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『小学二年生の****ちゃんが車に轢かれて亡くなりました。運転していたーー』





「で、あんたのランニングコースに平穏を私が取り戻せと」

「そういう事なんだわ」

「いや、コース変えろよ」

「お気に入りコースなんだよーなんだかんだでー」

「何だそりゃ」


 こうなりゃ相談はこいつしかいねえと思い私は市瀬霞いちのせかすみに例の土下座男について彼女に話したのだ。


「ってか本当にいたんだ土下座男」

「え、どういう事?」


 霞が言うには、少し前に私と同じような事を言う人間がいたらしい。

 小田真理子。その子が祈里神社で幽霊を見たと言い出した事があったらしい。だがこの件について誰も相手にしなかった。何故なら彼女は黒歴史確定痛々ランキング行為の上位に常に位置する、所謂”自称霊感少女”だったからだ。彼女の言うことなんて誰も信用しなかった。

 それが露呈したのは霊視が出来るなんて言い出した真理子が事もあろうに霞を霊視し、「お墓参り行った方がいいよ。死んだお祖母ちゃんがあんたの後ろで物凄い顔して睨んでる」なんて言い出した事だった。


「いや、うちの祖母ちゃん生きてるんだけど」

「え、あ、あの、私が言っているのは父方の、だよ?」

「祖母ちゃん二人いるんだけど、両方生きてるよ」

「……し、親戚の! 親戚のばあちゃんだよ!」

「親戚ってどの?」

「ど、どの? ……え、えーっと、おじさん!おじさんの!」

「どのおじさん?」

「あ、えーっと、名前はわかんないけど、その眼鏡かけて、白髪の……」

「眼鏡かけてる親戚なんて一人もいないんだけど」

「あ、えー、あー。あ、そー」

「ってかあんたこそ気を付けなよ」

「へ?」

「あんた一週間前、事故現場に備えてある花蹴ったでしょ。幽霊何て怖くないとか言って。ヤバイよそういうの」

「え、なんで、それ……」

「めっちゃ怒ってるよ。早く謝っといた方がいいよ」


 顔を真っ青にして小田真理子はその場から走り去った。よりにもよって本物に喧嘩を売って撃沈したわけだ。そんなこんなで霞は所謂そういうタイプなので、こういう案件は頼れるって事なのだ。


「言って私そんな力強いわけじゃないからあんま期待しないでよ。とりあえず見に行くだけだから」


 何とか言って断らないあたりがマジいい奴。




「でもね、ひょっとしたらってのはあるの」


 誰も相手にしなかった小田真理子の話だったが、霞は少し気になる事があり軽く調べたそうだ。それが最近起きている事故だった。私達の住んでいる地域で連続して子供が車に轢かれて亡くなっているという事故が数件起きている。ただ一つ奇妙なのが轢かれて亡くなった子供が全て小学二年の女の子だそうだ。

 事故の記事は単なる事故としてのものしか記載されていない。犠牲者が全て小学二年生である事にも特に触れられてはいない。まあそりゃそうだ。これがもし轢いた人間が同一犯ならそういった事もあるだろうが、事故を起こした人間も場所もバラバラなのだ。関連性なんて考えにくい。強いて後上げるなら轢いた人間が男性で、居眠り運転だったという事ぐらいだ。


「それがここ二か月程で起きている事なんだけど、急にって感じなんだよね」

「どゆこと?」

「んーよく分かんないけど、別に私達の地域ってそんなに事故が起きやすい場所でもないでしょ? それがここ最近で相次ぐって変だなって感じで。そんな時にオダマリの話があったわけ。なんとなくだけで関係しているような気がしたの」

「え、オダマリの事信じてるの霞?」

「あいつが何で私に急に突っかかってきたか分かる?」

「さあ、分かんない」

「私が霊見えるって話、あんたにしか私言ってないの。なのにあいつ急に私に喧嘩売ってきたのよ、霊能力の事で」

「……え、じゃあ」

「あいつ見えてないわけじゃないのよ。見えてる所もあるの。安定してないから変な事言ってる事が大半なんだけど、たまにアタリも混じってるの」

「何それややこし」

「中途半端な力って困るよね」


 そこから更に事故を深ぼっていった先に一人の男にたどり着いた。それが一件目の事故で死んだ女の子の父親、間洋一はざまよういちという男。間は事故の後まもなくして娘を追うように自殺をしていた。ネットに載っている記事を霞が見せてくれる。そこには間の顔が小さく載っており、彼の首吊り自殺の内容が記載されていた。


「じゃあその間って人が、その土下座男って事?」

「わかんないけど。関係はしてるのかなって」


 頭を整理してみる。土下座男が間だったとして、彼が毎日のように必死で土下座する理由とは何だろう。

 娘を生き返らせて下さい? それとも事故に遭う娘を助けられなくてごめんなさい? 後は娘を殺した加害者への罰を祈っている?


 なんだかどれもしっくり来なかった。

 そうだとすれば、何故間は笑っていたんだろう。


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