13
お気に入り登録の登録。評価や感想を下さると嬉しいです。
「暇……だ……」
猫の集会は夜だし、魚も生じゃあ食べれない。
漫画は読むとイライラするし (基本ひらがなしか読めない為) 小説なんか手に取るきもない。
ライブ? っへ! デート? へっ! 全然全く気になんてならないし~。
どうぞ、ご勝手にって感じだもんね。
「全然全く寂しくなんて……(あるかも)」
捨てられる前の主人との生活ではわりかし素直に好意を現せた。
だが、捨てられると同時にありとあらゆる好意を拒絶してきたシャルは直樹にいきなり素直に好きだと言うのは抵抗があるのだ。
というか、恥ずかしい。
「は? 何急に素直になっちゃってんの? 気持ち悪い」
とか言われそうで怖い。
「いや……」
そんな事を抜きにしても、素直になれない気がする。
何故かは全く分からないのだが。
と、悶々としながら、六畳一間の部屋で一人ゴロゴロするシャルは、机に置いてある会場までの地図をチラリと見る。
『マロちゃんって言うんですよ~』
いきなりの声に吃驚し、跳ね起きる。
テレビがいつの間にか点いており (シャルがゴロゴロしてた時にリモコンの電源に触れた為) シャルから見ても可愛い少女、『美江』と柴犬が映っている。
「あはははははっ!」
シャルは直樹から聞いて知っている。
生放送の事や、普通の放送の事なんかも。
だから、美江が映っているだけでは笑う理由なんて無いのである。
しかし、可笑しそうに笑う。
「クックックッ」
まるで、悪人の如く黒い笑みを漏らしながら、直樹が描いていった会場までの地図を持ち六畳一間の部屋から出て行った。
そう、ようやくライブに行ける正当な理由が出来たのだと、笑みを浮かべながら――。
―――――――――
「来たね! 会場!」
ハイテンションな麗奈は周りに居る人々を見て、更にテンションを上げていく。周りもそんな感じでテンションが右肩上がりである。
「何だ、この永久機関。夢の機関が今登場しましたよ~」
少し、揶揄して言ってみるが麗奈は聞いていないらしい。
少し大きめのバッグをぶんぶん振るぐらい興奮しているらしい。
はあ、と溜め息を吐き出し、プロマイドを見る。
川のようにサラリとした桃色の髪を腰の辺りまで伸ばしている。
頭頂部からアホ毛がぴょこんと立っているのはご愛嬌。
瞳は丸く大きい碧眼で睫毛が長い。
胸は豊満である。
プロポーションは最高。
前にインターネットで『美江のプロポーションは最強』という記事が出たほどである。
「席に着こう♪」
終始笑顔の麗奈が言う。
笑顔の麗奈に少し癒やされながら指定席であるmの08番席に着こうと奮闘する。
人が掃いて捨てる程居て、立ち見が半分以上という正真正銘すし詰め状態。
最後の二人――二十代前半ぐらいの男の人と、七十代後半のお爺さんの間を「すいません」と言いながら割り込んで席に着こうとする。
と、
「決行は『ラブラドール』が終わってからの休憩時間。『スカンク』テメエの仕事は――」
『決行』という単語で、不穏当だと思い、『スカンク』という単語から確信した。
――どうぶつ。
バッ! と振り返るが誰が言ったかなんて聞こえない。
ましてや、こんな人が居るのに特定するなんて不可能に近い。
「決行は『ラブラドール』が終わってから……。なぁ、『ラブラドール』って何時するんだ?」
「昼の十二時半からだね……終わったら休憩時間で、あっ、そうだ。私お弁当作ってきたから、その時に食べようね?」
「…………十二時、どこで美江は休むんだ? いや、目的はなんだ? やっぱり美江なのか? 大量殺人か? オナラでみんなを気絶させるとか?」
目的も詳細も不明。
分かっている事は『スカンク』という奴が関わっていると言う事だけ。
十中八九どうぶつだろう。
が、『スカンク』というのが友達のあだ名で、『決行』なんて言うのももしかしたら美江のサイン入りTシャツなどの『商品』を買うって事かもしれない。
しかし、何故だかそんな気は全くしなかった。
多分、声が浮かれていなく、酷く真剣なものだったからだろう。
十二時半に、どこで何をするのか分からなければ意味が無
不意に空回りする思考が盛大な叫び声にかき消された。ワアアアアアアッッッ!!! 狂信集団だってこんなにテンションは上がらないだろうと直樹はふと思った。