どうやら俺は彼女達のことが気になってしょうがないらしいですよ。
綺麗な銀髪に、夜に光る赤い、いや紅い瞳の可憐な美女が俺の首筋に小刀を当てて睨んでくる。だけどその姿も俺は綺麗だと思ってしまった。
「さぁ!ここは一体どこなの?あなたは一体何者なの?!」
さすがの俺もここまで警戒されるとかなり傷ついた。あの時せっかく助けてあげたのに、この仕打ち、俺のひ弱なメンタルに相当なダメージを負わせた。でも、俺は彼女の質問に丁寧に答える。
「ここはイースター街の武器屋の2階だよ。君たちはあの黒い化け物、黒き喰人に襲われているところを俺が助けたんだよ。覚えてない?」
そう説明すると、彼女は何かを思い出したようだ。俺の首筋に当ててる小刀を鞘に戻してくれた。
「ごめんなさい、気づいたらこの部屋にいて誰かがこっちに来る足音が聞こえたから警戒してしまったの。本当にごめんなさい」
彼女は深く謝罪した。まぁ小刀を軽く首にあててだけで、体に傷は付けなかったから気にしないことにした。まぁ心にはかなりダメージを受けたけど・・・。
「別にいいよ。そりゃ突然男が入り込んできたらそりゃ女性からしたら警戒するのは当たり前だと思うし、俺がノックもしないで入ってきたのがそもそも悪いわけだし、こっちこそすみません」
俺も深く反省する。まぁ最初からノックしていればこんなことにはならなかっただろうし。
「いえ、私こそ助けて頂いた恩人に刃物を向けてしまったこと。本当にごめんなさい。そして、あの時助けていただき。本当にありがとうございます。」
さっきまでの彼女とは違いとても礼儀正しく、何より彼女の笑顔が、俺の心臓の鼓動を早くさせた。
「そ、そんなことより怪我の痛みはないかい? とりあえず目に見える外傷は俺が治しといたけど・・・」
「そんな、回復魔法まで使って頂いたのですか?」
彼女が急に俺の方に歩み寄り、彼女の顔が目の前にまでやってきた。
「えぇまぁ・・・痛そうだったので」
すると、今度は壁の方に歩きだし座り込んだ。
「そんなことまでしてもらった恩人に対して、私は本当になんと恩知らずなことでしょう。これはもう私の命を差し出すしかないのかしら」
「いやいや、そんな事しなくてもいいから。それにさっきも言ったけど別に気にしてないから。俺は別に恩を売るために君たちを助けたんじゃないから」
俺がそう言うと、壁に座り込んでた彼女は再び俺の目の前までやってきた。
「この度は、黒き喰人から守って頂いただけではなく、治療までして頂き。本当にありがとうございます」
彼女は深々と俺にお辞儀をした。
「申し遅れましたが。私はシルフィと申します。ベッドで寝ているのが私の妹のカナリアと言います」
知ってるとはいえ彼女が自分の名前ともう1人の彼女の名前を教えてくれたので俺も自己紹介をすることにした。
「俺の名前は神宮寺晴明。名字じゃ長いから晴明でいいよ」
「では、晴明様とお呼びしても?」
「様付けはちょっとやりすぎなんじゃ・・・」
そう言った瞬間、彼女の顔がまた近くまでやって来た。
「何を言いますか!晴明様は私たちの恩人。それくらい私は晴明様に感謝しているのです」
彼女の熱意と恥ずかしさで、俺はもう何も言えなかった。
「もうわかったよ。ところで話は戻るんだけど、傷の痛みはないか?」
「えぇ。痛みはもう全くありません。ですがさすがに今日はずっと走っていたものですから疲労は残ってまして、でも晴明様の回復魔法のおかげで明日の朝まで横になればきっと回復してと思います」
俺はだた傷の手当てをしただけなんだけどなぁっと思ったけど、まぁ本人がそう思っているならいいか。
「なら良かった。それじゃあ俺はもう部屋に戻るよ、おやすみ。シルフィ」
「はい、おやすみなさい。晴明様」
彼女は笑顔でそう言った。俺はまた心臓の鼓動が早くなるのを感じた。部屋に戻り、ベッドに横になりながら今日の起きた出来事を振り返る。いきなり違う世界に送られて歩いていると、呪人影とそっくりな化け物黒き喰人に追いかけられるシルフィとカナリアと出会ってその後黒き喰人を倒し、シェラと出会い、シェラの父親のガングさんと知り合った。その後シルフィに襲われるけど、最終的には落ち着いてくれて良かったなぁ。
「ったく、今日1日中働きすぎてもうクタクタだ」
そんなことを呟きながら、俺は眠りにつくために目をつぶった瞬間。疲れすぎたせいか、すぐに眠りの世界に入ったのだった。
俺は気づくと、俺が暮らす村にいた。俺は帰ってこれたのかと嬉しくなり、自分の実家の寺へと走る。帰ったらまず何をするかは決まっていた。結に会う。これが俺が最初にすることだった。なんせ結に帰ったら最初にお前に会うって約束をしたから、破るわけにはいかなかった。
そして実家の寺の門の前に置かれた看板に、俺は息を呑んだ。
「なんだよこれ・・・」
その看板に書かれていたのは、「故 神宮寺 晴明 葬儀式場」と書かれていたのだから。
次々と俺が見たことある人や友人が俺の実家の寺に入っていく。
「一体、何がどうなってるんだ・・・」
俺は自分の死を認められなかった。だって俺は今ここにいるんだから。あんな看板を信じられるわけがなかった。
そして、続々とある一室に人がが集まっている部屋にたどり着く。俺は覚悟を決め、その部屋に入った瞬間。俺は言葉が出てこなかった。なぜならそこにあったのは、俺が笑っている顔が写っている大きな写真が中心に置かれていて、左右に大きな花が飾られていたのだから。
「そんな、嘘だろ?」
俺は自分の写っている写真の目の前を立つ。そして俺はひとつおかしな点に気づいた。
「どうして俺の遺体はないんだ?」
すると、何やらこそこそと話し声が聞こえてきた。
「ねぇ聞いた?晴明くんの死因・・・」
「聞いたわ、どうやら通り魔殺人で殺されたって」
「しかも、その犯人ね。晴明くんの首から上を切って持ち出したそうよ」
「なるほどねぇ、どおりで晴明くんの遺体を式に出さない訳ね」
どうやら話を聞くに俺は通り魔に殺された言うことになっているらしい。俺はショックがデカすぎて、少し何も考えられなかった。
「それにしても、結ちゃん・・・あんなになっちゃって、可哀想に」
「仕方ないわよ、うちの娘が言ってたけど・・・結ちゃん、晴明くんのことが好きだったみたいだから、相当ショックだったんでしょ」
俺はその名前の彼女、結が居る方向を見てみると。彼女の目は全く光をうつしてはいなかった。あんなに綺麗だった長髪の黒髪は、ボサボサで白髪がちょくちょく生えているのが見えた。俺は結に少しずつ近づき、彼女の頬に手を当てる。
「結、本当は気づいてるんだよな?実はドッキリでしたぁっていうオチなんだろ?なぁ・・・」
結は全く反応しなかった。目もずっと下を向いていて、俺の顔を見ようとしない。
「兄貴もいい加減にしてくれよ。そんな意地悪な兄貴は兄貴らしくないぞ?」
兄貴の晴天も、俺がどんなに肩を揺らしても反応はない。
「親父、ばぁちゃん。俺はここに居るんだぞ?分かるだろ?なぁ?」
親父もばぁちゃんも一切なんの反応もない。
「どうしてだよぉ・・・」
俺は、家族の誰から反応してもらえないことがもうすでに限界だった。そして突然、俺の下に現れたのはあの時の少女、咲羅が作り出した黒い空間だった。その空間は徐々に俺の体を飲み込んでいく。
「待ってくれよ。なぁ結!!!、兄貴!!!、親父!!!、ばぁちゃん!!!」
俺は全力で叫ぶが、誰も気づいてはくれなかった。そうして俺は黒い空間へと吸い込まれるのだった・・・
「はっ!」
俺は目を覚まし、気がつくともう外は既に朝になっていた。
「夢・・・か」
俺は小さくそう呟き、自分の心臓に手を当てる。物凄く心臓の鼓動が早く動いているのを感じる、息もあまり整っていない。
そんな時、1階からシェラの声が聞こえてきた。
「晴明、朝ごはんできたから降りてきてぇ」
「今行くよ」
俺は、1階にいる彼女に聞こえるぐらいの大きな声でそう言った。
「・・・着替えるか」
そう言った後、俺は昨日ガングさんに借りた服を脱ぎ。昨日の夜にシェラが俺の着ていた服洗い、乾かしてくれた服に着替える。シェラの風の魔法のおかげで、洗って直ぐに乾かしてくれたので助かった。そうして俺は和服に着替え、1階に向かう。
1階に降りてみると、もう既にシルフィとカナリアにガングさんが座っていた。
「おはようございます。晴明様」
「おはようシルフィ。あれからよく眠れたかい?」
なんて言って、俺自身はあんな夢を見たって言うのにこんな質問と思った。
「はい。あれからすぐベッドに横になったら寝てしまいました。おかげで疲れが取れました」
彼女の笑顔は、何度見ても心臓をうるさくさせる。
「なんだ?坊主はシルフィが目覚めてたこと知ってたのか?」
「あぁ、まぁ昨日の夜いろいろとありまして」
「えぇ、本当にいろいろあって。ごめんなさい」
俺と彼女は同時にそういった。ガングさんは何があったかのかについては追求はしなかった。
「ほらカナリアもご挨拶して・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
カナリアは黙ったまま一瞬こっちを見たが直ぐに下を向いてしまった。
「ごめんなさい、この子人見知りで」
「あぁ別に大丈夫ですよ」
それにしてもカナリアの髪は本当に綺麗な紅い色だなぁ。目は銀色に輝いてて、シルフィとは逆なんだということに気づく。
「そんなことより晴明は顔洗ってきな。もう朝ごはん食べちゃうわよ」
「すぐ行きます!」
俺は全速力で洗面所に向かった。
顔を洗ってようやく朝ごはんにを食べ始める。今日の朝ごはんはパンにハムと野菜を挟んだ簡単なものだが、これがなかなか美味かった。
「てか、シルフィはどうして街の外にいたの?」
シェラがシルフィにそう聞くと、シルフィは下を向いてしまった。
「ごめんなさい。あまり言いたくないの・・・」
彼女の表情から何かよっぽどのことがあったことが分かった。
「まぁ言いたくないならいいけどね。あ、今日朝ごはん食べたら私と晴明は冒険者ギルドに行って登録の手続きしてくるついでに何かかってきて欲しいものとかある?」
シェラがそう言うと、シルフィが咳をしながら驚いていた。
「晴明様は冒険者ではなかったのですか?!」
「あぁそういえば聞いてなかったっけ」
シルフィは驚いたあと、何かを決意したような顔で俺に言い出した。
「晴明様。不躾なお願いだとわかっていますが、もしよろしければ、私を晴明様のパーティに入れてください!!!」
シルフィが頭を下げてそう言った瞬間。ここにいる全員が驚いた。あのカナリアでさえも驚いた顔をしていた。
「な、何を言ってるかわかってるのシルフィ?!それにあなた居酒屋で働いているでしょ?」
「居酒屋はこの前少し問題が起きてしまって・・・何があったのかは言えませんが、もうあそこには戻れません」
シルフィの辛い顔を見て、相当なことがあったに違いない。
「だからと言って、何故わざわざ危険な冒険者になろうと思った?その理由を聞かせてくれ」
ガングさんがそう言うと、シルフィは下を向いたまま答えた。
「私は晴明様に命をお救い頂きました。それに回復魔法までかけて頂いて、今まで生きていた中でこんなにも誰かに優しくされたのは、幼い頃以来でした。私は思ったのです。この人になら私は全てを捧げてもいいなんなら物として扱ってもらったっていいと。それが私が冒険者になろうと思った理由です」
それを聞いた皆が悩んだ。そしてガングさんが答えた。
「で、どうするよ坊主」
「えっ俺ですか?」
「あったりまえだろ?これを決める権利があるのは坊主だけだ」
俺が決める。そんなことをしてもいいのだろうか、彼女は俺のために危険な道を行こうとしてる。いつ死ぬかも分からないようなそんな冒険者の世界に彼女を巻き込んでいいのか。ダメだ俺には決められない。だって彼女の人生は彼女自身のものだ。俺が決めていいはずがない。でも、彼女自身が俺について行きたいと言っている。なら、ここで1番正しい選択は一体なんなんだ。そんなことを考えていると、ガングさんが言った。
「坊主はシルフィのこれからのことを見越して考えてやってるようだが、こんな世の中じゃ言っちまえばいつ死ぬかなんで誰にもわかんねぇぞ。突然疫病にかかって死ぬかも知んねぇし、突然魔物や魔族に襲われて死ぬかも知んねぇし、もしかしたら人間にだって殺される世の中だ。絶対に安全な場所なんてとこはどこにもねぇ。ならさ俺は思うわけよ、自分のしたいこと、自分がして欲しいことに正直でいようってな。だからさ坊主、今坊主はシルフィに正直にどうして欲しいのかを、坊主の本心をそのまま言えばいいんだよ」
俺の本心を彼女に・・・俺は今思ったことをシルフィの目を真っ直ぐ見ながら話す。
「シルフィ。実はさっきまで君を連れていく話は断ろうと思ってた」
「・・・はい」
「でも、それは俺の本心じゃなかった。君のためって思いながら本当は俺が君を失うのを怖がっていただけだった。また大切なひとを失ってしまうんじゃないかって、そう思うと・・・」
俺はただ怖かった。あの夢のように、俺だけ皆と違うとこにいて、誰も俺に気づいてくれないあの環境が、俺には耐えられなかった。
「だから俺は1人でいようって考えた。けどやっぱり誰かにいて欲しいってどうしても思ってしまったんだ」
俺は涙をぽろぽろと流しながら、彼女に話す。彼女は黙って俺の話を聞いてくれた。
「俺に付いて行ったら、もしかしたら早く死んでしまうかもしれない。それでもシルフィは俺に付いて来てくれるのか?」
すると俺の頬に暖かい手が当たる。シルフィの右手が優しく俺の頬を撫でる。
「さっきも言いましたが、あなたになら私は全てを捧げます。この体も命もすべてがあなたのものです。道具として扱ってもらったって別に構いません。それほどまでにあなたに尽くしたいと思えたのですから」
その言葉で俺は決心がついた。
「シルフィ・・・」
「はい・・・」
「俺の仲間になってくれ」
「はい、もちろんです」
「だけどなシルフィ、自分の事を物とか道具なんてこれからは絶対に言うな。俺は君を1人の女性としか見た事がないし、これからも君のことは1人の女性だと思っている」
俺は彼女の目を真っ直ぐ見て言う。
「だから、自分の命を第一優先で大切にしてくれ。それが出来るなら君と一緒に冒険者になろう。約束できる?」
彼女は笑いながらこう言った。
「わかりました。これからよろしくお願いします。晴明様」
そうして俺とシルフィは一緒に組むことになった。
「そうと決まればさっさと準備しないとね。私は馬の用意をしてくるから。2人共さっさと出かける準備してきな」
そう言うとシェラは外へと出ていった。俺とシルフィは出かける準備をするために一旦部屋に戻った。
3分後、俺は純白の剣を持ってシェラの待つ馬車へと向かった。そこにはまだシェラしかいなかった。
「お、もう来たの?」
「まぁ俺の荷物ってこれしかないからね」
そう言って剣を彼女に見せる。
「まぁたしかに初めて会った時からそれしか持ってなかったもんね」
そんなことを話していると、シルフィがやってきたと思ったら。なんか後ろにもう1人居るような・・・
「すみません、遅くなりました」
「いや全然大丈夫だけど、シルフィ?」
「あ、いやその実はですね」
そう、シルフィの後ろにいたのはなんとカナリアだった。
「もしかして、カナリアも一緒にいくの?」
シェラがシルフィにそう聞くと、彼女は首を縦に振った。
「カナリアが私が冒険者になるなら私も行くって聞かなくて・・・」
おそらく、姉と離れ離れになるのが嫌なのだろう。俺とシェラはそう思った。
「すみませんが晴明様、カナリアが一緒でもよろしいですか?」
「俺は別に構わないけど、大丈夫なの?」
俺がシルフィにそう聞くと。
「それは大丈夫だと思います。確かにカナリアは人見知りですが、彼女の火の魔法はとても強力で。貴重な戦力になると思いますよ」
火の魔法か・・・と考えていると俺はあることに気づいた。
「そういえばシルフィはなんの魔法が使えるの?」
「あぁ言ってませんでしたね。私は風の魔法がつかえます。鋭い風で攻撃したりすることが出来ます」
なるほど。やはり姉妹とはいえ、使える魔法は違うようだ。
「それじゃあ揃ったところで行くとしますか」
シェラがそう言うと、俺達は馬車に乗り込み、冒険者ギルドへと向かった。
それから約5分、俺達は冒険者ギルドの前に着いた。
「それじゃあ5時間後にここに迎えに来るから」
「シェラはどっか行くのか?」
俺がそう聞くと、彼女は答えた。
「これから近くに住んでる友達に会いに行こうかなって思ってさ、まぁギルドの受付でだいたい30分くらいで終わると思うから空いた時間はこの辺を見て回ってみれば?」
確かにシルフィ達は知ってても、俺はこの街になにがあるかなんて全然分からないからなぁ。
「わかった。空いた時間はそうさせてもらうよ」
そう言うと、シェラがニヤッと笑い。
「じゃあ、これはうちのお父さんから」
彼女はそう言って渡してきたのは、銀貨10枚と銅貨30枚入った袋だった。
「さすがにこんなに貰えないぞ」
「お父さんがいいって言ってたんだから貰っときなさい。逆に返されても迷惑だからね。そんじゃあデート楽しんでね」
そう言い残して、シェラは言ってしまった。
「なにをいってるんだか。さぁ行こうか・・・」
俺はそう言って振り返ってみると、シルフィが顔を赤くして止まっていた。
「シルフィ?どうしたんだ?」
「あ、いいえ別になんでもありません」
シルフィはそう言うと、真っ直ぐにギルドの方に歩き出した。よくわかんなかったが、俺も早く冒険者登録を済ますために、急ぎ足でギルドの中に入ることにした。
中に入ってみるともうすでにかなりの冒険者らしき人達がそこら中に集まっていた。
「えっと受付はどこだろう・・・」
「晴明様、あそこにありました。」
シルフィがその方向に指を指すと、確かに受付と日本語で書かれた看板を見つけた。どうやら文字も俺のいた世界と変わらないようだ。
「じゃあ行くか。あっはぐれないように俺の背中の服掴んでな」
人が多いためはぐれないようにそう言うと。
「あ、ありがとうございます」
「・・・・・・・・・・・・」
少し照れくさそうにシルフィとカナリアは俺の服を掴む。そうしてようやく人混みの中から脱出し、受け付けにたどり着いた。俺は目の前にいた猫耳の受付の女性に話しかける。
「すいません。冒険者登録をしたいんですけど」
「かしこまりました。後ろにいるおふたり様もご一緒ですが?」
「はい。そうです」
「では、こちらの書類に記入をお願いします」
そこには、名前と年齢、性別までは普通だったが。その下からタイプと書かれた謎の項目とさらにその下にはパーティ名と書かれた項目があった。
「すいません。タイプってなんですか?」
「タイプとは、ご本人様の戦闘スタイルのことを言います。たとえば攻め重視のアタッカータイプとスピード重視のスピードタイプ、両方両立するバランスタイプなど、あとはご本人様の好きな言い方でも構いませんよ」
「好きな言い方とは?」
「たとえば、剣を使うのでしたら剣術使い。魔法を使うのでしたら魔法使い。槍を使うのでしたら槍使い。双剣を使うのでしたら双剣使い。盾を使うなら盾使いなど、ご本人様の好きな言い方で構いませんよ」
そう言われて俺は悩んだ。なんて書けばいいのかがわからなかったから。俺はシルフィとカナリアのタイプを見てみると、どちらも魔法使いと書いてあった。すると俺が悩んでるのを見て猫耳の女性があるものを渡してきた。
「もしお困りならこのタイプ選別水晶に手を置いてくだされば自動的に水晶が決めてくださいますが?」
俺はこれだと思った。
「それ使います!」
そうして俺はその水晶に手を置いてみると、水晶から文字が飛び出てきた。そしてその文字は俺の書いた書類にくっついた。読んでみると。
「ガーディアンって書いてあるね」
「晴明様ってガーディアンだったんですか?!」
「えっまぁ一応鎧で戦ってたからね」
それよりも問題なのが次の項目のパーティ名だった。
「なぁシルフィはパーティの名前何にしたい?」
俺はシルフィに任せることにした。
「パーティ名ですか。やはり晴明様のパーティですので、晴明組でどうでしょうか?」
「ごめんそれはダメだ」
くそっどうしたらいいんだ。このままじゃ晴明組なんて変なパーティー名になってしまう。っそうだ!
「すいません。もしかしてさっきの水晶と同じようにパーティ名も決めてくれる道具ってないですか?」
「すみません。パーティ名はご本人様に決めてもらうのが規則となっておりますので」
あぁどうすればいい、いっそのこと俺の部活の蔵守高校陸上部にっ・・・
「白光のガーディアンズ・・・」
そう言ったのは俺でなければシルフィでもなく、それを言ったのは、カナリアだった。俺はその名前に何故かグッときた。
「あ、白光のガーディアンズでお願いします」
「かしこまりました」
そうして5分後、受付嬢が俺達に冒険者カードが渡された。
「このカードはご本人様の身分を示すカードとなっております。只今のお客様は一番下のG級冒険者となっております。これからクエストを受け続けると自動的に冒険者カードが昇級して行くのでどんどんクエストを受けてくださいね」
「わかりました。それでは俺達はこれで」
「はい。これから頑張ってください」
そうして俺達は冒険者ギルドから出ることにした。
「さてと。俺この後ちょっとこの街の周りを見てみたいんだけど、どこかいい所ないか?」
俺はシルフィとカナリアに相談する。
「それでしたら、右側に進むとシェラさんの武器屋とはまた少し違う武器屋や防具などの道具が色々ありますよ」
シルフィがそういうので目的地はそこにすることにした。
「よし、じゃあシルフィ案内頼むよ」
「はい。喜んで」
そうして俺達は目的地に向かって歩き出した。
「そういえば、シルフィとカナリアの年齢って俺より歳上だったんだね」
「なんで私達の歳をご存知なんですか?」
彼女は少し顔を赤くしながら言ってきた。
「いや、実はさっきシルフィ達のタイプを見ようとした時に偶然年齢の項目も見えちゃって」
そう、こう見えてシルフィは俺より3つ年上の18歳で、カナリアは2つ年上の17歳だった。まぁそれを知ったところで今までの態度を変えても仕方が無いので、やっぱりいつも通りにすることにしたのだ。
「やはり晴明様は、お若い女性の方が良かったですか?」
彼女の少し悲しそうな顔をしていたので、俺はすぐに否定した。
「そんなことないよ。年齢だけで女性の価値は決まらないさ」
我ながらいいこと言ったと思ったけど、シルフィがまた質問してきた。
「では晴明様はどのような女性がお好みなんですか?」
そう言われて真っ先に浮かんだのが、結だった。俺はやっぱり彼女のことが忘れなれなかった。
「晴明様?今一体誰の顔を思い浮かべたのですか?」
シルフィが何か少し怖い笑顔を俺に向けてくる。
「いや、別に?ただ家族のことを思い浮かべてね」
ごめんなさいガングさん。俺は自分の身を守るために彼女達に嘘をつきました。どうか許してください。
「やっぱり優しいですね。晴明様は・・・」
シルフィは優しい笑顔を俺に向けてくれるが、今は少しだけ俺に罪悪感を与える攻撃になっていた。
そんなことを話しているうちに、武器屋に着いた。その隣に防具屋も並んでいたので、後で見に行くことにした。
俺達は最初に武器屋に入った。シェラの武器屋とは少し違う感じがして、結構楽しかった。クエスト報酬でお金が貯まったら彼女達に武器を買ってやりたいなぁと思いながら俺達は武器店を出た。
次に隣の防具屋に入ると。それはもう様々な防具がそこら中に飾られていた。ドラゴンの皮で作った鱗の鎧に、金で出来た鎧などの個性豊かな防具達が並んでいると、それはもう爽快だった。ある程度見たところで、シルフィ達の腹から音が出てくるのが聞こえてきた。
「そろそろ飯にするか」
「はい。私もそろそろお腹が減ってきました」
「・・・・・・・・・・・・」
シルフィは反応してくれるが、カナリアはあのギルドの時から1度も声を発してくれなかった。
近くの酒場が見えたので、そこに立ち寄った。まだ昼なのに浴びるほど飲んで寝てしまっている男性客が多かった。俺達はメニューを開き選んでいた瞬間。
「キャーーーーー」っと突然店の近くから女性の叫び声が聞こえてきた。俺達は全速力で声のした場所へと向かっていく。するとそこにいたのは、おそらくまだ10歳程度の男の子の腹を食い荒らしているあの黒い化け物、黒き喰人の姿がそこにあった。
「マジかよ。昨日もあったのにこんな偶然ってあるか?」
「晴明様?」
「う、うぉえ・・・」
カナリアがあまりの光景にショックを受けて動けなくなってしまった。
「シルフィはカナリアと一緒にいてやってくれ。俺があいつの相手をする」
俺の言葉にシルフィは軽く頷き、カナリアの元へ向かった。
「仕方ないから俺が相手をしてやるよ」
俺は腰につけている純白の剣を取り出した。俺はあの時の鎧の姿を強くイメージしながら、剣を鞘から抜いた。その瞬間、あの日のように剣から白い光が溢れ出し、気がついた時には、あの時の純白の鎧を身につけていた。
「さぁ、覚悟は出来てるよな黒き喰人!!!」
その時、俺と化け物の2回目の戦いが始まった。