さらに、奥へ
少しずつ謎に迫ります。
8.さらに奥に
山地の奥に分け入っていても魔獣に出くわさない。というかヴェルの探知には引っ掛かっているのだが、さらに奥地から逃げているようなのだ。
「これは何かあるな」ギンガがつぶやくと。
「あるじゃなく、何かいる、ですね」とラン。
「3つ先の山頂に濃い魔力溜まり」ヴェルの探知は優秀だ。
「どの程度?」考え込みながらアル。
「濃い。それ以上判らないくらい」。
「ヴェルでも判らないようなようなまずいことが起こってるようですね」また、ランがまとめに入る。
「行くぞ。行かなきゃ判らない。行って調べる、それだけだ」
「正しい」ギンガの言葉にアルが同意する。
「待ってても構わないぞ」
「行きます。行かなきゃいけない気がします」ランに五人と一匹が同意する。
・・・今回はジョヌも起きていた。
「そうか。行くぞ」魔獣も逃げ出す魔力溜まりに向かって進み始める。
「ところで、魔力は集まる性質があるんだろう?しかも一定以上集積すると爆発するんじゃなかったっけ?あの山の魔力溜まりは大丈夫なのか」。
「魔力に爆発する性質はありませんよ。どうしてそのようなことをおっしゃるのですか?」ランが頭に疑問符を載せている。
「私の世界では、マジュ粒子、じゃなくて魔力を研究していた時に、突然爆発が起きてな、島が一つ吹き飛んだんだ」。
アルは首を傾げながら、「たぶん誰かが、魔力を暴走させた?と思う」。
「??????暴走だってぇ?」
アルが続ける。「私たちは、魔力を属性の力を与える。属性の力を加えられた魔力は、その属性の表す性質を具体化しやすくなる。例えば、水の属性を与えられた魔力は水そのものに変化させられる」。
「属性を与えられていない魔力は、変化させることが難しいから普通はそこにあるだけの状態なのですわ」とランが補足してくれる。
「あたいたち精霊は、魔力に属性を与えるためにいるんだよ」ルジェ。
「私たちはこの世界に属性のついた魔力を流しているの」ルゥの補足。
「魔法は、世界に流れている属性のついた魔力を集めて、属性に関連する事象に変えて何かを起こすのです」ランが難しいことを言う。
「すぴーー」「ちなみに寝ていてもやってる」フードの中のジョヌを指さしてヴェルがコメントする。
「で、暴走って何だ?」
「魔力を無属性のまま、強引に魔法化させようとするとその空間を傷つける。仕組みはわからない、かな」アルの解説である。
「??わからないなぁ?・・・まぁ、それも調査だな」。
2つ目の山に入って、すぐに。
「何だ、これは?」
そこには何もなかった。草も木もなく、もちろん動物もいない。地面はうっすらと灰色だった。
灰色ではなく本当に灰が覆ていた。
「ピー」ギンガの腕輪が警告を発した。埋め込まれたセンサーロボからメッセージが入る。
『生命反応ゼロ。危険』
ギンガが思考する『放射能、毒素などの反応は?』
『既知の生命阻害要素検出なし。しかし、生命反応なし。繰り返す。一切の生命反応なし』
「何なの、これ?」いつもはのんびりしているルゥの声が震えている。
「何もない」「地面の下も何もない」ヴェルとジョヌ。
「こんなのあり得ません」「・・・」ランも取り乱し、元気なルジェは茫然としている。
「命を吸われた」アルがボソッとつぶやく。
それを聞いてギンガ、「なるほど、魔力吸収のついでに魔力を含んだ生命要素すら奪われたということか。杯は残りかすだな」。
「確かに。魔力がない」ヴェルも何も感知できないようだ。
ギンガは足元のラージャを抱え上げ、背中に垂らしたフードの中に入れる。
「ちょっと狭いが、ここは危険だ。おとなしくしてろ。お前たちもだ」。
六人もフードに入って、ギンガの肩から顔を覗かせる。
ふっと笑みを浮かべると、ギンガは気を発する。
「ここで待ってるほうが危険だからな。さあ、一気に行くぞ」。
一気に登るギンガ。
頂に着いたとき、先の峰にそいつはいた。