どうやら俺はこの世界の勇者らしいですよ。
少しの間お互いのでかたを伺っていると、先に動いたのは。黒き喰人だった。奴は真っ直ぐ俺に向かって走ってくる。俺は自分の右手の拳を強く握りしめ、思いっきり殴りかかった。
だか、俺の拳は奴には当たらず。気づけば奴の姿はどこにもなかった。
「くそ、あの一瞬で一体どこに・・・」
すると突然、地面から謎の黒い手が俺の足を掴んできた。
「くそ!離せ!!!」
俺は必死に振りほどこうとするが、掴む力が強すぎて全く振りほどけない。そのまま黒い手は俺を地面の中へと連れていこうとする。
「俺を地面の中に閉じ込める気か!」
俺の体は既に腰まで埋まっていたが、全身が埋まる前に地面に拳を叩きつけようとすると、何故か俺の拳が少し白い光を纏っていた。俺はそのまま地面を殴ると、地面が割れ、白い光が地面を照らした。すると俺を掴んでいた黒い手が離れたのを感じた。俺は直ぐに起き上がると、さっきまで消えていたはずの黒き喰人がよく見ると少しダメージを受けて地面の中から出てきた。
「どうゆう事だ?」
すると直ぐに奴は再び動き出し、屋根の上に飛び移って逃げていった。
「逃がすかっ!」
俺は奴を追いかけたいが、そのためには俺も屋根の上に行かなければいけなかった。だが、家の高さは約6メートルから7メートルあるため飛び移るのは無理だと感じるのが普通だったが、なぜか俺はこの鎧を着ていると、どんなことでも出来る気がした。俺は両足に力を入れて飛んでみると、その高さは7メートルを軽々超え、50メートル程飛んでいた。
「やべぇ、飛びすぎた。けど、見つけたぞ!」
俺は無事家の屋根に着地すると、全力で奴に追いつくために走ってみると。俺は人間離れした速さで走っていることに気づいた。どうやらこの鎧は身体能力を急激に上昇させる能力もあるようだ。そしてあっという間に奴に追いつくことが出来た。
「やっと追いついた。もう逃げらんねぇぞこの真っ黒くろすけさんよぉ」
そう言うとやつはまた家と家の間へと入っていった。
その時、俺はあることに気づいた。
「もしかしてあいつは・・・」
俺はそれを確かめるために、とりあえず降りることにした。
すると奴は再び地面の中に潜っていった。俺はさっきの拳に光を拳に纏うのではなく、今度は全身で白い光を放つイメージをする。すると全身が徐々に白く光だし、そしてその白い光を一気に解き放った。すると周りは白い光に包まれ、奴の叫び声と共に奴は地面から姿を現した。かなりダメージを受けながら。
「やっぱりな。分かったぞ、お前の能力と弱点を!」
そう俺はもうやく気づいた。なぜあの時やつは突然と消えたのか、なぜ俺の白い光の拳がやつにダメージを与えたのか。それは・・・
「どうやらお前の能力は、影の中を自由に動けるらしいな。でもそれは影のある場所じゃなければ意味がない」
そう、これがあいつの能力。そしてやつの弱点は・・・
「そしてお前は、明るい光に弱い。どうやら太陽の光は平気なようだが、俺のこの純白の鎧から生み出す白い光にはどうやらダメージを与えるだけの効果があるみたいだな」
奴の口はとても悔しそうに、歯ぎしりをしていた。すると、奴の体がすこしずつ変わってきていることに気づいた。爪が伸び、筋肉がさらに膨張してパワーと切断能力を上げてきた。どうやら自分の体を自由に変形させて強化することも出来るようだ。
そして、そのまま真っ直ぐ俺に向かって突っ込んでくる。
「なるほどね、お前がどうして強いって言われているのかが分かった気がするよ。でもここで終わりにさせて貰うよ」
俺は心を落ち着かせ、拳に白い光が纏うイメージをして攻撃の構えに入る。
「神宮寺流 五の型・・・」
左手を前にして奴の心臓に合わせ、右手の拳を強く握りしめる。そして奴が左手に触れた瞬間。左手で押し返し、押し返した所に目掛けて拳をぶつける。
「破臓!!!」
奴の胸にぶつかけた瞬間。奴の胸には穴が開きそして後方へと吹っ飛んで行った。周りの人々は驚いていたが、奴は徐々に塵となって消えていった。 皆が突然の出来事で沈黙していた時・・・
「晴明様・・・」
そう言われて後ろに振り返ってみると、そこにいたのはシルフィとカナリアだった。
「黒き喰人は・・・」
「あぁ大丈夫、倒したよ」
すると、周りにいた人々が一斉に叫び出した。
「すげぇぞあの白い鎧の奴!あのダークイーターを倒しちまったぞ!!!」
「こりゃとんでもないやつが現れたぞ、もしかしてらあいつは・・・」
「あぁ間違いねぇだろ、あの方はきっと・・・」
次の発言により周りの騒ぎをさらに大きくした。
「勇者様だぁ!!!」
その瞬間から純白の鎧を着た時の俺は、街の人々から勇者、と呼ばれるようになった。
その日の夜、俺達はシェラの家にいた。今も街の連中は勇者の話しで昨日来た時よりも騒がしかった。
「街中あんたの話題で大騒ぎだね。勇者様?」
「やめてくれよシェラ。恥ずかしくなる・・・」
シェラが俺をからかってくるが、俺は自分のことを勇者と言われることに対して、正直抵抗があった。
「いいじゃない。勇者なんてなりたくてなれるもんじゃないんだからさ?」
「そりゃそうだけど、俺は今まで自分のことでこんな大騒ぎされたことがないからさっ」
その時、あの夢の光景を思い出してしまった。あの悪い夢を思い出すだけで、一気に寒気がやってくる。
「ん?どしたの、急に黙っちゃって」
「いや、別になんでもないよ」
そんな時、シルフィ達がお風呂から出てきた。
「おまたせしました・・・あら、晴明様、お顔が少し苦しそうですが大丈夫ですか?」
シルフィが俺に駆け寄ってきてくれる。それはとても嬉しいことだが、あの夢を思い出すとダメだった。
「心配してくれてありがとうシルフィ、確かに今日はいろいろと大変だったからね。部屋に戻って休んでくるよ」
「あれ、夜ご飯は食べないの?」
「ごめん、今日はいいや」
俺はシェラそう言って、部屋のベッドに横になりながら今日のことを出来事を思い出す。
あの黒き喰人を倒したあと、俺達はなんとか人混みから抜け出せたものの、シルフィとカナリアが俺の、勇者の関係者と分かってしまったため、買い物をせず帰ってきてしまった。シェラはどうやら噂を聞いておそらく家にまっすぐ帰っていると考えていてくれたおかげで、シェラとの待ち合わせについては解決した。
「これからどうしよっかなぁ・・・」
問題なのは、シルフィとカナリアが勇者の関係者と街中の人々に知れ渡ってしまっているため、彼女達に何らかの被害がある可能性があること。そして、俺が勇者だとはまだ知られてはいないが、シルフィ達といることで、確実にばれてしまうことだ。俺が勇者と知られれば、きっと危険な場所に連れていかれてしまう。それを特にシルフィは着いてこようとしてくるはず、そのシルフィが着いてくるなら、カナリアも来ることになってしまう。彼女達にわざわざ危険な場所についてきて欲しくないから・・・
すると、ドアを軽く2回叩く音が聞こえた。
「晴明様、少しよろしいですか?」
どうやらシルフィが心配してきてくれたようだ。
「うん、入っていいよ」
「失礼します」
ドアを開けた彼女の後ろにはなんとカナリアも一緒に来ていて、そのカナリアの両手には、今日の食べるはずだった夕食を持っていた。
「やっぱり何も食べないのは体に悪いと思いましたので、持ってきてしまいましたがよろしかったでしょうか?」
彼女達の親切な行いに、俺はとにかく嬉しかった。「うん、やっぱり何も食べてないとお腹が減っちゃって困ってたところなんだ」
「そうですか、なら良かったです。実は夕食を持っていくことを提案したのはカナリアなんですよ?」
そう言われて、俺はカナリアを見る。さっきまで俺の顔を見ていたようだが、俺が見た瞬間下を向いてしまった。
「カナリアが提案してくれたのか、ありがとう」
そう言うと、彼女は少しだけ笑ってくれたようなそんな気がした。
「じゃあそこのテーブルに置いといてくれ」
カナリアはなぜか首を横に振った。
「どうしたのカナリア?」
シルフィがそう言うと、カナリアが喋り出した。
「ご、御主人様に食べさせてあげたくて、持ってきました」
その時、この部屋の時間だけが止まったかのように静かになった。たが、外の賑やかな声はずっと聞こえていたので、ほんの数秒で正気に戻った。
「えぇっと、食べさせてあげたいってことはその、そのままの意味って事でいいのかな?」
すると彼女は首を縦に何度も振った。
「ちょ、ちょっとカナリア?!そんな失礼なことしちゃだめでしょ?」
「で、でも、あの時のご主人様、何か悲しそうだったから・・・」
俺は少し驚いた。確かにあの時、あの夢を思い出して怖くて苦しいのと誰からも認識されなかった悲しさがあの時はあった。それをカナリアは見破っていたことに、俺は驚いたのだ。俺は彼女の行為に甘えることにした。
「じゃあ、お願いしようかな」
すると、シルフィが「えぇっ!」っと大きな声で驚いいたのでちょっとびっくりした。
「ど、どうしたのシルフィ?」
「あ、いえ別になんでもありませんよ」
シルフィがそう言うと、近くにあった椅子に座った。カナリアも近くにあった椅子を俺のベッドの近くに持っていき座わった。長方形のトレーを膝上に置き、食べさせる準備をすませる。
「で、ではご主人様、お口を開けてください」
彼女は恥ずかしそうにそう言うが、俺もかなり恥ずかしかった。
「お、おう」
カナリアの手から、一口サイズの肉が俺の口へと送られる。とても恥ずかしかったが、それを超えて俺は嬉しかったのでとても満足だった。シルフィが笑顔で見ているけど、なぞの威圧感をこちらに向けていたことは気にしないことにした。
食事を終え、カナリアが片付けに行っていると、シルフィが俺に聞いてきた。
「晴明様は何か武術を習っていたのですか?」
あの時の戦いで俺の戦いかたを見て、そう感じたのだろう。彼女の質問に俺は答える。
「まぁ、ちょっとね。うちの家はね寺、こっちで言うと教会?みたいな場所なんだけど、昔は寺も兼ねて道場もやってたんだ。それで俺もじいちゃん、まぁ祖父と親父によく武術の鍛錬をさせられてたんだ」
そう、俺の家はただの寺ではない。約戦国時代から続く由緒ある寺なだけではなく、その時代から続く武術の家でもあった。でも、俺のじいちゃんがよく言ってたな。
「いいか晴明ちゃん、うれらの神宮寺流は昔から人を殺めることに特化した言わば殺しの技なんじゃ。使い方によっては、簡単に人を殺してしまう危険なものじゃ。いいか教えはするけど、決して善良な人には向けてはならんぞ。いいか?」
じいちゃんは俺がまだ7歳ぐらいの時に死んでしまって、そのあとはずっとオヤジと鍛錬していたため、シルフィが武術の話をしてくれなかったら、きっと思い出すことは無かったかもしれない。
「だから晴明様はあんなにもお強いのですのね」
「そんなことないよ。まだ全然出来ない技もあるんだから」
「そうなんですか。あの、もう1つ質問してもよろしいでしょうか」
「もちろん、構わないよ」
彼女は再び質問する。
「晴明様の着ていたあの鎧は一体なんなのでしょうか?」
彼女の質問に、俺は「あぁ・・・」っとなった。
「そう言えばシルフィ達には言ってなかったね。実はあの鎧はシェラが言うにはどうやら七精神器った言うらしいんだよ」
俺は彼女が驚くと思ったが、そこまで驚かず、むしろ納得したような顔をしていた。
「驚かないのか?」
「いいえ驚いてはいますよ。ですがなんか納得してしまって、ということはあの鎧は光の精霊神様のですか?」
「どうやらそうらしいね、俺もこの鎧を着たのは2回目だからそんなによく分からないけど」
でも、少しだけなら分かったこともある。この鎧は俺の意思によって鎧を着ることが出来る。そして鎧を着た俺の身体能力は格段に上がる。とり会えず俺に分かるのはこれだけだった。
「とりあえず今日は疲れたからもう休むよ」
「わかりました。それでは、おやすみなさい」
「あぁおやすみ」
そうして彼女は部屋から出ていった。俺は明かりを消して眠りについた。
またあの夢だ・・・俺はまた俺の居た村に立っていた。
でも前の夢とは少し違っていた。とりあえず俺は自分の家に帰ることにした。家に着き玄関の鍵を隠している植木鉢の下を見てみると、そこに鍵はなかった。試しに玄関を開けてみると、普通に開いた。不用心だなぁと思いながら居間をみてみると、そこには親父とばぁちゃんが2人でコソコソと何やら話をしていた。
「晴明が殺されたのは確実に奴らだな」
「母さん、俺たちにも呪人影が見えたけど、あれは成人したら見えないはずじゃ・・・一体どういうことなんだ」
どうやらあの日のことについて話しているようだ。今の端っこに置いてある仏壇には、俺のじいちゃんの写真と母さん、そして新しく俺の写真が置いてあった。それを見て俺は改めて、自分が死んでしまったことに気づく。
「それはわしにも分からん。だが、おそらくまたこの村になにかが起ころうとしているのは確かじゃな」
「だからといって、どうして俺の息子が犠牲にならなきゃいけない!!!」
「落ち着け源十郎。わしだって晴明を失ってつらいわい、でもな、1番傷着いているのは結じゃわい。あれからずっと晴明の部屋に塞ぎ込んでしまって、食事を取ろうとしないのじゃ」
「結ちゃんは晴明のことが好きだったからなぁ・・・しかもあんな姿を見てしまったらもう・・・」
沈黙が2人の時間を止めた。俺は自分の部屋に向かった。そこに結が居る、一体あれからどうなってしまったのか、心配で心配で仕方なかったから。
部屋に着き、ドアを開けようとするとなぜか鍵がかかっていた。俺は結の名前を呼びながら意地でもあけよ
うとする。すると突然俺はドアを通りぬけ、自分の部屋に入ることに成功した。どうやら幽霊みたいな存在なため、物質を通り抜けることが出来るみたいだ。
俺は部屋に置いてある電子時計の時刻を見る。
7月27日午前11時と書かれていた。あれからもう5日も経っていた。俺が向こうに送られてからまだ2日しか経っていないのに時間の進みが違うのを痛感した。本当なら今日の今の時間ならとっくに部活に行っているはずだった。俺は自分のベッドを見ると、そこには結がよこになって寝ていた。
俺は彼女に近づき、顔を覗くと、目はあの時と変わらず腫れていて、ベッドは1箇所に大きく濡れている跡が残っていた。おそらくあれからずっと泣いていたのだろう。唇が乾燥して荒れていて、体つきもこの数日でかなりやつれているのが分かった。
「そんなになるまで落ち込みやがって。おまえらしくねぇな、いつもみたいにバカみてぇに元気でいてくんねぇとえろいことしちまうぞ?」
俺は結に語りかけるが、寝ていて気づかない。いや、分かってる。俺の言葉はここじゃ誰にも聞こえないことは分かっているが、どうしても語りかけずにはいられなかった。もしかしたら、気づいてくれるという可能性を信じて。
「晴明・・・」
結が俺の名前を呼んだ。俺は気づいてくれたのかと思ったが、彼女の目は閉じていて、寝言だということに少しだけガッカリした。でも、次の言葉を聞いて、俺の心に刺さった。
「好きなの・・・だから、そっちに行かないで・・・」
俺は心が痛いのと同時に後悔が残った。正直、みんなが結は俺の事が好きだということは信じていなかったから。本人が俺の事を好きだと言った時、あぁ本当だったんだなという嬉しさと、俺が死んじまう前に告白しておけば良かったという後悔が混ざって、つい涙が出てきてしまった。
「バカだよなぁほんと・・・ほんとに死んでから気づいて後悔するとかまじでないわぁ」
俺は結の手を握る。俺には感触があるが、結にはどうやらないらしい。でも、俺はそれでも握り続けた。この夢から目覚めても、この感触を忘れないように、強く、強く握った。
「また会えたね、お兄ちゃん・・・」
この声は身に覚えがあった。後ろを振り返ってみると、あの少女、咲羅が目の前にいた。
「お前、俺に一体何したんだ・・・」
少女は黒い長髪を揺らしながら、俺に近づいてきた。
「あなたを異世界に飛ばした。まぁ正確に言うなら、私がいた世界に飛ばしたって言った方が良かったかな」
「俺にあの時、世界を救えって言ってたな。それはどういうことなんだ」
少女は振り返り、俺の質問に答える。
「ごめんなさい、もう時間なの・・・」
そう言うと、俺の下にまたあの黒い空間が広がる。そして俺を飲み込んでいく。
「また会えるのは当分先になってしまうけど、それまであなたはあなたで頑張って、そして次に会えたら、またお話しましょ」
「おい、まてっ・・・」
俺は何も出来ず、そのまま全身を飲み込まれた。
俺は目を覚ますと、知ってる天井をぼーっと眺め、しばらくしてから外の様子を見る。昨日に引き続き晴れていて、眩しくて少し目を細める。
昨日、買っておいた黒い服に着替えながら、今日見た夢を思い出す。咲羅は俺に私がいた世界に飛ばしたと言っていた。つまりあの少女はこの世界にいた者でどういう理由かは分からないが俺の世界にやって来てそしてあの日なぜかおれに世界を救ってと言われてこの世界にやってきた。つまりこの世界を救わない限り何も解決しないということなのか、さっぱりわからん。俺は一旦考えることをやめて、下に降りる。
すると、昨日に引き続きみんなすでに揃っていた。
「晴明様、おはようございます」
「ご、ご主人様、お、おはよう、ございます」
「晴明はまた1番遅いよ!次起きれなかったらご飯抜きにするよ?」
「はっはっ坊主は朝が苦手か?もしかして昨日の夜なにかしてたんじゃねーのか?」
「してませんよ!シェラそれだけはマジで勘弁して、シルフィもカナリアもおはよう」
一人一人に話をした所で俺は洗面所で顔を洗い、テーブルに座った。
食事を終えて、今日はどうするかを話し合うことにした。
「今日は冒険者初のクエストを受けたいと思うんだけど、どうかな?」
俺はシルフィとカナリアに尋ねる。
「私は構いませんよ、そろそろ働かないと体がなまってしまいますから」
「わ、私も、構いませんですっ」
「今日は難しいのじゃなくて、簡単なやつをやろう。俺も初めてだからまずは簡単なのからやっていって、徐々ににあげていこう」
そうして、今日やることも決まり、出かける支度をすませる。
「あ、シェラ、今日も馬車お願いしてもいい?」
俺はシェラにお願いして頼むと、「いいよぉ」っと返事をしてくれた。
そうして10分後、シェラの馬車に乗ろうとすると。
「坊主、これを持ってきな」
ガングさんにそう言われて俺が受け取ったのは銀貨30枚も入った袋だった。
「こんな大金貰えませんよ!!!」
「坊主にじゃねーよ、シルフィとカナリアにだ!」
「どうしてこんなに・・・」
「坊主はか弱い女に何も防具も買ってやらねぇのかい?」
そう言われて気づいた。確かにシルフィ達はなにも守る手段がなかった。これじゃあ怪我をさせに行くようなもんだった。
「クエストの報酬が貯まったら必ず昨日のと合わせて返しします」
「おうよ、利子つけてかえせな」
ガングさんはわらいながらそう言い、俺達の姿が見えなくなるまで、手を振って見送ってくれた。
ギルドより先に俺達は防具屋に来た。シルフィとカナリアの防具を買うためだ、俺達は馬車から降りた。
「終わったら迎えに来ようか?」
シェラはそう言ってくれたけど。
「いや、帰りは歩いて帰るよ。昨日見れな買ったところも見てみたいし」
「そうね、じゃあ気おつけていってらっしゃい。っとそうだ、これ持ってきな」
そう言われてシェラから渡されたものは、頭に被るフードのようなものだった。
「昨日の騒ぎでシルフィとカナリアの顔がバレてるんだから、顔隠せるものが必要でしょ?」
「た、たしかに・・・」
「それを被っとけばとりあえず大丈夫だと思うから、被っときな」
そう言われて、俺は2人にフードを渡す。
「ありがとうシェラ、このお礼は必ずするよ」
「それじゃ期待しよっかな、んじゃまたね」
そう言ってシェラは帰って行った。
「それじゃあ入ろっか」
「はいっ」
そうして俺達は防具屋に入った。
「いらっしゃい」
そう言って出てきたのは、昨日のハゲてるおっちゃんだった。どうやら俺達の事は覚えていない様子だった。
「彼女達に合う防具をお願いします。銀貨30枚で」
「銀貨30枚で嬢ちゃん達に合う防具は、これなんかどうだ?」
そう言われて出てきたのは、銀色の普通の鎧だった。
「これなら嬢ちゃん達にでも扱えるくらい軽くて、防御力もそこそこあるぞ?」
確かに持ってみると、軽くてかなりの強度があった。この軽さなら全然動くのには邪魔にならなそうだ。
「じゃあこれを1回着てみようか。おっちゃん、試着室はどこ?」
「左に2つあるだろ、今誰も使ってないから2つとも使っていいぞ」
「さんきゅ、おっちゃん」
「さんっきゅう?、なんの言葉か知らねぇけど、別にいいぜ」
「じゃあ早速着てみてくれ」
「それでは行ってきます」
俺は彼女達に鎧を渡した。約15分後、彼女達の着替えが済んだようだ。
「出来ました」
「わっ、わたしも出来ました」
そうして出てきた彼女達を見て、不具合がないか確認する。
「どうだ?なにか気になるところはないか?」
俺がそう聞くと、彼女達は同じこと言ってきた。
「はい、実は少し胸がきつくて、少し苦しいですね」
「わっ、私も正直苦しいですっ」
確かにいつもみたいに彼女達の大きな胸が無理やり閉じ込められたように、きつそうだった。
「お、おっちゃん、調整頼めるかっ?」
俺は顔が熱くなってるのを感じながら、おっちゃんに頼む。
「お、おう、今回は特別に調節はタダでしてやるけど、さすがにサイズは自分で測ってくれ、ほらっ」
そう言われて渡されたのは、小さいメジャーだった。
「じゃ、じゃあ俺後ろ向いてるから、2人でちゃっちゃっと測ってくれ!」
「わかりました。それじゃカナリア後ろ向いて」
「う、うん」
2人はサイズを測り始めるが、話し声が聞こえてくる度に少し緊張する。
「カナリア、前よりまた大きくなったわね」
「ぜっ、全然お姉ちゃんの方が大きいよ」
「そうかしら?そのうち抜かされちゃうようなきがするなぁ」
「ちょっ、お姉ちゃん変なとこ触らないでよ!」
「ごめんなさいね、今度はちゃんと測るから」
「もぉ・・・」
俺は後ろを向いているはずなのに、後ろから漂う桃色の景色を感じられた。
「あんちゃん、おめぇの連れ、顔は見れねぇけどおそらく美人姉妹なんだろう?一緒にいて、正直溜まんねぇのか?」
武器屋のおっちゃが俺の耳元で囁いてくる。
「な、何言ってるんですか。俺にはもう心に決めた人がいるんです」
「ほほぉ、その人はあの姉妹より胸は大きいのか?」
「い、いやそこまで大きくはないですけど・・・って何言わせるんですか!」
そんな会話をしていると、「終わりましたぁ」っと言う声が聞こえた。
「お、終わったか。じゃあこの紙に書いてくれ」
おっちゃんが紙とペンをシルフィに渡す。
「はい、わかりました」
そうしてシルフィ、カナリアが記入しておっちゃんに渡す。「おぉ」っと言ったおっちゃんが俺に近づいてくる。
「あんちゃん、これ見てみろよ。シルフィちゃんはバスト102、カナリアちゃんはバスト97だってよ」
「い、いちいち報告しなくていいから、さっさとやってくれ!」
俺は顔を熱くしながらおっちゃんに言った。おっちゃんは「へいへい」と言って、奥の方に入っていった。
それから約20分後、おっちゃんが調整した鎧を持ってきた。
「これでもう大丈夫なはずだ。着てみてくれ」
そうして再び彼女達に鎧を渡し、着替え終わったところで2人ともカーテンを開けた。
「どうですか晴明様、おかしくはないでしょうか?」
「わっ、私、鎧なんて始めて着ました」
「ふ、2人ともよく似合ってるよ」
俺は彼女達にそう言うと、「良かったぁ」っと息を吐きながらそう言った。
「あんちゃんにいいもん見せてもらったお礼にこれも付けてやるよ」
そう言われて貰ったのは小刀2本だった。
「なんかに襲われた時に使いな」
「じゃあ、ありがたく貰っていくよ」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとう、ございます」
「おう、頑張ってきな」
そうして俺達は防具屋をあとにした。
少しして、ギルドに着き。クエストが貼られている掲示板を見に行った。
「んーこの腐食犬20匹の討伐はどうかな?」
「いいと思います。私達でも腐食犬なら簡単に倒せます」
「ひっ、火に弱いから、私も活躍できるよ」
「じゃあこれで決まりだね」
俺はクエストの紙を持って受け付けに向かう。俺達は歩いてる途中、あんなに騒がしかったギルドの中が静かになってるのに気づいた。俺は後ろを振り返ってみると、シルフィのフードが偶然鎌を持った男の武器に引っかかってしまい、彼女の顔がバレてしまった。
「おい、あの子、昨日純白の鎧の勇者と一緒にいた女じゃないか?」
「うそ、じゃあ今一緒に男の人ってもしかして・・・」
周りの目が俺をじっと見てくる。
「あいつ、勇者じゃないか?・・・」
あぁ、この後一体どうなっちまうんだ・・・