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受精は知っていたけどセックスは知らなかった頃の話

作者: 相浦アキラ

 うん十年前。小学生2年生の私は性教育のマンガを読んで性知識を得ていました。そのマンガには男性の精子が女性の子宮に入り込んで、卵子と受精して子供が出来る事が図解されていましたが、具体的にどうすれば精子が放出されるのかは巧妙にはぐらかされていました。

 具体的に何をすれば妊娠に至るのか、幼い私には分かりませんでした。 

 もちろん交尾は知っていましたが、「交尾」という字面からして動物的な事もあってか、まさか人間が同じことをするなど考えもしませんでした。


 考えに考えた結果浮上してきたのが、「成熟した男性は常に目に見えないミクロレベルの精子をまき散らしており、それがウィルスの如く周囲の女性の体内に侵入して受精に至る」という仮説です。

 ……前衛的なエロマンガか何かでしょうか。今思うと怖すぎて笑っちゃいますが、もちろん私もこの仮説の弱点にはすぐ気付きました。

 私の仮説が正しければ通りがかりの女性をうっかり妊娠させてしまう可能性がある筈なのに、そういった話を聞かないのは矛盾しているという事です。これはどういう事なんでしょうか。私はまた考えました。

 そして新たに「家等の密閉空間でなければ受精可能な精子濃度が保てない。つまり男性と同棲している女性のみが妊娠可能である」という画期的な仮説を打ち立てました。

 それでも私の脳内性学会の紛糾は収まりがつきません。


「夫が娘ではなく妻のみを受精させうるのはどういう事だ!」「その理論なら、女性が親戚の家に行った時、受精可能な精子濃度があれば親戚の精子で受精する事になるが?」

 この批判には斬新な精子濃度仮説を立てた気鋭の学者も返答に窮してしまい、「うーん……どうなんでしょう。わかんないですけど……なんか……あの……フィルターがあるんじゃないですか? 女性の体内に、フィルターがあるんです。恋愛関係にある相手の精子だけ受け入れるようなフィルターか何かが……」と弱々しくこうべを垂れるばかり。しかし、ダメ元でひり出したこの女性フィルター仮説は意外にも学会に広く受け入れられました。「なるほどおおおおお!」「まさにコペルニクス的転回!」「批判ばかりしてしまったが、確かにそれしか考えられませんな」「これは歴史的大発見ですぞ!」学会は割れんばかりの拍手喝采。……こうして「精子散布仮説」「精子濃度仮説」「女性フィルター仮説」を打ち立て、人間の生殖メカニズムを見事暴いた気鋭の若手学者は一気に時の人へと躍進していったのです。


 ……まあ、当時もなんか嘘っぽいな、違うんじゃないかな、とは薄々思っていたんですが。

 一応理には適っているので妙に納得してしまっていました。

 本当の事を知ったのは中学くらいで、エロい同級生が教えてくれました。

 コロンブスの卵ならぬエロい同級生の卵ですね。


 ……また別の話ですが、避妊具についても私は勘違いしていました。

 エロい同級生以降、本に出てきて避妊具の存在を知ったのですが、具体的な描写が無かったので想像するしかありませんでした。妊娠を避ける為に付けるという事は字面から大体分かりましたが、それ以上の事は全く分かりません。結局「具」、という語句から機械的なイメージを連想してしまい、女性側につけるものものしい機械みたいなのを連想していました。

 ……まあ、当時も「なんか違うよなこれ」という気はしていたんですが。


 という感じで、中途半端な性知識のせいで一風変わった世界観が出来上がってしまったというお話でした。自分の中で仮説を立ててああでもないこうでもないと考えていくのは楽しかったですが、変に歪んだ性知識を持ったらまずいので、今のように「受精 しかた」とかで検索すればすぐに真相に辿り着ける方が健全かもしれませんね。


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