EPISODE12、遺跡武器
「わざわざ、相手に合わせて戦わなくても良かろう」
「でも、先生。それだと相手に失礼というか…」
ライは傷だらけの頬を拭いながら、落ち込んだ様子を見せる。
しかし、エスティは優しく微笑んでいた。
「馬鹿者、死んだら元も子もない。自分の戦い方で良い、勝利に貪欲であれ。まぁ…卑怯な手を率先して使えという訳ではないがな」
と。
ライは、息を整え右手を横に伸ばし、空間が歪む中へと手を入れた。
すると、空間の中から丸い鋼の盾に突き刺さる剣が出現する。
剣と盾が一体となった武器を取り出した。
空間魔法である、空間収納は武器を自由に取り出す事やアイテムも収納しておく事が出来る。
ベルドはひと目で武器から溢れる魔力を感じ取っていた。
まるで荒れ狂う嵐のようだ。
「遺跡武器たぁ、驚いたぜ」
遺跡武器。
遺跡迷宮に眠る武器であり、様々な効果を持ち、太古の技術で作られたもので現代では再現不可能とされている。
「行きますっ!」
ライは盾から剣を引き抜きながら、ベルドとの距離を詰めて行く。
普通の盾と剣。
そう見えるが遺跡武器だ。
警戒するに越した事はない。
ベルドは待ち構え、ライの振り下ろした斬撃を見事にかわし、拳を繰り出す。
纏った魔力は、盾や魔力防御を簡単に打ち砕く威力を持つ。
ライは盾でベルドの拳を防ぐ。
拳と盾が衝突した瞬間だった。
前方へ向け、盾から発光。
一瞬でベルドの視界を奪う。
ライが扱う遺跡武器、盾剣が宿している特性であった。
この盾剣は光魔法で構築された武器だ。
盾は衝突した瞬間に、前方へ強烈な光で視界を奪う事が出来る。
そして剣は光剣となり、相手を両断する。
更に他の魔法を重ね掛けする事も可能だ。
再び、パキンという音を捉えたが、構わず剣を振るう。
しかし、視界を奪ったはずのベルドの目は開いており振るったライの剣を左拳で弾く。
「嘘!?」
「甘ぇよ…」
という言葉と共にベルドはライに両手を向ける。
「爆散する炎《フラッシュ・フレア》」
チリチリという音と共に炎が爆散する。
盾で防ぎ閃光が走った。
ベルドは読み通りライの後ろへと回り込み、蹴り上げる。
「うっ!?」
背中を圧迫する衝撃。
地面に落下したような痛みが走る。
蹴り上げられたとしても、空間魔法である空歩で体勢を整えようとするが、それをベルドは見逃すはずもない。
「重力沈下《エスパシオ・ダウン》」
右手をライへ向けた後、地面に下げる。
空中で体勢を整えようとしたライは地面に叩き付けられた。
「魔法拒否《マジック・キャンセル》!」
自身の魔力を消費し、重力沈下《エスパシオ・ダウン》の効果を打ち消し、ベルドから距離を取った。
「模倣…。貴方は他人の魔法を真似出来るんですね」
ライは息を呑むとベルドは口角を上げる。
「だから、てめぇの魔法なんざ効かねぇよ」
ベルドは肯定する。
模倣は魔法というより魔術だ。
相手の魔力の流れを読み取り、自身の魔法として扱う事が出来る。
観察力が優れていないと出来ない芸当だ。
「ならば…!攻めあるのみです!!」
剣を翻し、ベルドへと急接近する。
ベルドはというと、軽くステップを踏みながら、舞踏するようにライの豪快な剣撃を見切りながら軽やかに避けてみせる。
他から見れば、目で捉えるのがやっとというくらいに凄まじい速さで剣撃が繰り出されている。
それを一撃も食らう事なく、ベルドは避ける。
避けるばかりではなく、剣を避けながら、一撃、二撃とライに繰り出す。
魔力防御で固めているため、貫通するまで時間は掛かるだろう。
ライは直ぐにベルドの速さに翻弄される事となる。
鎧を纏っていながら速度は落ちる事はない。
ベルドが身に纏っている鎧は特殊だ。
他の騎士が身に纏っている鎧とは違い、軽く、非常に柔らかく吸収性が高い。
そのため、柔軟かつ俊敏に行動出来る。
魔力防御で固めているとしても、ダメージが無い訳ではない。
一撃、一撃が速く重い。
体に振動が響くのだ。
盾で防ごうとするが、ベルドは腕をしならせ、盾ではなく腕ごと払う。
「おいおい、止まって見えるぜぇ?」
右、右、左、左、右、左、右。
交互に、そしてバラバラに。
繰り出される拳は徐々に加速する。
攻撃の手が止まってしまったライは、一方的に殴られ続ける事になった。
「おらよ」
鞭のように放たれた蹴り。
ライの魔力防御を叩き割った。
しなる蹴りは、息を詰まらせる。
重い、重い一撃だった。
「が…っは…」
ライは腹を抑え、ふらついて膝を地面に着きそうになった。
「これが力の差ってやつだ。覚えとけよ」
トドメの一撃。
勝負が着いたかに思われた。
繰り出した蹴りを右脇腹で絡め取る。
固定し離さない。
捨て身技だ。
「逃がしませんよ!」
「このガキィッ!」
ライは血を吐き出す。
蹴りは脇腹を何本かへし折っている。
それでも離さない。
左拳を握り、全力で殴る。
ベルドの顔面を捉える寸前で眩い光が走る。
「なんてな」
左腕で防御の体勢を取るとライが盾で防いだ時のように閃光が走ったのだ。
ライの視界を奪った。
確実なトドメを刺せるとベルドは確信した。




