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白日  作者: 瑞條浩幹
第一章 始まり
3/17

第三話 窃盗事件

「ありがとうございましたー」

 いつもの事務的な笑顔で客を見送った後、並んでいた次の人の相手をしようとしたその時、背後で誰かが肩を軽く叩いた。振り返るとそこには背の高い定員、要するに誠介の先輩が立っていた。

「一条、シフト変わるぜ」

「あ、ありがとうございます」

 本当はあと30分はあるのだが、先輩からの好意を捨てない誠介は即答で礼を言い、更衣室で着替えを済ませる。

 そして、晩御飯を買うためにさっきまでバイトをしていたコンビニで買い物をし始めた。

「えーっと、サラダと、ハンバーグにするかオムライスにするか……」

 ハンバーグだと米を炊かないといけないのでオムライスにしよう、と決めた時、急に誠介の頭に何かを押し付けられた。

 その直後押し付けた人であろう人物がそのまま誠介の耳元で要求してきた。

「そこにあるオムライスを三つ買え。さもなくばお前の懐はすべてなくなるだろう……」

「……」

 聞きなじみのない声に動揺し、また突然の要求と脅しに嫌悪感を抱いた誠介は沈黙で押し通すことにした。それにより現場には沈黙が走り、周りはざわつくも暫くすると微動だにしないまま突っ立っている。

 その状況に耐えきれなくなったのか、後ろにいた誰かが呟いた。

「いや黙らんとってや。やってるこっちが恥ずかしいやん」

 聞きなれた低音ボイスに関西弁交じりの声。後ろにいるのが誰か分かった誠介は、要求通りオムライスを二つかごの中に放り込み、後ろを振り返る。

 後ろにいたのは、誠介の予想に反してもう一人いた。

「何してんだよ邦海……て何でなっちゃんまで!?」

 後ろにいたのは、玩具の拳銃を持ったなっちゃん……矢口夏と誠介の同級生、有間邦海がいた。

「な、なんでいるんだよお前ら」

 戸惑いつつももう一つかごに突っ込んでいる。

「今日は誠介のバイトの日やったなぁって思って部活帰りに寄ってったろーって思ったらお前の彼女さんいてはってさ」

「んでどうせだったら驚かせよっか、ってさっき百均でこれ買ってきた」

「何してんだよお前ら……」

 話を聞きながらレジに並び、途中でサラダも放り込んで結局かなりの出費となった誠介は呆れそして引いた。

 店を出る前に「うちの学校のやつらがどうもすみませんでした」と一応レジにいた先輩に謝った後、コンビニを出て三人で並んで帰ることにした。

「で、お前ら晩御飯俺んちで食べるのか?」

 誠介が住んでいるアパートの前まで来た時、ふと気になったのか二人に向かって聞いた。

「じゃなきゃオムライス3つ買ってとか言わんやろ」

 何言ってんや、と邦海は笑い飛ばす。誠介は「ま、そうだよな」と言って階段を登り始めた。



  〇



 家に帰った一行は、それぞれ各々のしたいことをしていた。

「オムライスあっためる人ー?」

 キッチンにいた誠介が、リビングにいた二人に聞くと、即座に答えが返ってきた。

「強の二分半で」

「俺は冷たいままでええよー」

 それを聞いた誠介はオムライスを2つ電子レンジで温め、その間にスプーンや何やらを机に持ってきた。

 その支度が終わったと同時に電子レンジの音が聞こえてきた。誠介は中からオムライスを取り出し、熱そうに持ちながらリビングの机へと運んできた。

 それを見た邦海はスマホゲームを早急に済ませ、机の前に座る。

「「「いただきまーす!」」」

 食べる前に夏は机に置いてあった麦茶をこれまた机にあったコップに入れてから食べ始めた。

 しかし、二分半も温めたオムライスは当然熱く、二人は同時に叫んだ。

「熱っ!」「やっべ、温めすぎた」

 そんな二人を冷ややかな目で見つめる邦海であった。



「でさ、夏先輩から聞いたんだけど、自分明日デート行くんやって?」

「ああ、まあな……」

 食べ終わりプラスチックの容器を片付けていた誠介と邦海は、誠介の明日の用事について話していた。夏はというと、風呂い入るため勝手に誠介の部屋から服を取ろうと寝室に向かっている。寝室の扉を開けた時、目の前の惨状に夏は思わず叫んでしまった。

 悲鳴を聞いて慌てて駆け寄った二人はその光景に呆然と立ち尽くした。なんと、寝室の引き出しという引き出しが開けられていて、クロ―ゼットの服が引っ張り出され荒れ放題。


 なんと、荒らされていたのだ。

「だ、誰がこんなことしたんだよ!」

 誠介が怒りを込めて叫ぶと、夏は寝室の中にある机に向かっていった。どうやら何かを見つけたようだ。

 暫くして戻ってきた夏の手には白い封筒があった。夏は封筒の表を誠介たちに見せながら書いてあることを声に出した

「……『夏と誠介が写ってる写真をもらった』」

「……は?」

 誠介は訳が分からないといった風に首を傾げた。その様子を後ろから見ていた邦海は軽く口を開けた状態で何か考え込んでいた。



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