表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜を殺すまで  作者: 鈴索
5/8

4話. 打ち込み、推し量る

 迫りくる刃先を見てもなお、騎士は動こうとしなかった。

 何かある。

 疾走する最中(さなか)、ヒューはそう睨んだ。

 脅威に対して動かないというのは、大体のところ、恐怖に竦(すく)んでいるか腹に一物を隠しているかのどちらかであるからだ。

 そして、騎士の不動を彼は後者と受け取った。

 射程内。

 短く息を吐き。細身ながらもしなやかな両腕が鮮やかな一撃を繰り出す。

「……危ない」

 槍が金属の鎧に到達する寸前、ごく小さなしゃがれた声が呟いた。

 同時に、半ば本能的に、ヒューは上半身を反るように捻った。

 衝撃の線が頬の上を走り、皮膚が薄く裂けて、ほんの少し血が垂れる。

「驚いた」

 騎士は深く息を吐いた。意想外の攻撃にも関わらず、相対するこの少年は見事に避けたのだ。

 しかも、微塵も怯まずに"次"を仕掛け、柄の短い槍の取り回しの良さを思う存分に発揮したやり方で、騎士の四肢に軽い殴打を見舞ってきた。

 無論、浅い力では古びた装甲を打ち鳴らすのみで、決定打にはなり得ない。それどころか、打つたびにヒューは自分自身の体が鈍い痛みを覚えるのを感じ取った。

 探りを終え、一歩二歩と距離を取る。依然として、騎士は剣を抜く気配すらない。

「ヒュー!」

 我慢できず、クロが駆け寄った。淡く輝くような翠の目がちらと彼女を捉えて、すぐに逸れた。

「大丈夫。もうわかった」

「わ、わかったって、何が?」

「あいつの戦い方だ」

「でも、戦い方も何も。あの人、ずっと立っているだけじゃあ……」

 クロの言葉に、ヒューが頷いた。

「そうだ。あいつは、わざと戦おうとしていない」

 槍を持つ手に力を入れる。それを合図に、柄から穂先がふわりと浮かび上がる。

 そんな奇妙な光景に、樹の上の盗賊たちはもちろん、騎士でさえも動揺した。

 柄と穂先の間の大気が、二つを繋ぐように、あるいは離すかのようにびりびりと震えた。

()()()と似たものを持っているんだ」

 ヒューはふっと短く呼吸をして、抱えるように持った槍の柄を勢いよく前に振った。

 柄の動きに合わせて、宙に漂っていた穂先も鋭く滑空する。

 過たず、その刃は騎士の兜にがつんとかち合った。かと思うと、穂先が来た方向とはまったく反対に、風のような波が起こり、ちょうどその先にあった枝を突き落とした。

 運悪くそこに座っていた盗賊の一人はあえなく落下して、声を上げる間もなくうつ伏せに草地とべったりぶつかった。

「……」

 騎士は兜の凹んだ面に触れると、腰に帯びた剣に手を伸ばした。

次のお話は11月22日の23時に上げます。

※11月23日に延ばします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ