表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『清水寺のプレスマン給わる女』

作者: 成城速記部

昔、清水寺に足しげく参拝する女がいた。生活は苦しく、何年も参拝しているのに、少しも御利益がなかった。一層生活が苦しくなり、もともと住んでいたところを離れなければならなくなり、住むところがなくて困ってしまったので、清水寺の観音様をお恨み申し上げて、先祖のどんな報いがあったとしても、わずかでもお恵みください、と必死に申し上げて、観音様を伏しおがんだ夜の夢に、観音様から伝言です、といって、このように日参してくれることはうれしく思うが、お前にだけ何かを与えることは、理由がないのでできない。それが残念でならないのだ。しかし、せめて、これをやろう、といって、燭台に刺さっていたろうそくをプレスマンに変えて、目の前に置いてくれた、という夢を見た。

夢から覚めてみると、夢と同じくプレスマンが並べて置いてあった。観音様は、私に、使いかけのろうそくしかくださらないのだと思って、悲しくなって、このようなものをいただくことはできません。生活に余裕があれば、こちらから、ろうそくでもプレスマンでも奉納しなければならないのに、これをいただいて帰ることはできません。お返しいたします、と申し上げて、ついたての裏に置いた。

またうとうとすると、こざかしいことを言うやつだ。観音様から給わったものを受け取らないで、返すとは、とんでもないことだ、といって、またくださろうとする。目を覚ますと、また目の前に置いてある。泣きながらまたついたての裏に置いた。そのようなことを三回繰り返し、最後には、観音様がくださるものを返すなんて許されないことである、もう一度返したらただではおかない、としかられ、事情を知らない僧が見たら、ろうそくを盗んだのだと思うかもしれないと思うと、気持ちよくもらえるものでもなかったが、もらって、夜のうちに寺を出ることにした。

さて、この元ろうそくプレスマンをどうすればいいだろうと思って、とりあえず、速記など始めてみたが、するとどうしたことであろう、このプレスマンを見ると、男といい、女といい、親切にしてくれ、生活の苦しさは、うそのようになくなった。困ったときには、このプレスマンを身につけていると、必ず願いがかなった。信心とはかくあるべしとか。



教訓:観音様からいただいたプレスマンを断るような人だから、生活に困るのです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ