十四
「ラマ教ラマ教ラマラマ教ラマ教♪」
何ですかこれ? 呆然とひたすら「ラマ教ラマ教」言っている美江を見る直樹。
つーか、ラマ教って何?
『美江ちゃ~~~ん!』
会場に怪しい所が無いか隈無く調べようとした帰りにこの異様なテンションにはついて行けない。
楽屋には流石に入れなかったが。
『キャーキャー!』
『ワアアアアアッ!』
『美江ちゃ~~~ん!』
「よく、ラマ教ラマ教言ってるだけの歌で騒げんな」
直樹は呆れ顔で周りを見渡す。
麗奈は『キャーキャー』言っている一員にスッカリ入っている。
直樹は少し大きな声で言う。
「ちょっとトイレ行ってきまーす!」
「キャーキャー!」
「はぁ」
少し寂しい直樹だった。
―――――――――
「ふははははははははっ! 我に感謝するがいいっ!」(猫語)
「ありがとうね」(猫語)
余計な魔力を消耗させない為に、猫の状態でいるシャルが道に迷った道中で、
「道に迷った? ……はっ! ライブといえば客の食べ残しが貰える絶好の機会なのでは!?」
とか、言って案内してもらった猫がピューッ! とどこかへ行ってしまう。
名前はまだ無い。
……らしい。
「さあ、入ろう!」
しかし、どこから入ればいいのか分からない。
正面突破は警護の人達に追いかけられるかもしれないので除外。
適当に歩いていく事に決定する。
壁を乗り越え、壁に飛び乗り、
「ん?」
壁に穴が開いている。
シャルが人並みの知識があったならば、通気孔だとわかっただろう。
そして、可笑しいという事も――。
シャルは警護が居ない人間が侵入出来ない少々大きな通気孔から侵入する。
すると、少し大きな部屋に出た。
「ニャ?」
派手な衣装がベンチみたいな長い椅子に置かれている。
楽屋ってやつ!?
シャルは興奮気味に思う。
実は楽屋や衣装部屋に興味があったのだ。
ポンと通気孔から飛び降り、擬人化――は出来なかった。
「ニャ~」
擬人化から猫になるのは直樹から離れていても出来るらしいが、擬人化となると直樹の近く (半径十メートル) でないと無理らしい。
先ずは直樹を捜そうと楽屋を出る。
いや、出ようとした。
「猫?」
男が楽屋に入って来たのだ。
格好いい男で、十七かそこらといった感じ。
少し少年っぽさが残った幼い顔立ち。
鼻がスラリと高く、髪の毛は茶色。
マロちゃんと同じ毛の色だった。
――ヤバッ!?
シャルは反射的に身構える。
「猫って苦手なんだよなぁ」
と、苦笑気味に笑い壁に立てかけてあった箒を手に取る。
「ニャア!?」
まさ、か……。
「とりゃあああああっ!」
やっぱりかぁぁぁぁ!! と心の中で絶叫して縦に振るわれた箒を避ける。
「ずりゃあああああっ!」
横薙。
と、テレパシーを使い慌てて言う。
『待った!』
ピタリと箒が止まる。
男は驚愕に顔を染めてる。
そして、驚きの表情が怒りの表情に塗り変わっていく。
「テメエが美江を誘拐しようとしてるどうぶつかぁぁぁぁあっっっ!!」
『違う! 違う!』
「じゃあ、何でここに居る!?」
この男の言葉から『どうぶつ』という単語が飛び出してきた瞬間シャルは確実にこの男はマロちゃんだと確信した。
『アンタが、マロちゃんがテレパシーで喋ってたのを聞いたのよ。今日のテレビ偶々ね』
「ふぅ、そうか……っと飼い主はどこに居るんだ?」
『アイツは……幼なじみと楽~ォォしくデートよォォ?』
「そ、そうか……禁断の愛だな」
幼なじみ=妹or姉とかそういう認識があるのだろうか?
シャルは首を捻る。
直樹曰わく、
「幼なじみはなぁ! 肉親のようなものなんだよ! こうさぁ、そっから一線を越えるっていうのが無理って所が似てるんだよなぁ、兄と妹の愛とかとさぁ。いや、俺は越える気は無いぞ!? そんなドキドキ感なんぞ……俺は経験するのはちょっと……いやいや、何でそんなに睨むの!? 麗奈!? 何でそんな悲しい表情する!? あ? ……確かにドキッとした事もあったよ!? それが何だよ! あ!? 悪いのか? 幼なじみにドキッとしちゃ悪いのかよ!? 俊也! ちょっ!? 何でシャルは黒く笑いながらシャーペンの殺傷能力をプリントで試してんだ!? 麗奈は何でニヤニヤ笑いながら「まさか、フラグが立った?」とか言ってんの!? まさか、俺の死亡フラグってオチか? うわぁぁぁぁ!」
との事である。
因みに、最後の叫び声はシャルと「俺の幼なじみはブサイクなのにい!」とか言って襲いかかってきた俊也がシャーペンで腕を突き刺そうとした時のものである。
あん時はスッゴいムカついたのよ! とはシャル談である。
直樹と男が言いたかったのは、
幼なじみは肉親並みに越えにくい壁がある。という事だろう。
話が脱線しまくり……。
まあ、そこが持ち味という事で……どうぞ温かく見守って下さい。
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