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「お前は休めやァァァァァ!!」
「分かったわよ……」
「ったくよぉ。引っ越しの準備だって「私ぃ、脚が痛いから無理ぃ~」(裏声)とか言ってたクセによぉ!」
「気色悪い言い方しないでくれない?」
「なっ、んだと。テメエ!」
「当たり前の事を言っただけでしょ」
「その当たり前の事がどれ程人を傷つけると思ってんだぁ!!」
「ふっ。シャルと俺二人きり。泣こう叫ぼうが助けは来ないぜ?」
「やれる物ならやってみなさいよ」
「上等だぁ!」
「ふんっ」
「あの、毛玉は直してくれません?」
「嫌」
「うわぁぁ! 意地悪ぅ!」
「晩御飯は?」
「カップラーメン」
「カップラーメン!? 私が熱いの嫌いなのを知ってて!?」
「知ってて」
「伸びきったラーメンを食べろっていうの!?」
「うるせぇな! 寒いの嫌いでコタツ好きのクセしやがって! この我が儘野郎!」
「ワ、ワガ、ママ、ですってぇ?」
「けっ! 所詮猫だろ。餌さえ与えられりゃあ、飼い主以外の人にでもケツ振っちまうような奴なんだろ?」
「だ、誰が! 猫だって生きるのに必死なのよ! それに私は飼い主以外の人にケツ振るような猫じゃないわ!!」
「…………え~と?」
「何よ?」
「あ~。お前はアレか?」
「何よ」
「飼い主にはケツを振るって事か? この場合俺だと思うのでせうが」
「はふっ!?」
「はふっ?」
「何言ってんのよ! わ、私の飼い主は私よ!」
「………………………………………………」
「………………………………………………何よ」
「分かってんだろ?」
「何が!」
「この空気で。今のはスベリにスベリまくったって」
「別に笑いなんか取ろうとしてないもん」
「分かってる。ああ、分かってるさ。笑いなんか取ろうとしてないって事くらい。でもな「私の飼い主は私よ!」って言われたらさぁ」
「アンタがそう捉えるのが悪い!」
「俺に責任転換!?」
「別に私はアンタを飼い主として認めてないって事を言いたかっただけなの!」
「あ~。あの泣き顔は可愛いかったけどなぁ?」
「なっ!? あん時は気、気が動転してただけよ。バカァ!」
「顔真っ赤ぁ! 顔真っ赤ぁ! あははははははははははははははははははは!」
「くあぁ!」
「ひぃ~ひっひっひっひっひっ! バカァ! だってよぉ! い~ひひひひひひひひひひひ」
「ぐ、このぉ」
「ふひっ、ふひっ。クックククク!」
「ぐぬぬぬぬ」
「クックっくぐぅ。はっはははははは!!」
「直樹のバカァァァァァァ!!」
「ぐぼらぁ!?」
「ふんっ!」
「毛、玉……アタックは…………無し、だろ」
「うるさいっ!」
「やべっ鼻血出てきてる」
「分かってると思うけどな。明日は入学式だ」
「私は休まないといけないんでしょ」
「当たり前だろ? 脚と脇腹の怪我まだ治ってねえんだから」
「それでだ。お前寝とけよ?」
「子供扱いしないでよねっ」
「いや、猫扱いな。子供より酷い」
「どこがよ」
「ん~。言っちゃっていいのか?」
「良いわよ? あればだけど」
「俺が風呂行くだけで泣くぐらいの甘えん坊。俺離れ(?)が全く出来てない。子供だってお母さんが風呂入るぐらい出来るしなぁ」
「あの時は気が動転してたって言ってんでしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!」