第十二話 絶体絶命
「んんー!」
星梨奈は誠介達に気づき、必死にもがいた。誠介は慌てて口に貼られていたガムテをはがし、手足に括られていた縄も解いていた。
星梨奈を解放し、互いに顔を見合わせて笑いかけたその時だった。
「……え?」
入口の扉が一人でに閉まった。
いや、勝手に閉まるだなんてことはないだろう、床に重しを置いて扉を固定しておいたのだから。
「誰や?」
驚いた邦海は慌てて扉の方に行き、もう一度開けようとした。しかし、何かがつっかえているようで開かなかった。
「あ、開かへん……」
邦海の呟きに夏は目を見開いた。
「閉じ込められたの!?」
「有間危ない!」
星梨奈が突然叫んだ。頭上を見ると、黒い物体が邦海に向かって落ちてきている所だった。パチパチと軽快な音を出して落ちてくるそれを邦海は咄嗟に持っていた刀でそれをはじいた。
床に落ちたそれは、電気がついた状態のスタンガンだった。
「え、怖い怖い怖い!!」
邦海は一目散に誠介の方へ走って行く。それを投げてきた人を目だけ動かして無言で捜していた夏は、倉庫の横に付けられている階段からゆっくりと降りてくる人物を見つけた。
「ふん……折角の俺からのプレゼントだというのに……」
階段を降り切って誠介達の前に姿を現したその人は、不気味な笑いを浮かべて邦海に言った。
「あれ?ここって2階建てやったん?」
あまり入っていなかったためか階段がある事なんて知らなかった邦海は誠介に小声で聞いた。
「すみっこに階段があるんだよ」
男は顔に笑いを浮かべたままスタンガンを拾うと、スイッチを切った。
「誰だあんた?」
誠介が怒りを込めて叫ぶと、夏と邦海が同時に呟いた。
「昨日俺の頭を殴ったやつ」
「昨日誠介の家に入ってきた人」
「「んで……高木さんの先輩」」
どうやら二人は顔を見ていたらしく、見た途端に気づいていたようだ。
高木の先輩というのは、恐らく高木から謎について聞いていた時に分かったのだろう。実物を舐めまわすように見ていたのならともかく、写真だけで水をかけると文字が浮かび上がるだなんてことは分からない。
犯人以外は。
男は口角を上げて二人を称賛した。
「ご名答。それじゃあ、昨日一緒に来てた女、そして君の部屋を荒らした人は?」
「え?それって……」
「今2階で私に向かって銃を構えてる人!」
自分とちゃうん?と言おうとした邦海を遮り、星梨奈が緊迫した声で叫んだ。
男は愉快だとでも言わんばかりに豪快に笑った後、一歩踏み出した。
「見えてたんだね、まあ良しとしようじゃないか。それじゃあ、今君たちの状況はどうなっているかな?」
どう考えてもこちら側が不利だ。何とかしようにも扉が閉められていては逃げ出そうにも捕まってしまう。救いを求めるように邦海は誠介の顔を見た。邦海の思考とは真逆で、誠介はどこか勝ち誇ったような顔をしていた。
「それはこっちが聞きたいね。なあ、高木さん?」
そう言うと、誠介はおもむろにスマホを取り出した。彼のスマホは、通話中になっていた。ここで話していたことは全て筒抜けだったのだ。
「な!?」
男が驚いて目を見開いた途端、開かなかったはずの扉が勢いよく開いた。
そこには、高木と何十人の警官がいた。
「すみませんね、先輩。俺、正義感だけ人一倍強いんで」
「え、他は?」
邦海が間髪入れずに聞くと、高木は笑みを向けた。しかし目は全く笑っておらず、無言で睨みつけていた。
「あ、すんません……」
すると突然、上で銃を構えていた女は威嚇のためか拳銃を壁に打ち、叫んだ。
「あんたたちそっから一歩も動くんじゃないよ?こいつがどうなってもいいのかい?」
しかし、女の言葉には高木はひるまず、無言で一歩後ろに下がった。
「お願いします、春井さん」
春井と言われた一人の警官は、待ってましたとばかりに女に向かって拳銃を打った。撃たれた弾は女が持っていた拳銃に当たり、女の拳銃は後ろに飛ばされた。
「かかれぇー!」
春井が叫ぶと、一斉に警官が中に入っていき、ものの数分で男と女を捕え、連行していった。
「大丈夫だった?」
ひと段落ついた後、高木は誠介たちの方に歩いて来た。
「あ、やっべ刀……」
そう、邦海は今刀を持ってるのだ。銃刀法違反に引っかかってしまったら大変なことになる————。




