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純白の鎧で、異世界救います  作者: スイミン
2/12

どうやら俺の来ている鎧はかなりの伝説級らしいですよ。

あの黒い化け物との戦闘から約30分、さすがに2人の女性を、たとえそんなに重くなくても担ぎながら歩くのは正直疲れる。俺は近くに生えてる木の下で休憩をすることにした。おそらく今の太陽の位置てきには時間はおそらく午後の3時と言ったところなのだろう、俺はもう朝から何も食べていないため、正直空腹と疲れでかなり限界だった。

「疲れたなぁ、腹減ったなぁ」

そんなことを呟いていると、遠くの方から何かこちらに近づいてくる音が聞こえる。よーく見てみると近づいてきたのはなんと馬車だ。俺は自分に残っている力を惜しみなく使い、馬車の方へと向かう。

「すみませーん。ちょっといいですか?」

大きな声でそう言うと、馬車に乗っていた女性が止まってくれた。

「どうしたんだい?、そんな格好でこんな所に」

「実はここら辺の道に詳しくなくって迷っていたんです。もしよかったら近くの街まで乗せてってくれませんか?」

俺は彼女にお願いするが、彼女は少し困った顔をしていた。

「んー。タダで乗せるってのは都合が良すぎるってもんだよお兄さん。お金はないのかい?」

「すみませんが、金銭はひとつも持っていません。でも、それ以外のことならなんでもやりますから、お願いします!怪我をしている女性がいるんです」

俺は必死に彼女に頭を下げてお願いする。彼女は「んー」っと少し考えた結果・・・

「わかったよ。じゃあ乗せるやるからかわりに馬車の護衛と着いたら荷物運びを手伝いな」

「あ、ありがとうございます!!!」

俺は彼女に感謝の言葉を言ったあと、すぐに木の下に置いてきた彼女達のもとに戻り、再び担ぎ馬車へと向かう。

「それじゃあ、彼女たちもお願いします」

「はいよ・・・ってシルフィとカナリアじゃないかい!」

彼女は大きな声で俺が担いでいる彼女達にそう言った。

「お知り合いで?」

「あぁ私の友達だよ。どうしてこんな所に・・・」

「俺もよくわからないけど、この道を通る時森があったでしょ?その時彼女達が森から出てきて、なにか黒い人型の化け物に襲われてるのを、偶然俺が助けたんだよ」

俺は彼女にありのままの真実を伝えた。

「黒い人型の化け物?!」

彼女はかなり驚いていた。彼女は少し俺を疑う目をしていた。

「それってもしかして全身黒くて顔に口だけしかない奴かい?」

「そう、そいつ!そいつがこの子達を襲っていたから、俺が助けたんだ」

彼女は大きく見開いた。どうやらかなりの出来事だったらしい。

「もしかして、そいつを倒したのかい?」

「あ、はい」

そう答えると、彼女は「信じられない・・・」と小さい声でそういったような気がした。

「友人を助けて貰ったんじゃあ仕方ない、今回はタダで乗せてあげるよ」

彼女は笑顔でそう言った。

「ホントですか?!」

「あぁ、その代わりっちゃなんだがその時の事をはなしてくれない?」

「全然いいですよ」

そうして、俺は担いでいた2人の彼女達を横にした後馬車が動き出した。

「そういえば、名前聞いてなかったね。私はシェラ。近くの街で武器屋をやっているの」

「俺は神宮司晴明。晴明でいいよ、よろしく」

「晴明?もしかして晴明は東の大陸から来たのか?」

そういえば、彼女に俺についてどう説明すればいいんだろ。実は俺は別の世界の人間だなんて言ったところで信じてくれなさそうだしなぁ。適当に作り話を作るか。

「そうだけど、よくわかったね」

「別に珍しいことじゃないよ?東の大陸の人間がこっちの大陸に来ることは多いからね。私の知り合いに東の大陸出身の子がいてね、その子の名前が雪菜(ゆきな)って名前だからさ、なんかそんな気がしたんだよね」

「なるほど」

どうやら日本と近い国があるみたいだ。機会があれば行ってみたいな。

「そういえば、彼女達は君の友達って言ってたね」

「そうだよ、銀髪の方はシルフィっていって、紅色の髪の子がカナリア、2人は姉妹なんだよ?」

「へぇー」っと適当な返事をする。確かにちょっと顔は似ていて、かなりの美人だな。

「てか晴明はどうしてメルフィス大陸に来たの?」

再び彼女から質問が来たので作り話を続けた。

「1年前に両親が亡くなってね。ずっと家にいてもしょうがないって思い始めたからこっちで仕事でも探そうかなって」

「なるほどねぇ。ところでさ話は変わるんだけど」

彼女が話を切り替えて来た。どうやら両親のことを話したことで、変に気を使わせてしまったみたいだ。

「よく黒き喰人(ダークイーター)にでくわして生きていたね」

黒き喰人(ダークイーター)?」

「そ、もしかして聞いたことないの?」

「あ、いやそんなことはないよ」

「黒き喰人、現在の魔王が作り上げた最悪の存在。その姿を見た者は必ず食い殺されると言われていて、たとえ逃げられても呪印を付けられて20歳を迎えるまえに攫われてしまう。だからある意味死神と一緒ね」

なんか俺がばぁちゃんから聞いた話と少し似てるな。俺の世界じゃ呪人影って呼ばれてたけど、確かに姿はまるっきり一緒だった。

「助かる方法はだだひとつ。黒き喰人を倒すことが出来ればその呪印は消えて、助かることが出来るの」

なるほど。つまり呪印を付けてもその呪印を付けた存在が倒されればその呪印は意味をなさないということか。

「ところで晴明は、どうやって黒き喰人(ダークイーター)を倒したの?あいつはどんなに初等騎士が何人集まっても全く倒せないのに」

「実はあんまり覚えてないんだ。あの時は剣を持っていたはずなんだけど突然なんか白く光出して、気づいたら剣がなくなっていて、代わりに鎧を着ていて、いつの間にか倒していたって感じだから」

「そういえば、晴明はずっと鎧着てるね。兜だけでも脱げば?」

「それがこれ取れないんだよね。どうやら鎧の部位が全部くっついていて、絶対に外れないようにしているみたい」

俺は兜を外すそうとするが、やはり全く取れる気がしない。

「じゃあどうやって着たの?」

「さっきも言ったけど剣が突然光り出して、気づいたら鎧を着ていたから全くわからないんだ」

「もしかしたらそれって・・・」

彼女が何かに気づき、その名前を口にした。

七精神器(しちせいしんき)じゃないかしら?」

七精神器(しちせいしんき)?」

「そう、古から存在していると伝われている7人の精霊の神がいるの、火の精霊神イフリート、水の精霊神ポセイドン、風の精霊神ジン、地の精霊神アテナ、樹の精霊神エント、光の精霊神レム、闇の精霊神プルートー。この7人の精霊神が自らの手でつくりあげた最強の神器。それが七精神器っていわれているの」

「精霊神・・・そんなのがいるのか」

「それぞれの精霊神は自分が作りあげた最強の神器が存在するの、イフリートは全てを燃やし尽くす煉獄の炎を纏う双剣ファイアブランド、ポセイドンは全ての水を意のままに操ることが出来る三叉槍トライデント、ジンは大気中の風を操ることが出来る弓ミストルテイン、アテナは砂や岩、そして虫や動物を自在に操る斧エクスカリバー、エントは全ての植物を操る杖ネシピア、レムは全ての攻撃を無力化し攻撃した相手の攻撃力を倍にして返す鎧ヴァイシュ、プルートーは全ての存在の生命力を奪い、それを自らの力に変える刀シューバルツ。おそらく晴明のは光の精霊神レムのヴァイシュで間違いないと思う」

「ヴァイシュ・・・俺のこの鎧が」

そんな凄いものとは全く分からなかったが、でも確かに俺はこの鎧のおかげで黒き喰人を倒すことが出来たのだから、すごいところは認めなくてはならない。

「まぁもし本物なら自分が鎧の脱げた時の姿を想像したら簡単に鎧が外れるかもね」

そう言われたから俺は1度やって見ることにした。目を閉じて、俺の元の姿を想像する。すると再びあの白い光を放ちだした、光が消えたとき、俺は鎧を着ていなかった。そして、腰に剣が戻っていた。

「うそ、ほんとに七精神器なの?!」

「どうやらシェラの仮説は正しかったみたいだね」

「あはは、そ、そうねよかったわ」

そして、それから10分後ようやく街に着いた。

「ようこそイースター街へ」

大きな門を通るとそこはかなりの人々が暮らす街だった。何かの祭りかと思うくらい人々が騒いでいた。

「シェラ、今日ってなんかの祭りだったのか?」

「いや、この街はいつもこんな感じだよ?この街は明るい人間が多いからね。もう毎日がお祭り気分って感じよ」

確かにまだ日が沈んでもいないのに、酒場らしき場所はかなり賑わっているし、道を千鳥足で歩く人達がチラチラと見える。

街についてから5分後、シェラが働いている武器屋に着いた。

「お父さぁん。今帰ったよぉ」

シェラが大きな声でそう言うと、上の階から足音が聞こえてきた。すると出てきたのは背は低いのに腕の筋肉がとてつもない人間が出てきた。

「紹介するね、私の父のガング。ドワーフなの」

「シェラの父のガングだ。よろしくな坊主」

そう言って俺の目の前まできて、手を差し伸べてくる。

「初めまして、神宮寺晴明と言います」

そう言って俺は彼の手を握り、握手を交わすと、少し驚いたような顔をしていた。

「あんた亜人は嫌いじゃないのか」

「え、別なんとも思いませんが?」

何故そんなことを聞くのかが分からなかったが、シェラが説明してくれた。

「晴明が知らなくても仕方ないわ、東の大陸には亜人とかいないでしょ?このメルフィス大陸にはね亜人が数多く生きていてね、それもあまり人間からは良く思われてないのよ」

「どうして?」

「昔から人間と亜人達は仲が悪くて、よく戦争をしていたの。そのせいで人間からは魔族の血が入ってて穢れているって言われてきてから人間からはとても嫌われる存在になってしまったの」

「魔族って亜人とは違うのか?」

「全然違うよ。魔族ってゆうのは魔王や悪魔に魂を捧げた種族のことを言ってね。まぁ代表的なのがアンデットとか魔獣とかかな」

「なるほど・・・」

この世界では黒き喰人(ダークイーター)だけじゃなくて他にもいろいろと厄介なのが存在しているんだなぁ。

「あぁ!!!」

そんなことを考えていると、突然シェラが大きな声をあげた。

「どうしたシェラ?」

「お父さん、シルフィとカナリアが怪我をしているの。一旦空いてる部屋に寝かせてもいい?」

シェラがガングに相談すると・・・

「それは本当か?!なら直ぐに運びだそう!。シェラは医者を呼んできてくれ、俺と坊主で運ぶから」

「じゃあよろしくね、行ってくる」

そう言うとシェラは急いで店を走りながら出ていった。

「俺たちはシルフィとカナリアを部屋まで運ぶぞ」

「はい!」

俺とガングさんも乗ってきた馬車の荷車に置いてきた彼女達を運ぶ。鎧を着ていないと全然重さが変わっていて、キツかった。ガングさんのあとについて行くと2つのベットのある部屋につき、彼女達をねかせる。

「とりあえずあとは綺麗な布と水を持ってくるだけだな、坊主はここを見といてくれ」

ガングさんは俺が返事をする前に部屋を出ていってしまった。

俺はベットの間にあったひとつの椅子に座り、彼女達の様子を見る。シルフィもカナリアも、引っ掻いたような切り傷が体中に残っていてとても痛そうだ。どうにか切り傷だけでも治してやりたいと思っていると。突如、俺の両手から薄く白い光が溢れ出した。突然光りだしたので最初は驚いたが、これをどうすればいいのかが何となくわかった。光っている両手を片方ずつ彼女達の手に重ねる、すると少しずつだが傷が消えていく、どうやらこの白い光は凄まじい回復能力があることが分かった。1分もせずに彼女達の体中にあった傷が全て無くなっていた。

「坊主、今医者が来たから少しの間部屋から出ていてくれないか?」

ガングさんとシェラがどうやら医者を連れてきてくれたみたいだった。

「ガングさん、傷ならなんか俺が治せたのでもう大丈夫ですよ?」

「な?!そんなわけが・・・」

ガングさんが彼女達の姿見て。

「ほんとに治ってやがる・・・」

「うそ?!あんなに傷だらけだったのに」

2人共驚いていたが、どうやら2人は俺の言っていることは本当のことだと信じてくれたようだ。

「まぁとりあえず来てもらったから、念のために見といてもらおう」

そう言って俺とガングさんは部屋を出た。

約3分後、直ぐに医者が出てきた。

「どうやら外傷はないようです。今はどうやら疲れているようなので、すこし休めばまた元気になりますよ」

「そうですか、ありがとうございます」

ガングさんがそう言うと医者は最後に「お大事に」と言い残し、店を出ていった。俺とガングさんとシェラは、1階にある木で出来たテーブルに座った。

「それにしても坊主、どんな治療魔法を使ったんだ?あんな直ぐに治る魔法なんで俺は聞いたことねぇぞ」

「私も晴明が魔法使えるなんて聞いてないよ」

2人はどうやら俺が魔法を使ったと勘違いをしているようだったので、俺は正直に話した。

「魔法なんて俺は使えませんよ。俺はただ自分の手が突然光出してそれを彼女達の手に重ねてたら傷が勝手に回復しただけですよ?」

説明を聞いたガングさんはどうやら納得がしなかったようだが、シェラは何となく理解したようだった。

「お父さん。言うのわすれてたけど、実は晴明はあの七精神器の所有者なの」

それを聞いたガングさんはかなり驚いていた。驚きすぎて、テーブルの脚にの自分の足をぶつけてしまい、あまりの痛さに悶え苦しんでいた。

「そ、それは本当か?!七精神器なんて伝説の武器を坊主が持ってるなんて、信じられねぇな」

「本当のことよお父さん。晴明は光の精霊神レムのヴァイシュの鎧を持っているの」

「ヴァイシュの鎧かぁ、防御系の神器なのは知っていたが、まさか回復能力を持っているのは初めて知ったわい」

俺もこの鎧についてまったく未知なので、正直この鎧についてどんどん教えてくれることはとても嬉しいことだった。

「それにねお父さん、晴明はその鎧であの黒き喰人(ダークイーター)を倒しちゃったらしいのよ」

「ほぅ!!あの黒き喰人(ダークイーター)をも倒すとは、やはり七精神器なだけはある」

「あのさ聞きたいんだけど、その黒き喰人(ダークイーター)ってそんなに強いやつなのか?」

俺はよく覚えてはいないとはいえ、一撃でたおせてしまったやつがそんなに強くは感じられなかった。

「そりゃ強いさ、なんせあの魔王が作り出した存在なんだからな。おそらく魔界の中では四獄天(しごくてん)の次に強いとされているからな」

俺はまたここに来てはじめて聞く単語を聞いた。

「四獄天ってなんですか?」

「なんだ四獄天も知らないのか」

どうやらこの世界じゃ当たり前に知っている事のようだ。

「四獄天っていうのはな、魔王が認めた魔力と戦闘能力を持った者のことを指していてな。アマイモンにオリエンス、パイモンにアリトンの4人で四獄天。話によれば見たことの無い魔法を使えるらしい」

「見たことの無い魔法って一体・・・」

「俺も聞いただけだけどな、なんせ重力を操ったりすることが出来るらしいぞ」

重力制御か、確かにそんなの使われたらたまったもんじゃないよな。攻撃にも足止めにもなるから応用が利くな。

「やっぱり普通は使えないんですか」

「当たり前だろ?この世界じゃ使える魔法は決まっているからな」

「使える魔法が決まっている?、それってどういうことですか?」

「適正があるんだよ。人それぞれにな、しかも使える属性は火、水、風、土、樹、光、闇といった7属性の中からひとつしか使えないんだからな。ちなみに俺は土の魔法が使えて、シェラは風の魔法が使える」

「2つの属性を持つことは出来ないんですか?」

「それは無理だ。ひとつの属性だけでも身体と精神にかなりの負荷がかかる。2つなんて持ったらそれこそ身体と精神が崩壊して、おそらく廃人になるぞ」

「なるほど・・・」

そうなると、俺の持ってるこの七精神器は光の属性だから俺は光の属性以外は使うことが出来ないのか。

「いや、待てよ。よく考えるとおかしいぞ。何故坊主は回復魔法が使えるんだ?」

ガングさんが不思議そうな顔で俺を見る。

「おかしいって何がですか?」

「普通は2つの魔法は使えないはずなんだが、坊主はおそらく光の属性のはずなんだ。じゃないと光の七精神器のヴァイシュを使うことが出来ないからな」

それはわかるが、でもどうしてそれでおかしいって話になるんのかが俺にはわからなかった。

「でも坊主、お前はさっき()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()

「樹の属性しか使えないって・・・どういうことですか?」

「いいか坊主、光の属性には回復魔法なんてもんはもともと存在していないんだ。たとえそれが七精神器だったとしてもだ。回復魔法を使えることが出来るのは樹の属性にだけなんだ」

「じゃあ俺は2つの属性を持っていることになるってことですか?」

「信じられねぇが、そういうことだ。坊主は2つの属性を使うことが出来る、今まで前例にない存在なんだぜ」

そうガングさんに言われた時、俺も少し驚いた。この世界じゃ魔法はひとつの属性しか使えないのだから、2つなんて持っていたらそれはもう人間では無いとも言われてるように聞こえた。

「まぁ、坊主はあの七精神器の所有者なんだからな。なんか特別ななにかを持ってるのかもな」

そう言われて少しほっとしはじめた途端、俺の腹から「グゥー、グォー」と2人に聞こえるほどのでかい音が出てきてしまった。

「いや、朝から何も食べてなかったんで」

俺がそんな言い訳をすると、シェラとガングさんが大きな声で「あははは」と笑いだした。あまりの恥ずかしさに顔が赤くなっているのを感じる。

「そんじゃそろそろ飯にするか。シェラ飯の用意をしてくれ」

「はーい」っと返事をしたシェラは部屋から出ていった

「そうだ坊主、今日泊まるとこあんのか?」

「あ、そういえばそんなこと全然考えてなかったな」

「そうか、じゃあ今日は泊まって行きな。もう1部屋空いてるから、そこを使うといい」

「ホントですか!ありがとうございます」

お金がなかったから今日は野宿を覚悟していたため、

本当に助かった。

その後ガングさんは店の片付けをすると言ったので俺も手伝おうとしたが断られた。その代わり、2階にいるシルフィとカナリアの様子を見てきて欲しいと言われたので、俺は2人の様子を見に行くことにした。

ドアを開けるとまだ2人を眠っているようだ。かさ「あんだけ傷を負ったんだ、今日は目覚めないかもしれないな」

そんなことを考えながら彼女達を様子を見る。やはりどちらもかなりの美人だなぁ。シルフィはかなり胸が大きいので、正直目のやり場に困る。カナリアはシルフィ程ではないがかなりいい形をしていると俺は思う。そんなことを考えていると、したからシェラが呼ぶ声が聞こえてきた。

「晴明!ごはんできたよぉ」

「今行きまーす」っと返事をした後、最後に彼女達の顔を見て、1階に向かった。

1階に戻ってみると、ひとつの皿にかなりの量の料理が置いてあった。どうやら今日のご飯は肉がメインの

料理らしい。野菜のサラダもあったが、肉の量に比べると約3分の1しか無かった。

「おう坊主、座れ座れ」

「やっと来た、いっぱい作ったから沢山食べてね」

そう言われて俺は空いていた席に座った。

「それじゃ、いただきます」

「はい、どうぞ召し上がれ」

「遠慮せず、いっぱい食え」

そうして俺は1日ぶりに食事にありつけるのだった。

「そういえば、シェラってドワーフなのか?どう見ても人間の平均くらいの身長してるけど・・・」

「実は私のお母さんが人間なの。まぁ人間とドワーフのハーフなんだよね」

「なるほどねぇ。ガングさんはいつ頃奥さんと出会ったんですか?」

「ちょっ坊主、恥ずかしいだろぉがよ。まぁ出会ったのはこの武器屋を初めてすぐだった時にあいつ、ディーナと出会ったんだよ」

「へぇ、でも今日ディーナさんいませんよね。どこか出かけているんですか?」

すると、少しだけ静かになる。誰も喋らない中、最初に声を出したのは、ガングさんだった。

「死んだよ、シェラが5歳の頃だからもう10年前のことになる」

「あ、すみません。失礼なことを聞いてしまって」

「気にすんな。ディーナは冒険者だったんだ、冒険者は死ぬなんてことは日常茶飯事だ。それに、ディーナが冒険者だったからこそ、俺は好きになったんだからな」

ガングさんは1杯の酒を一気に飲み干すと、今度は俺に問いかけてきた。

「それよりも、坊主はこれからどーすんだ」

ガングさんにそう言われてやっと気づいた。俺はこれからのことを何も考えていなかった、突然こんな世界に送られて何をしろって言うんだ。全くどうせなら何をして欲しいのかを正確にわかりやすく言ってから送って欲しかったよ。

「咲羅・・・」

「ん?さくら?坊主の知り合いか?」

「ん、あぁそうだよ。実家の近所に住んでた子なんだ」

「ほぉー、まぁそんなことよりもだ。これからどうするんだ?」

「んー」っと悩んでいると店の壁に貼ってあった「冒険者募集」っと書かれている紙を見て、これだと思った。

「俺は冒険者になるつもり」

「おぉ冒険者か・・・うん、坊主にピッタリかもな」

「まぁ、七精神器を持ってるんだから。なろうと思うのは当然かもね」

2人共俺が冒険者になることには否定しなかった。まぁ俺も冒険ってのには少し憧れていたし、それに七精神器もあるからまぁ大丈夫っしょってぐらいだった。

「じゃあ明日私が冒険者ギルドまで案内してあげるよ、明日はお父さんにお休み貰ってるから」

「おいおい、休むなんて聞いてないぞ?」

「じゃあ今言ったからよろしくぅ」

「全く、仕方ねぇ娘だ」

その光景を見ていると、俺が暮らしていたいつもの日常を見ているようだった。今頃結たち、何してんのかなぁ。ついついそんなことを考えてしまう。

「ん、どうした坊主、泣いてんのか?」

「えっ?」

気づくと俺は目から涙が溢れていた。そうか、俺、あの場所に帰りたいんだ。いつものように朝起きて、飯食って、結と兄貴と一緒に学校行って、勉強して、部活して、帰ったら夕飯食って、風呂はいったら寝る。そんな当たり前の生活に俺は戻りたいんだ。

「すいません、ちょっと家族のことを思い出しちゃって」

すると、ガングさんが俺の隣に座りこう言った。

「分かるぜ、その気持ち。俺も実はディーナが死んでからはしばらく落ち込んだもんだ。でもな坊主、死んでしまった者より今いる大事な者を守ってやることがそいつの望みだと俺は思うぞ」

その言葉に俺は最初浮かんだ大事な者は結ではなく咲羅だった。そうだ咲羅は最後、こう言っていた

「私を、世界を助けて」と、なら俺の目的は決まってるじゃないか。

「ありがとうガングさん。俺、冒険者になって、この世界に存在する魔王を倒して、家族に胸を張れる男になるよ」

ガングさんとシェラは笑って馬鹿にすると思ったけど。逆の言葉を俺にくれた。

「そうだな。坊主が魔王を倒してくれれば、平和になるな」

「そしたらうちの店の商売に関わるけど、まぁそうなったら違う店を開くとしましょうかね。そうしたら晴明は必ず1日1回は来ること。これ絶対だからね」

さすがに1日1回はきついが、それよりもデカい何かで恩返ししたいと、俺は思った。

食事を済ませて、風呂に入れさせて貰えることになった。さすがに今日は疲れて、体中汗でベトベトだったので本当に助かった。

風呂に上がったあと、ガングさんとシェラにおやすみなさいを言ったあと、俺は最後にシルフィとカナリアの様子を見に行くことにした。ドアを開けると、どうやらまだ彼女たちは寝ているようだった。ベットの目の前までやってきて、俺はようやく気づいた。カナリアはベットの中にいるのに、シルフィだけがベットの中にいなかった。そして、後ろを振り向いた瞬間。赤い瞳をした銀髪の女性、シルフィが小刀を両手で持ったまま俺に襲いかかってきた。俺の首に届く直前で止め、警戒心高めで話しかけてきた。

「あなたは誰?、ここは一体どこなの。説明して」

「その前にその小刀をしまってくれないかな?」

それが俺と彼女が初めて交わした会話になってしまったのだった・・・


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