EPISODE10、ルゼル王国騎士団
大勢の魔力が近付いて来たのを察知する。
しかも、一人一人の魔力が大きい。
現れたのは、星の光を包み込む2枚の翼。
白き鎧を身に纏う騎士や兵士達。
ルゼル王国騎士団であった。
北の領地を統治するルゼル王国。
ルゼル王国は、他国を攻め入る事はせず、文化や伝承を重んじ、歴史研究や魔術のに力を入れている。
地位に関係なく、国民を大切にしているため、攻め入る敵に対しては全力で報復する。
騎士達が通路を空けると、一人の男が馬に乗りながら現れた。
丸刈りで右目に大きな傷が斜めに走り威圧感が溢れる騎士。
ティルシアとエスティはあからさまに嫌な顔を浮かべ、嫌悪感を顕にする。
「おやおや?これはこれは…ゴミクズパーティーご一行じゃねぇか」
男から耳を突く侮蔑の言葉が発せられる。
「誰だてめぇ…」
デイルは見下す男に啖呵を切る。
初対面で言われる筋合いはないからだ。
「はんっ…!この北国で俺の名を知らねぇとは、とんだ田舎者もいたもんだ」
男は嘲笑を浮かべ、耳を小指でほじる。
「何だとッ!?」
「俺の名は、ベルド・ハドゥル。ちったぁ聞いた事あんだろ?」
「知らねぇな、そんな小物はよ。初対面でゴミクズ呼ばわりする奴は好きになれねぇんだよ」
デイルはベルドの睨みから目を逸らさない。
仲間を馬鹿にされて黙っていられない性格だ。
名を知っていたとしても、挑発には挑発で返す。
「言ってくれるじゃねぇか…。俺は良く知ってるぜぇ?」
ベルドはライを指差す。
すると、ライも体勢を低くし、威嚇している。
「狼猫族の小娘、愛玩具として売り出されたんだってなぁ?奴隷如きが冒険者になりやがって」
ライにはそういう過去はあるが、今はもう立派なティルシアの仲間だ。
次にエスティを指差す。
「それに魔女。危ねぇ劇薬扱ってるみてぇじゃねぇか。兵士共を毒殺仕掛けたらしいな?」
デイルにとってそれは初耳だ。
「…で、貴様。虐殺事件を引き起こした剣聖。何でそんな馬鹿な事しちまったんだぁ?富も地位も思いのままだったのによ」
デイルは否定しようにも、起こした事が事実であるため否定はしない。
どんな理由があってもだ。
最後にティルシアを指差す。
「最後は、イカれた女。こっちの意見を聞きやしねぇ。遺跡に様々な遺物の破壊活動…悩みの種なんだよっ!てめぇら探求者パーティーはッ!」
ベルドの口調がどんどん荒くなり、怒鳴り付けていた。
デイルは剣に手を掛けていた。
次に侮辱したら、必ず斬ると決めた。
「見ろよ?この頭、笑えるだろ?これも全部、てめぇらのせいだッ!」
迫る気迫。
デイルは身構えた。
態度は悪いが名を馳せた騎士だけの事はある。
「忘れもしねぇ。最初は大目に見てやった。名のあるパーティーだからな。だがよぉ…」
わなわなとベルドは体を震わせた。
「王国の銅像は爆破するわ、兵士は毒殺されそうになるわ…俺は責任取らされ、サラサラの金髪を剃り落とされるわ…団長剥奪されるわッ…!このイカれたパーティーめッ!!」
涙無しでは語れない。
ベルドは血涙を流す。
ルゼル王国騎士の中でも指折りの実力者であったベルド。
1年前、ティルシアとエスティが冒険者本部からの依頼を受け、ルゼル王国へ訪れた。
長年の修羅場を潜り抜けて来たベルドは、2人の戦いを見て実力者である事を、悪態をつきながらも認めていた。
しかし、王国の銅像はティルシアに破壊され、エスティの振るった料理に兵士達は生死を彷徨う事態に発展。
お目付け役だったベルドは全責任を王から取らされたのだ。
「ああ…本当に何してんだよ、お前ら…」
デイルは頭を抑える。
探究者パーティーが引き起こしたであろう事件の被害者とご対面したのだから。
同情したい。
「だがな、あいつら二人はともかく、ライは好きで奴隷になってた訳じゃねぇ」
デイルは、殺気をベルドに向ける。
ライに関しては言われる筋合いはない。
表に出る事のない【あの事件】を知らないのは当然として気に食わなかった。
「ところでベルドよ。何故、こんな国境まで来た?」
エスティが問う。
ルゼル王国は、交易の為に騎士を連れて行く事はあるが騎士団のみで国境付近まで訪れる事はないからだ。
「決まってんだろ。廃村騎士をぶっ殺しに来たんだよ。あいつは俺の仲間を再起不能にしやがったからな」
こきりと拳を鳴らす。
ベルドは口は悪いが、仲間は人一倍大切にしていて人望も厚い。
廃村騎士討伐に向かい破れた契約騎士は、ベルドの部下だった。
敗れ去り、非難を浴びせられた事がただ悔しかったのだ。
努力を惜しまなかった部下の努力が何も分からない奴らに馬鹿にされた事が許せなかった。
敗北を払拭するためその仇討ちに自ら赴いた。
「しかしなぁ。せっかくてめぇらと会ったんだ。まとめてぶっ潰してやるよッ!」
ベルドが顎で合図すると騎士達が馬から降り、剣を抜く。
じりじりと距離を詰めて来る騎士達の前に斬撃が飛ぶ。
地面に線を引くように抉れていた。
「そこから前に出てきた奴は容赦しねぇ」
デイルが魔力斬撃を放っていた。
騎士、兵士共に300人。
デイルが放った一閃に動揺を見せる。
「先に行ってろ俺が足止めする」
「デイル…」
ティルシアは、眼差しを向ける。
「どうせ俺は耐性がねぇ。後は任せたぞ!」
デイルは意を決して託す。
しかし…。
「なんか死亡フラグみたい」
ティルシアの言葉に項垂れた。
台無しである。
「早く行けええええええええええええッ!!」
デイルの怒号が響き渡った。




