが致命傷を受けた」
「何!?ティーが?」
デイルは、のたうち回る駆け寄ろうとするが、エスティが制止させた。
「2人は時間を稼いでくれ。私が治療する」
「お、おう!」
デイルは、のたうち回るティルシアを横目に黒き騎士に立ちはだかる。
「さっきまで闇魔法が有効だったが、今は効果が薄い。黒い枝に直で触れるなよ、致命傷になるぞ」
「分かった…!」
「分かりました!」
デイルは剣を構えると冷や汗が出る。
それを見たライが軽く声を掛けた。
「大丈夫です!わたしが援護しますので!」
笑顔を向けて親指を立てる。
「おう…」
デイルは気を遣われたと思ったが、冷や汗を垂らした理由は他にある。
(…闇魔法が有効って言ってもよ…。俺、魔力攻撃以外、使えないんだよな)
そう。
デイルは、魔力攻撃を極めた剣聖である。
そのせいか、ティルシアやエスティに魔法を指導してもらったのだが、全て不発に終わっている。
なるようになれだ。
ライは空間から弓を取り出す。
弓は黄金で装飾され、一際大きい。
矢筒を腰に装着すると、様々な色合いの矢が装填される。
エスティと共に手に入れた遺跡武器の1つだ。
【遺跡武器、全属性弓《カラー・アロー》】。
矢筒は使用者の扱える魔法の種類に応じて属性が増え、その属性の魔法矢を魔力がある限り自動で装填してくれる。
「闇の魔法矢《ダーク・アロー》っ!!」
ライが闇魔法を纏いし矢を放つ。
黒き騎士は、反応が遅れたのか、放たれた矢を肩に受けると風穴が空く。
ライが放った矢の威力、速度は申し分ない。
「デイルさん!お願いしますっ!!」
「おう!」
ライは弓で闇の魔法矢を放ち、デイルは魔力斬撃を浴びせる。
「剣閃ッ!」
デイルが繰り出した斬撃の数は10回。
連鎖する斬撃は、黒き騎士を纏う枝を容赦なく斬り裂いていく。
1本、2本、10本、100本と強固な枝が宙を舞う。
「闇の魔法矢《ダーク・アロー》っ!」
ライは、枝が剥がれるのを確認しながら、矢を5本まとめて放つ。
直線的に放たれた矢は全て、黒き騎士を射抜くが直ぐに再生してしまう。
「デイルさん!避けて下さいっ!!」
ライの叫び声に気付いたデイルは見上げる。
「おわッ!?」
デイルは回避する。
見上げた先には斬り裂いて宙を舞った黒い枝。
それが空中で制止し、勢い良くデイルの立っていた場所へ突き刺さって来た。
完全に避けていなければ、掠っただけでも致命傷になる。
デイルとライが足止めをしている中、悶え苦しんでいるティルシアを治療すべく、エスティが駆け寄っていた。
貫かれた部分からは、黒き騎士の生成する細胞が侵食を始め、黒い血管が浮き出たようになっている。
「避けられないなんて、らしくないな」
いつものティルシアであれば、食らってしまった攻撃を避けるなんて容易いはずだ。
エスティは治療するために、手を触れようとするがティルシアはエスティの腕を掴む。
「…だいっ…じょうぶ!」
ティルシアは、笑顔を作るが汗が吹き出し、血も吐き出している。
大丈夫とは程遠い。
ティルシアが目を瞑ると、白い光が体を包み込み、侵食していたはずの細胞が消滅していく。
貫かれた傷も塞がっていた。
「はぁ…っ。びっくりした」
ティルシアは体を起こし、汗を拭った。
すると、エスティが顔を近付ける。
「お前…。またわざとくらったのか?」
ティルシアは目を逸らす。
これが、ティルシアの悪い癖のひとつだ。
気になるからと言って、相手の攻撃をワザと受ける時がある。
受けた傷を分析し、次に活かす為とはいえ、リスクが大きい。
「受けてみたいっていうのはあったけど、迷っちゃった」
「迷った?」
「うん。あの時、黒き騎士から助けてって、殺してくれって聞こえたんだよね」
ティルシアの言葉にエスティは首を横に振るが、真剣な眼差しに嘘はない。
黒き騎士は、苦しんでいる。
「エスティ。わたしはあの騎士を助けられないかやってみる。いい?」
「言っても聞かないのだろう?」
エスティはフッと笑うとティルシアが笑顔を向ける。
「それで受けてみて、あの黒い枝はなんだった?」
打開策がなければ助けるにしても、倒す事は出来ない。
唯一、効いていた闇魔法も効果が薄くなっている。
「うんとね、性質的にあの黒い枝は、聖魔法で形成された物で間違いないと思う」
「だから闇魔法が効くのは分かるが、今は闇魔法でさえ効果が薄いぞ?」
「聞いた事があるんだけど、転換魔術って知ってるよね?」
転換魔術は、禁断魔術に指定されているもので、ベルドの身体に刻まれている。
「あの黒い騎士の体は、細胞が魔力の正常な流れを阻害してるけど、多分、聖魔法と闇魔法が入り交じっているんだと思う。それに加えて、転換魔術に近い形であらゆる魔法を聖魔法と闇魔法に変換してる」
「つまり、我々の光魔法が放った時、黒い枝が聖魔法を帯びていたから相殺され、今は闇魔法を帯びているから効果が薄くなっていると」
「おそらくね」
「打開策があるんだな?」
「ちょっと未完成だけど試したい魔法がある。時間、稼いでくれる?」
「承知した」
エスティがデイル達に加わった。




