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星のいのち  作者: しぱたん
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邂逅(1)

初めての投稿です。流血など刺激のある描写をする場合があると思いますので「残酷な描写あり」としています。シリーズ化を目指して頑張ります。

よろしくお願いします。

1. 邂逅(1)


 「みんな頑張って。あきらめちゃだめよ。」


 白い光が先頭をきって飛んでいく。青と緑の光が続き、ふらつく黄の光を挟んで黒と赤の光が追う。その後ろ巨木の森をぶち破って黒い竜が飛び出してきた。黒い竜、闇属性に傾斜した特性を持ち、成長すればかなり狡猾でめったに姿を現さない上位竜の一角だ。こいつは、まだ若いらしく、姿を隠すよりは目の前の魅力的な獲物に集中しているらしい。


 六つの光は産まれて間もない6属性の精霊姫。魔獣は精霊姫を吸収すれば、その属性力を自分の力とすることができる。並みの魔獣からは逃げおおせても、竜などの上位魔獣に狙われたら絶望的だ。今回は6属性すべて一緒にいる。黒い竜は、このすばらしい幸運に歓喜していた。労せず強者にのし上がるチャンスだ。「グフー」笑うような咆哮とともに、いたぶるかのようにゆっくりと追いかけている。

 

 「どこに逃げるのよ」「逃げ切れっこないわ」緑と青の光から悲鳴ともとれる声が響く。

 「ジョヌはもう限界よ」赤からの叫び。ふらつく黄の光を黒の光が支えるように飛んでいる。

 「それでも逃げるの。あきらめちゃダメ」白の悲鳴のような声が響く。

 「グッフッフ」黒い竜は楽しそうにまた吠えた。


 その時、白い光は感じた。澄んだ、というより冷たく澄み切った気配が前方にあることに。そこに力を感じた。魔力の温かさとは違うが、同じように心地よさを感じるその気配に方向を変え、「こっちよ」白い光が呼びかける。残りの光もそれに続いていく。最後の力を振り絞って。


 その先には、一人の男が立っていた。灰色一色のいでたちで、長い太刀を背負っている。太刀の鞘もまた地味な灰一色。静かに、しかし研ぎ澄まされた、この世界では他にない、気配を放っていた。

 六つの光を追って黒い竜が森を突き破って表れた時も、微塵の揺らぎも見せなかった。ただ、ギンと研ぎ澄まされた気配がさらに鋭さを増した。


 「助けてください!」白い光から心話が飛ぶ。男がかすかに頷く。六つの光が男の背に垂れたフードに飛び込む。


 「ゴガー(俺の獲物をよこせ!)」黒い竜が怒りの咆哮を上げる。


 男の気配がさらに研ぎ澄まされていく。


 黒い竜がブレスの溜めに入る。


 「瘴気のブレスよ。避けてーーー」光たちの悲鳴が響く。


 黒い竜のブレスが放たれた瞬間、男の手が太刀に触れ、「キン」と澄んだ音がした。


 「キャーーー」光たちの悲鳴。しかし、瘴気ブレスは男の両脇を過ぎていく。だが、男は静かに立ったままであった。


 「どうなったの?」「ブレスは?」「やられちゃったの?」姦しい。


 その時。


 黒い竜が真っ二つに裂けた。


 「えっー?!何が起きたの?」「なんで竜が二つになっているの?」

 ・・・「この人がブレス事切った」黒い光の感情のないような声。

 「うそ、剣抜いてないよ」「ブレスなんか切れるわけないし」

 ・・・「私にはギリギリ見えた。それくらい速かった。」緑の光が緊張したような声で言った。「キンという響き。あれは超高速で抜いた剣を鞘に納めた時の音。」


 「なんか落ち着くぅ」こちらは緊張感の無い声。黄の光。

 「あんたが一番バテてたんじゃない」さっきまでふらつく黄の光をなんとかガードにまわっていた赤い光。

 「魔力とは違う。でも確かに清冽で落ち着く感じ。」静かな声で青い光。


 前方100メートルくらいのところに真っ二つになった黒い竜の開き。そこまで地面にも深い亀裂が刻まれていた。



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