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純白の鎧で、異世界救います  作者: スイミン
9/12

どうやら彼と少女の物語が始まるようですよ。

静かな森、近くには小さい村がある。建造物は家だけだが、それでも平和な場所に俺はいる。俺は気づいた頃にはここにいた。覚えているのは、1人の人間の願いによって生み出されたということだ。その人間はこの村を守ってくれという願いを俺に願った。俺は自分の力を使ったことがないのに、なぜか自分がどういう力を持っているのが分かっていた。俺はその日、村を襲っていた集団を追い払った。村の皆が俺にお供え物と言って果実や野菜などをくれた。その村の連中の笑顔は俺を幸せにしてくれた。この幸せを皆にもっと上げたいと思った。俺のことが見えていた人間はたった20年で死んでしまって、俺の事が見える人間はいなくなってしまった。だが、それでも人間達は俺に色々な願い事をしてくる。だが、俺は全然辛くはなかった。叶えてあげれば笑顔が見れる。そして、色々な食べ物をくれる。正直食事は自分で取りに行けるが、それでもくれるものはとても嬉しかった。でも、いつからだろう、人間の願いがだんだん欲深くなっていったのは、ある者は金を、ある者は地位を、ある者は殺しを願う者が多くなっていった。もちろん俺は叶えてやった。だが、徐々に誰もお供え物をくれなくなっていった。そしてついには誰も俺にお供え物をくれなくなってしまった。俺は辛くなってしまって、しばらく眠ることにした。どれほど寝たかなんてわからないが、俺はとうとう眠ることさえ出来なくなってしまい、起きることにした。気がつくと、村が燃えていた。何が起きたと思い周りを見渡していると、謎の集団によって村の皆が殺されていた。俺は何やら大きな声で喋っている人間の男のもとに近づいた。

「貴様らは、我が大国の領地に入り込んでいる!よって貴様らには消えてもらう!」

俺は何を言っているのか分からなかった。でもこのままじゃ皆が殺されてしまう。そんなのは嫌だ。だから俺はその男を殺した。もちろん村の皆を助けに向かった、すると目に映ったのは、村の者同士で殺しあっているのが見えた。聞こえてきたのは、どうやら金を奪い合うためにおたがいを殺し合うことにしたようだ。それを見て俺は村の皆を救うことをやめた。村の者同士で殺し合うのであれば、俺がどんなに止めても意味が無い。俺は騒がしい村の音を無視しながら意地でも眠りに入ることにした。

あれから何日経っただろうか、いや、もう何日どころではないことに気づいた。俺は起きたらすぐに寝るようにした、だがどうしても起きてしまう、だから俺は自分に暗示をかけた。自分のことが見える人間が現れるまで永遠の眠りにつくと、そして俺は本当の長い眠りについた。


「くまさん?」

そう聞こえて、俺はゆっくりと目を開ける。どっから声が聞こえてきたか分からない、すると下から何かに触られている感触がした。

「くまさんふっかふかぁ」

俺はビックリして小さき者から離れる。キョトンとした顔で見つめてるその小さき者はなぜか俺に笑いかける。俺は逆に威嚇する。

「大丈夫だよ?何もしないからね?ね?安心してこっちにおいで?」

その小さき者の声と表情を見た俺はなぜか自然と小さき者に近寄っていた。

「はじめまして!私の名前はローズっていいます!5歳です!」

「そんなこと俺は聞いていない。さっさと家に帰れ!」

俺は小さき者に軽く息を吐くと、小さき者は後ろに転がっていった。だが、小さき者はまた近づいてくる。

「私はお名前を言いました!だからくまさんのお名前も教えてください!」

「しつこい!さっさと帰れ、小さき者よ!」

俺は追いつかれないように、暗い森の中を進んで行った。小さき者は追いかけてこなかった。空が暗くなり、さすがに小さき者はいなくなっていた。

「一体なんだったんだ。あの者は・・・」

考えても仕方ないので、俺は元の位置に戻り、再び眠りについた。

次の日の朝、目が覚めると、あの小さき者が目の前に座り込み、じぃーっとみつめていた。

「あ、おきた!」

俺は寝返り、小さき者の反対方向に向く。だが、小さき者は俺の視界に入ろうとする。何回も寝返りをしても、俺の向く方には、必ず小さき者が視界に入る。

「しつこい!!!」

俺は昨日と同じように、森の中に隠れる。小さき者は悲しそうな顔をして帰って行った。

「俺は別に悪いと思ってなどいないぞ」

俺は1人でそう呟き、また眠りに入る。夜に1回、目が覚めるがやることがないので再び眠る。

そして次の日の朝も、その次の日の朝も、またその次の朝も、小さき者はやってきた。その生活が約1ヶ月続いた。

そしてこの日はいつもと違い、小さき者は何やら焼き菓子を持ってきた。どうやらクッキーと言うやつを作ってきたらしく。最初に食べて欲しかったのは俺だと言った。

「はい。あーん」

小さき者は口を大きく開けた。この時の俺は前よりは小さき者の警戒をしていなかった。俺は久しぶりに、人間が作った食べ物を食べた。ただ食べている姿を見るだけで、小さき者は本当に嬉しそうに笑う。俺は小さき者に初めて質問する。

「小さき者よ。なぜ俺に構う、村の友達や家族と過ごせばいいのに、なぜだ?」

その問いに小さき者は頬をふくらませながら俺に言ってくる。

「私は小さき者って名前じゃありません。1ヶ月前くらいに名前を教えたはずです。もしかして忘れましたか?」

「人間の名前など、覚える必要がないからな。誰も俺のことは見えやしないし」

俺がそう言うと、小さき者は嬉しそうに俺の顔に向かって抱きついてくる。

「じゃあもう一度だけ、私はローズ。5歳、となると私がくまさんの初めての友達ね。私ね、実は友達がいないの、でも今日からくまさんが私の友達になってくれるのね。とっても嬉しい・・・」

「俺に友などいらぬ。ただ生きてさえいれば、それ以外何もいらん」

「でも、呼び方とか困るし。だからくまさんの名前教えて?」

俺は毎回聞かれるのがめんどくさくなり、本当のことを話すことにした。

「俺に名前などない。生まれた頃から名前などつけてもらった事がないのでな」

「そうなんだぁ。んー」

ローズという少女は考える。としてなにか閃いたような顔をして俺を見る。

「じゃあくまさんの名前もローズね?おそろいだし、かわいいし、何よりずっと友達って感じがするわ」

ローズは嬉しそうに笑う。この笑顔、昔はもっと多くの人がしていた気が・・・。

「ん?どうしたのローズ?」

「いや、なんでもない・・・あと俺の名前を勝手にローズにするな」

「えぇーだめぇ?」

こうして俺とローズは出会って1ヶ月で友達になった。

それからというもの、ローズ毎日のように俺に会いに来た。雨が降っても雨具を着て訪れ、どんなに強風が吹いても、俺のところに来た。初めて特定の人間とこんなに長くちゃんと話したかもしれない。そして俺は初めて、こんな時間が退屈だと思わなくなっていた。

ローズと出会ってからもう5年になった。ローズも10歳になり、初めて会った時に比べて大人っぽくなり、髪も伸ばすようになった。

「ねぇ、ローズはなんでここにずっといるの?」

「いきなりどうした?そんなことを聞いて」

「いや、私と出会ってから5年も経つのに、1度もここから離れようとしないじゃない?どうしてかなぁってもう2年くらい悩んでてさ」

俺はあまり自分の過去を話すのは好きじゃないが、2年も悩んでてくれたローズになら俺の過去を話してもいいと思えた。

「つまらん話しだ。もう自分の歳なんかわからないくらい生きているからな。でも、ローズには話してやろう。俺の過去を・・・」

そうしてしばらくの間、俺の過去をローズに話した。俺が生まれたと言っていい日、その時の人々、その時に叶えてやった願い、俺が覚えている事の全てを長々と話した。

「まぁつまらねぇ話だがこんなところだ。俺は人間を信じることをやめてしまったってだけだ・・・」

すると、ローズが俺の頭を撫で始めた。その手から感じたのは、やさしく、全ての疲れを癒すような手だった。

「辛かったんだね、ずっと人間達の願いを叶え続けて、最初は良かったのに、欲深くなった人間のせいで、ローズは人間を信じられなくなっちゃったんだね。でも、私はあなたを裏切らないから、ずっと一緒にいるからね。だって私達、友達だもん」

その言葉を聞いて、俺は心が満たされたようだった。今までの人間達と違い、俺はこの少女のためだけに俺の持っている全ての力で幸せにしてやろうと思った。だが、人間達はそんな小さな願いすらを許しはしなかった。

さらに数ヶ月が経ち、俺はローズが来るのを楽しみに待っていた。ずっと眠っている時とは違い、今はローズが来てくれる日々が、毎日俺を早く起こしてくれる。だが、今日はいくら待ってもローズが来なかった。晴れているのにおかしいと思った。さらに時間が経ち、もう夕方になっていた。

「遅い・・・ローズの身に何かあったのか?」

俺は心配になりローズが教えてくれた家に向かう。ローズが言っていた家に着き、窓ガラス越しから家を除くと、ベッドから空を眺めていたローズと目が合った。

「ローズ?!来てくれたの?」

「今日来なかったからな、心配になって来てみたんだが・・・具合でも悪いのか?」

「まぁ、ちょっとね・・・でも明日はいくよ?だから心配しないで?」

ローズは俺に笑いかける。その笑顔を見て、俺は安心した。いつものローズだと、俺は彼女に頷き、持ってきた黄色い花を窓ガラスの空いたスペースに置く。

「これは、ローズが取ってきてくれたの?」

「森の中に綺麗な花畑があったのを思い出してな、そこから少し拝借させてもらった」

ローズは窓ガラスを開け、その花を手に取り、香りをかぐ。

「いい匂い、幸せの匂いがする・・・」

「そうか、じゃあ明日その花畑に連れてってやろう」

「ほんとに?!じゃあ明日お弁当作っていくね!あとローズには特別に私の好きな絵本を読ましてあげる」

「じゃあ明日、いつものとこで待っているからな。気をつけて来なさい」

彼女の頷きを見て、俺はいつもの場所に戻り、眠りに入ろうとする。明日の事を楽しみにしながら・・・。

翌日、楽しみでいつもより早く起きた俺は、久しぶりにあくびをしながら待っていた。本当に久しぶりのあくびで、自分でもビックリした。そうして待つこと1時間後、ローズの足音が聞こえてくる。俺はその足音がする方に体を向ける。

「おまたせ、待たせちゃったかな?」

「いや、今起きたばっかりだ。気にしなくていい」

俺はローズに初めて嘘をついた。でも、この嘘はいい嘘なはずだ。だって、ローズは笑ってくれているから。

「なら良かった。じゃあ行きましょうか」

「いや、少し待て、準備をするから」

「準備ってなんの・・・」

俺は人間のイメージを強く考え、自分の姿を徐々に人間の姿に変えていく。そして最終的には髪の長い黒髪の男性の姿に変えた。

「えぇー!ローズって人間だったの?!」

「いいや、あの姿が本当の姿だが、今日はお前と同じ姿で歩きたいと思っただけだ」

俺がそう答えると、なぜかローズは頬を赤く染めるが、すぐに笑顔になる。

「そっか!じゃあ準備も出来たところで行きましょう!」

そうして、俺達は森の中に入っていった。その道のりでのローズとの会話は楽しかった。彼女との会話はどんな些細な出来事でも楽しく感じられる。話をしていると、あっという間に着いてしまった。一面に咲く様々な色の花畑を見た彼女は喜びながら花畑に向かって駆け出した。その表情は本当に幸せそうで、彼女の喜んでくれた事に、俺は幸せになれた。

「ありがとうねローズ、こんな素敵なお花畑は生まれて初めて見たよ」

「なに、気にするな。お前が喜んでくれると、おれも嬉しいからな」

「ふふっありがと。じゃあいっぱい歩いたし、お昼ご飯にしましょ?」

俺達は花畑の中心にある平らな岩に座る。まぁこの岩は見つけた時は座れるような岩ではなかったので、俺が切ったのだが、それは言わないことにした。

「じゃあきょうは腕によりをかけて作った私のお弁当をどうぞ!」

そうして開かれた弁当箱にはさまざまなサンドイッチが色鮮やかに並べられていた。

「うん、とても美味しそうだ」

「そう言ってくれると、作ったかいがあったよ」

そうして俺達は昼飯を食べ始める。ローズが作ったサンドイッチはどれも美味しく、こんなにご飯を美味しく食ったのは生まれて初めてだった。

「うん、すごく上手い。この薄い肉と野菜にかかっている黄色い液体がすごく合ってて美味しい」

「あぁ、それはねハムとグリーンカールにマヨネーズをかけたの、すっごく美味しいでしょ?私もそのサンドイッチ好きなんだぁ」

そうして楽しい会話をしながら最後のいちごジャムのサンドイッチを食べ終え、昼飯は終わった。

「ごちそうさま、すごく美味しかったよ」

「どういたしまして、じゃあこの後どうする?」

「そうだな、昨日言ってた本が読みたい・・・」

「わかった。じゃあ私の1番大好きなこの黒バラ王子と白バラ姫を聞かせてあげる」

彼女は本を取り出し、俺の隣で読もうとするが、俺は彼女を持ち上げて、俺の足の間に座らせる。彼女は驚いていたが、結局笑ってくれた。そしてそのまま彼女は読み始める。

「その昔、黒の王国と白の王国のふたつの国で大陸の支配者を決める戦いがありました。昔はふたつの大陸は仲がよく、争いごとのない平和な大陸でした。しかし現黒の王国の王様と現白の王国の女王様が仲が悪く、結果、戦争になってしまったのです。ですが、その両国には思いを寄せる2人の男女がいました。黒の王国の王子、ブラック。白の王国の姫、ホワイト。この2人は昔から仲が良く、いつも一緒にいました。まだ平和だった頃、2人はある約束をしました。15歳になったら結婚しよう。2人はその約束を固く結びましたが、親のせいで、15歳になった今、2人は約束を果たせず、愛する人がいる王国を眺めるばかり。2人は同じ日に、王国の王にお願いをします。「お願いします。どうかあの国あの人と結婚させてください」しかし、2人の王は2人の願いを拒否しました。このままでは徐々に戦争が大きくなり本当に会えなくなる。2人は同じ日に城を抜け出します。この日は結婚を約束した日だったのです。2人は馬を走らせます。あの日約束した両国の境目にある時計塔に向かって、日が暮れてなお、2人は進みます。持ってきたロウソクの火を頼りに。そうして日が昇る頃、ブラックは時計塔にたどり着きます。ですが、どんなに周りを見渡しても、愛するホワイトは見当たりません。ブラックは叫びます。彼女の名前を叫び続けます。喉がかれて、声がとうとうでなくなります。彼は諦めかけたその時、目の前に白いドレスを着た彼女ホワイトと出会います。お互いが強く抱きしめます。もう離れないように、もう離さないように、そして2人は永遠の愛の口づけを交わします。太陽がのぼり、時計塔の鐘の音を聴きながら・・・」

彼女は本を閉じる。2人のハッピーエンドのストーリーに俺は感動した。感動しすぎて涙も溢れてくる。それを見たローズが慌てて俺に話しかける。

「どっ、どうしたの?!そんなに泣くような話だった?!」

「いや、まず本を読んだことがなかったから、まさかこんなに泣ける本だとは思わなくて・・・」

俺は涙を止めようとするが、なかなか止まってくれない。それを見た彼女は優しく微笑む。

「ローズは本当は泣き虫さんだったんだね。ちょっと以外だなぁ」

「いや、俺が泣き虫なんかじゃない。きっとこの物語を読んだ奴らは、皆号泣するはずだ!」

「まぁたしかに私も泣いたけど、さすがにローズほど号泣はしなかったよ」

「そっ、そんなことよりも、もう1回聞きたい!もう1回読んでくれ!」

「えぇー!また読むのぉ?」

「頼む!俺は字が読めないんだ」

俺がそう言うと、彼女は仕方なさそうに言って、笑顔で読んでくれた。だが、結局1回では終わらず、その後10回ほど読んでもらった。

「もう疲れたから今日はおしまい!」

「むぅ、まぁ仕方ないな。じゃあ花で少し遊ぶか?」

「っうん!!」

俺達は花畑で沢山遊んだ。追いかけっこをし、お互いに花輪を作り、髪飾りも作った。そうして遊んでいると、気がつけばもう日が暮れそうになっていた。

「そろそろ暗くなるな、それじゃあここまでにしてそろそろ帰ろうか」

「そうだね、私のママとパパが心配しちゃう」

俺達はお互いに作った物を交換して、帰ることにした。だが、もう暗くなってしまう中、ローズをひとり家に帰らせる訳にも行かない。俺は人間の姿から、再び熊の姿に戻る。

「ローズ、俺の背中に乗れ。家まで送ってやるよ」

「ほんとに?!やったぁ!」

彼女は嬉しそうに俺の背中に乗ろうとするが、高くてなかなか乗れない。俺は手を足場にして、彼女に背中に誘導する。

「たっかいねぇ!それに背中もフワッフワッだぁ」

ローズは俺の背中に顔をうずめる。俺はこの時初めて自分の背中に人間を乗せたことに気づいき、フッっと笑った。

「それじゃあしっかりと捕まってろよ!」

俺は全力とまでは行かないが、軽くジョギング程度に走る。ローズは笑いながら「はやーい!」と叫ぶ。ローズが喜んでいる声を聞いているとなんだか自然と笑顔になる。あっという間にローズの家の目の前にたどり着いた。

「今日はありがとうね。すっごく楽しかった!また連れていってくれる?」

「あぁ、いつでも行きたい時に連れてってやる」

「じゃあまた明日ね」

そうして彼女が家の中に入るまで見届ける。扉を占める前に彼女が笑顔で手を振って、ドアを閉めた。俺はこんなに幸せと感じた時間は初めてだった。またいい場所を見つけたら、真っ先にローズに教えようとそう思った。だがこの日、俺はローズのそばにいるべきだった。 まさかこの後、あんな事が起こるなんて・・・ローズも俺も、誰も思いもしなかった。


ローズを見届けて俺はいつも眠っている場所にたどり着く。俺は今日疲れた気持ちと、幸せな気持ちが混ざって複雑だったが、ローズの笑顔を思い出すだけで、疲れなんか感じ無くなっていた。俺は今日の出来事とローズの笑顔を思い出しながら、幸せな気分で眠りに入った。

すると突然、近くからとてつもない爆発音が聞こえてきた。俺は飛び起き、周りを見ると、あたり一面が燃えていた。

「これは、一体何が起こってこんなことに・・・」

俺はパニック状態に入るが、すぐに正気に戻り、1番最初にローズの顔が思い出した。俺は全力でローズの元に向かう。俺は心の中で自分に言い聞かせる。

(大丈夫、きっとローズなら平気だ。きっと今頃家から飛び出して、逃げようとしているはずだ。だから大丈夫だ。でもどうか、頼むから無事でいてくれ!)

そして俺はローズの家の前にたどり着く。

「ローズ!!!」

俺は目の前にある光景に絶望する。ローズの家は潰れていて、炎が家を焼き尽くそうとしている。俺はまだ希望をもちながら匂いでローズを探す。匂いを追って行くと、近くから苦しそうな声が聞こえてきた。この声に聞き間違いなはずがなかった。俺は声がした場所に向かうと、そこにはボロボロになったローズが倒れていた。

「ローズ!!しっかりしろ!!!」

俺は人間の姿になり、ローズを抱き抱える。するとローズの目が開き、俺の名前を口にする。

「ローズ・・・よかっ、た。無、事で」

「何言ってるんだ!お前はこんなにボロボロになって!でも安心しろ、必ず助けてやるからな!」

俺はローズをおぶって走る。もしかしたら近くに医者がいるかもしれない。俺は血眼になって探す。でもまったく医者の姿が見えない。村はほぼ全焼して、村の人々も燃えている。

「くそっ!一体誰がこんなことを・・・」

「ローズ・・・」

「安心しろ!今見つけるから!」

「話を・・・聞いて?」

ローズの手が俺の肩を強く握る。俺は一旦ローズを背中から下ろし、抱き抱える。

「やっぱり泣いてる・・・ローズは、泣き虫だから」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?!お前、今にも死にそうじゃねぇか!」

「私・・・実はね、重い病気をもってて、もうそんな長く生きられないの」

「何わけのわからないこと言ってんだよ・・・今は医者を探すことが優先だろ?」

「私、心臓と膵臓が弱くて、もうあと1年も生きられないの・・・」

彼女の言葉がちゃんと耳に入ってこない。焦りと当然の暴露に頭が追いついていけない。

「だけど私、今幸せなの、あなたに触れて、あなたに触れられて、あなたを見て、あなたに見られながら私はいけることが、今すごく幸せなの・・・」

「やめてくれよ・・・まだまだこれからだろ?俺達はずっと友達って言ったのはローズ、君だろ?なら自分で言ったことには責任持って果たせよ!」

「ごめんね?でも、私はずっとあなたのことを見てるから、ずっと見守っているから。あなたに見えなくても、私はずっと・・・」

「待ってくれ!俺をまた1人にするな!俺は君がいないと生きている実感がわかないんだ!だから行くな!俺のそばにいてくれ!!!」

「でも最後に、私のことを、どう思っているかだけ、聞かせて?・・・」

俺は止まらない涙を流しながら、彼女の問いに答える。

「好きだ!愛してる!本当に愛してるんだ!だから行くな!!!」

その言葉を聞いた彼女は、いつもの幸せそうな笑顔を俺に見せる。彼女の手が俺の頬を撫でる。

「あぁ。まるでブラックとホワイト見たい・・・私もあなたのことが大好っ」

俺を撫でていた手が力を無くして落ちた。彼女の顔は幸せそうに笑っていた。

「最後までちゃんと言えよ・・・ローズ・・・」

俺はローズの体を抱きしめる。強く、強く。

すると後ろから大量の人間の大きな足音が聞こえてきた。

「おやぁ?まだ生存者がいたのか?まったく余計な仕事を増やすんじゃねぇよ」

振り返ると、そこには男の姿があった。俺はその男に問いかける。

「おまえ達が、やったのか?・・・」

その問いに、気色悪い笑顔でその男は答えた。

「そうでぇす!私たちがやりましたぁ!上からの命令でこの村を私の隊の拠点にするからって言ったら、村長と皆さんが嫌がったので、じつりょくこうしさせていただきましたァっておや?そのガキは私が来た時に暴言を吐いた小娘じゃないか!その子の知り合いってことは同罪だなぁここで死になさぁい!」

男は俺に斬りかかってきた。だが、すぐにその男は異変に気付く、なぜなら斬りかかったはずなのに、俺は全くの無傷だったから、すると頭に何かがぶつかった。それを見た男は絶叫した。頭にぶつかったのはさっき俺に斬りかかった腕だったから・・・。

「お前、達は、たったそれだけで村の皆を殺した。許されることじゃない・・・」

俺は少しずつ自分の本当の姿に戻る。けど、何かが違っていた。でも、そんなこと気にしなかった。

「うっうるさい!私の方が偉いんだから、私に従えばよかったんだ!てかお前達何してんだはやくこのバケモノを殺せ!」

男の部下が俺に向かって走ってくる。でも、俺にとっては都合がよかった。自分から殺されに来てくれたのだから・・・。

「だが、それ以上に、オマエたちハ、オレのタイセツな人ヲウバッた」

俺は爪をたてて向かってくる兵士の顔に切りかかる。

「キサマラハゼツボウシ、キョウフノコエヲサケビナガラアノヨニイケェ!!!」

その光景は、まるで血の雨が降り続ける地獄のようだった。俺はその後の記憶がなく。そして、気がつけば黒い角が生えていた。横に何かが転がっていたので拾ってみると、それは最初に見たあの男だった。その表情は恐怖し苦しそうな表情だった。俺はなぜか大声で笑った。まるで狂ってイカれた人のように、でかい声で笑った。

「ローズ、俺は新しい目的ができたよ・・・俺はお前を生き返らせる。それが例え、悪魔に心臓を捧げることになったとしても・・・」

その後俺はローズを花畑の中心にある岩のそばに埋めた。そして俺は歩きだす、彼女を生き返らせる、その為だけに・・・

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