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猫拾い  作者:
15/21

15

「あ~、マジでどうしよう?」

 トイレ(小)をしながら考える。

 何が目的だ?

「ライブで何が出来る?」

 自分で言った言葉に一瞬衝撃を受ける。

「ッ……! そうだ。ここで何をするか? じゃなく、ここで何が出来るか? を考えるべきだった」

 チクショウッ! と吐き捨てるように言う。

『ラブラドール』が終わったら美江は楽屋に向かう。

 衣装を変える為に、休憩を入れる為に絶対。

 シャアアアア。

「早く止まれバカァァァ!」

 だが、どうする?

 楽屋は舞台裏にある。

――――――――

「まあ、幼なじみの話は置いといて」

 ヒョイと物を机に置くジェスチャーをする。

『どうぶつが何故ここを襲ってくるのか教えてくれる?』

「うん、実は三日前に脅迫状が送られてきたんだ」

『脅迫状?』

 猫の姿なので表情は分からないが怪訝な顔をして言う。

「脅迫状って言うかね~、まあ内容はこんなの、『美江ちゃん、君を貰いにいくからね? どうぶつを所有している君なら分かると思うけど警備員なんか役に立たないから。じゃあね』」

『うわ、最』

 低と言おうとした瞬間、

 バン! ドアが開かれる。

「さぁて、美江ちゃんがライブ終わる前に掃除でもしておこうかな?」

 と不敵に笑う男。

 四角い、緑の眼鏡をしている。

 目が細く、髪もボサボサ。

 鼻は低く、脚は短い。

 全体的に細く、頼りない筋肉をしている。

 鼻には詰め物をしている。

 Tシャツから、ズボンから何まで美江の商品で埋まっていた。

 シャルの脳裏には、ある一つの単語が浮かんでいた。

 オタク。

 直樹曰わく、「オタクオタクってさぁ、お前ら何も分かっちゃいねぇ! 日本の残された文化を昇華させてる奴らですよ!? それをお前らさぁ! オタクって言っても一種類じゃないからね!?」

 らしいが、コイツはそんな者じゃない。

 直樹の言う、「最低な奴」

 に分類されるオタクだとシャルは思う。

「さあ~て、『スカンク』」

 通気孔からいきなり空気が流れ出してくる。

 有り得ないぐらい臭い匂いの空気だ。

「なっ!?」

「ニャッ!?」

 犬であるマロは鼻を押さえて苦しんでいる。

 勿論、シャルも苦しんでいるが犬よりは数十倍もマシである。

「クックック、あ~はっはっはっはっ!! この苦しみ方はお前がどうぶつか」

『大丈夫? 私がコイツらを止めるからアンタは美江を呼んで来て!』

 と、テレパシーを使った瞬間、ズン! と空中から落下してきた『少女』がシャルの上に乗る。

「ニャ……ガッ……!」

 猫の小さな身体に十五、十六の少女の体重は重すぎた。

 シャルは唾が飛び、意識もトぶかと思った。

「コイツもどうぶつよ」

 シャルの腹に思い切り蹴りを入れる。

 それこそ、サッカーボールのようにシャルは飛んでいき、ロッカーにぶち当たった。

「ガ……ッ!」

 血を吐き、ボトン、と受け身もとらずに墜ちる。

「テ、メェ……」

 ギン! とスカンクを睨む。

「お前も止めさせろ!」

 十七程の男を睨む。

「嫌だ。テメエみたいなイケメンは、半殺しだ!」

 殺れ! とスカンクに吼える。

 スカンクは嬉しそうな顔をして一言。

「わかったわ」

 マロに走り出す。

 マロは箒で叩きつける。

 が、

「全然甘い」

 手を突き出して受け止めている。

 が、手に箒がついていない。

 手と箒の間に何かがあるかのように動かない。

「なっ……!?」

 後ろに跳ぶ。

 何の魔法か分からない以上、迂闊にごり押しするのは危険だと判断したのだ。

『お前はそこで気絶してるふりをしていろ』

 シャルにしか聞こえないようにテレパシーを送る。

『嫌……よ……。ここから叫べば……美江も来てくれるんじゃないの?』

『んな訳ねえだろ?』

『あ、ライブ中だからか』

『違う。ここは舞台裏に在るんだよ。だから……ライブに参加している奴らは全員全滅させられてる』

 この会話は全員に聞こえるようにする。

 確認をする為に。

「まあな。スカンクの匂いを充満させたら一発さ。全員どっか行っちまった」

 拳をロッカーに叩きつけて、吼える。

「チクショウッ! 俺が、脅迫状を送りつけた奴から初ライブを守るって決めたのに!」

 初めてのライブを守れなかった悲しみからか、涙が流れ落ちていった。

「ったく。別にライブなんかどうだっていいわよ」

 正統派アイドル『美江』が素敵に不敵に突然にやって来た。

「あなたが無事じゃなきゃ意味なんてないんだから」

 さながら、物語の主人公のように。

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