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白日  作者: 瑞條浩幹
第一章 始まり
6/17

第六話 2日目

すみません、暫く別件で停止しておりました!また再開します

「疲れた……」

 朝日がビルの山から顔を覗き始めた頃。ようやく自分の部屋に戻ることが可能になった誠介は、眠気と疲れで動かない足に鞭を打ち、自室の前までたどり着いた。

 そのままドアを開けようと鍵を差し込むが、何故か鍵はかかっていなかった。

「あれ……俺閉めたんだけどな」

疑問を持ちつつ、まああの時は急いでいたから忘れていたのかもな、と自己完結をして中に入ると……

「んだよこれ……」

 玄関には、いや奥の部屋にも、見える限りの床全てに靴跡が無数に付いていた。誰かが土足で上がったということだ。

 初めこそは邦海か夏あたりがいたずらでもしたのだろうか、と思っていたがその考えも一瞬で打ち砕かれた。


 邦海が倒れていたのだ。


「邦海!大丈夫か!?」

 慌てて駆け寄って体を揺するが返事はない。しかし息はしているのを確認し、ひとまず安心した誠介は、夏がいないことに気づきまた胸騒ぎがした。

「夏!どこにいるんだ!?」

 返事はない。誰かに連れていかれたのか、最悪……。

 誠介は顔が青ざめていくのを自分でも分かった。何かが起こり夏と邦海は襲われたのだろうか、と。



 暫く立ち尽くしていると寝室の方から物音が聞こえてきた。それと同時にすすり泣きをする誰かの声も。

 軽く肩を震わせた後、警戒しつつゆっくりとドアを開けた。

「なっちゃん……」

 そこには夏がおり、誠介を見て安心したのか再び泣き始めていた。

 慌てた誠介はとりあえずそこにあった毛布をかぶせて、頭を撫でた後アイスココアを淹れにキッチンへと向かった。また倒れていた邦海をソファーに寝かせ、同じく毛布を掛けた。

 暫くすると、夏が寝室から出てきた。そして、ソファーの空いているところに座るとぼんやりとしている、放心状態といった感じだった。

「なあ、なっちゃん……昨日何があったんだ?」

 ココアを手にキッチンから出てきた誠介は夏に優しく尋ねた。しかし、夏は肩を震わせただけで何も言わない。余程のことがあったのだろう、誠介も背中をさすって何も言わずに喋ってくれるのを待った。


 時計の音が三百回鳴った後、夏はゆっくりと喋り始めた。

「ベルが鳴ったから有間君が出たのね。そしたら急に『逃げろ!』って聞こえてきたから、寝室に駆け込んで物陰に隠れたの。しばらくやり合ってたみたいなんだけど……気づいたら私寝てたみたいでさ、さっき誠介がドアを開ける音で起きた」

 言い終わると、ココアを飲みながら毛布で顔を押さえた。そして、また泣き始める。

「なるほどな……」

 大体の事情が分かった誠介はそれっきり黙り込んでしまった。誰も何も言わず、重たい空気が場を支配する。

 沈黙を破ったのは誠介の無意識に出た一言だった。

「……ねみぃ」

 一睡もしていないため、部屋に入ってからも瞼が鉛のように重くなっていた。

 その直後、突然夏は顔を上げて立ち上がり、持っていた毛布を優しく誠介に掛けた。

「私はもう大丈夫だから。あなたはとりあえずシャワー浴びて寝なさい」

 そういって珍しく微笑んだ。それはすぐに消え、真顔に戻ったときにはいつもの夏に戻っていた。だが、昨日の不安がまだ完全に消えたわけじゃない。夏の顔が、目がそう言っていた。

 しかし、誠介は甘えることにした。夏には逆らわない方が身のためと同時に、自分よりも夏の方が色んな意味で強いと思ったからだ。

「わりぃな、11時になったら起こしてくれ。ここに人が来る」

「誰?」

「えっとだな……ここに住んでる古河真紀って言う大学生と、あと何か見習い探偵とか言ってたな」

「分かったわ」

 机に置いてあったチラシに何かを書き込むと、誠介に向かってグッドサインを出した。

「じゃ、いってらっしゃい」



  〇



「……なっちゃん何してんだ?」

 風呂から上がった誠介は、洗面台の鏡に向かって何かをしている夏を見かけた。

「化粧。この後人が来るんでしょ?目の下のクマとか見せられないじゃない」

 確かに先程目の下にクマがあったのだが、しっかりと隠そうとしているのを知って誠介は苦笑いした。

「……別にそこを気にするような人じゃなさそうだったけどな。まあいいや、おやすみ」

「おやすみ」

 誠介は、寝室に入ろうとドアに手をかけたが、ふと邦海の姿が視界に映り、手を離して彼の所に向かった。そして、安らかな寝息を立てている邦海の頭をなでながら呟いた。

「夏の事を助けようとしてくれてありがとな。また今度何かおごるよ」


 寝室に行った誠介は、余程眠かったのか秒で寝てしまった。

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