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竜を殺すまで  作者: 鈴索
1/8

プロローグ

「なぁ」

 ひとを微睡(まどろみ)に誘うような、優しい日差しの下で、白髪の少年が口を開いた。

 彼はまっすぐに立って、目の前に広がる池の澄んだ水面を眺めていた。水面は、そう遠くない場所で境を分けて、そこから先は周りと同じように深い緑の森が広がっていた。

「うん」

 少年の後ろ。横倒しになった古木に腰掛けた少女が、彼の背中へ丸い眼差しを向ける。

「おれ、やらなくちゃいけないことができた」

 少年は静かに言った。その言葉だけに、ほんの微かな戸惑いが含まれていた。

 居住まいを正した少女は、しかし結局古木を離れた。そして、少年の隣に並び立ち、彼のどこか大人びた横顔を覗き込んだ。

「どんなこと?」

 深く息を吸って、吐く。

「竜を、ころすこと」

 目と目が合った。そよ風が、二人のあいだをすり抜けていった。

 少女は、揺れた、暗い夕暮れのような紅の髪を撫でた。

「どうして?」

「……分からない」

 悔しそうに、あるいは申し訳なさそうに、少年が俯く。

「そっか」

 そんな、沈んだ表情の少年に対して、彼女はいたって明るい調子でこくりと頷いた。

「それでも、いつかあなたは、旅に出るんだね」

「竜をころすために」

「……ああ」

「じゃあ、私もいっしょに行く」

「え?」

 自分の聞き間違いを疑って、彼は思わず顔を上げた。視線の先の少女は、白雲の浮かぶ穏やかな青空を仰いでいた。

「決まりだから。あなたがイヤって言っても、ぜったいついていく」

 今度はもう疑いようがない。少年のどこか曖昧な決意に、彼女は本気で付き合うつもりなのだ。

 少年はしばらく目をぱちくりさせたり眉をひそめたり、一人でウンウン唸ったりしていたけれど、もう一度深呼吸をして、ようやく落ち着いた。

 そして、ごく小さな声で言った。

「ありがとう」

 鳥がさえずり、空気を自然の素朴な香りが満たす平穏な時。

 柔らかな笑みが、少年に向けられたのであった。

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