EPISODE11、ライVSベルド
「しっかし、ベルドが来るとはな」
「でもエスティ、デイルが取りこぼしたみたい」
ティルシア達は山道を躍動しながら走り抜け、驚いて逃げている動物達を容易く追い抜き、廃村への距離を縮めていく。
後方から急接近して来る魔力を捉えていた。
「皆様、ここはわたしに任せてくれませんか!?」
「どうするティー。ライはこう言っているが?」
「エスティは、大丈夫だと思う?」
「無論だ」
エスティは自信満々な表情を向けると、ティルシアも快諾する。
「じゃ!任せた!!」
ティルシアとエスティは速度を上げ、ライとの距離を突き放していく。
ライは足で速度を落とし、向かって来る方角へと振り向き迎撃しようとするが、ベルドは直ぐ後ろまで急接近していた。
魔力感知で捉えた時よりも急加速していたのだ。
ベルドを迎え撃つつもりが、反応が一瞬遅れてしまった。
「雑魚に興味はねぇよ。じゃあなッ」
ベルドはライの横を通り抜けた。
流石はルゼル王国騎士だ。
ライは今まで、パーティメンバーの誰かと行動する事が多かった。
2年間、エスティの元で修行し、この場を任せられる程に成長した。
しかし、あっさりとすり抜けられてしまう。
「へっ…。所詮は雑魚…ッ!?」
ベルドは地面に叩きつけられた。
そればかりか体が沈んで行く。
何が起きたのか分からなかった。
加速させた足が急激に重くなり、背中から何かに押し潰されたような感覚だった。
「なん…だ!?」
「先には行かせませんよ!」
ライは右手をベルドへ向けた後、下げているだけだった。
更に下に向けると、地面にめり込んでいく。
「ぐおっ!?」
苦悶の声が響き体が軋んでいる。
両腕で体を支え、上半身は沈む事を阻止しているが、下半身は完全に沈み切っている。
「じ…重力魔法か…」
重力魔法。
重力を自在に操れる魔法で範囲は練度によって変わる。
「重力沈下《エスパシオ・ダウン》」
この魔法は、エスティから教わった魔法の1つで、対象一人限定で高密度の魔力で相手に負荷を掛ける事が出来る。
ライは全力で繰り出しており、普通なら地面の染みとなっているだろう。
咄嗟とはいえ、ベルドが纏った魔力が強固だという事だ。
パキン。
ライは耳をピクリと反応させた。
何かが割れる音を捉えた。
「危ねぇ。雑魚は撤回だな」
ベルドは首をコキりと鳴らし、何事も無かったかのように立ち上がる。
「む!?」
普通は脱出するのさえ難しい魔法だ。
ベルドは大したダメージを負っていない。
魔法拒否だと思ったが、使った形跡が無い。
そして、パキンという音。
何かが割れた音。
耳が良すぎるライだからこそ捉えた音だった。
あの音が引っ掛かる。
「魔拳」
ベルドは両拳を握ると、魔力感知をせずとも目で捉えるくらいの白い魔力が両腕を纏う。
「狼猫族ってぇのは、接近戦が得意と聞く。俺も少しは自信あっからよ」
ベルドは人差し指をくいくいっとさせてライを挑発する。
接近戦に自信があるからこそ出来るのだろう。
「行くぜっ…!」
ベルドとライの拳が衝突し、そのまま組み合う。
魔力と魔力の衝突。
双方の魔力が高密度で空間が歪む。
それによって地面には亀裂が入り、周囲が抉れていく。
接近戦も得意なライが押され気味だ。
「ぐぐ…ッ!?」
「どしたぁ?そんなもんかッ!!」
ベルドはライの両手を勢い良く引きながら、膝蹴りを顎へ食らわせる。
「大したことねぇ!?」
「ふんぬッ!!」
鼻血を吹き出したのはベルドであった。
頭突き。
ライの頭突きは、岩を割る。
強烈な一撃は、魔力を纏っているベルドにも堪えたが意識を奪うまでには至らない。
「野郎ッ!」
蹴りで弾き飛ばす。
繰り出した蹴りはライを捉えている。
しかし、ライは両手をベルドへ向けていた。
「!?」
「爆散する炎《フラッシュ・フレア》ッ!」
ライの両手からは、チリチリと火花が散る。
その瞬間、うねりを上げた炎が蹴り飛ばされると共に巻き起こった。
ほぼ至近距離から放った、爆散する炎《フラッシュ・フレア》。
本来は相手の魔法を相殺する為に使われる防御魔法だ。
それを至近距離で浴びたのなら、肉さえも簡単に溶ける。
また、パキン。
という音を捉える。
「なるほどな。ひと通り魔法は使えるって訳か」
やはり効果はない。
ライは打開策を見出そうと再び接近戦に持ち込もうとするが一旦頭の中を整理し、エスティの言葉を思い出していた。




