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13歳 その3

 昨日の混乱から一夜明けて。

 私は昨日の事を「なかったことにする」と決めた。


 だってどうやっても答えが出なかったんだ。


 現時点でリチャード様がシナリオを外れてエイミーに恋をする理由が見当たらない。

 それなのに好かれていると思うなんて思い上がりも甚だしい。


 だけどリチャード様が理由もなくあんなことをする人だとも思えないし、思いたくない。


 だから「なかったこと」にする


 キスも、告白も、幸せな夢だと思って忘れてしまえばいい。


 これがリチャード様に対してあまりに不誠実な対応だってことはわかってる。

 だけど、私は怖かった。

 だってこの後、きっとヒロインは現れる。そこでリチャード様がヒロインに恋をしたら?

 好かれているなんて思ってしまったら、その時に裏切られたような気持ちになりそうで。その瞬間に耐えられる自信がない。

 何より、大人しく身を引く事すらもできなくなりそうで。


 私はエイミーになった時から決めていたはずだ。

 リチャード様が誰かに恋をしたらその時は潔く身を引こうって。

 それなのに、自分に好意があるなんて少しでも思っていたらそんな事、絶対に上手くできない。


 私はリチャード様が好きだ。

 この3年間、一緒に過ごしてその人柄に触れて、推しだからとかそういう事は関係なく好きになっていた。

 優しくされたら嬉しかった。傍にいられるのは幸せだった。照れてしまうようなスキンシップだって、本当はもっとしたかった。

 リチャード様を好きだって思うだけで、こうやって欲張りな私が顔を出す。


 だからこそ、この気持ちは閉じ込めておかなければいけない。

 ゲームの中のエイミーのように、一歩下がってリチャード様を見守るような存在になるために。


 そのためには、勘違いかもしれない気持ちは封印しておかなくてはいけない。

 もしかしたらリチャード様から好かれているかもしれない。なんて、ずうずうしい事を考えたらいけない。

 そのためには、ほら。やっぱり「なかったこと」にするのが一番いい。


 本当は、わかってる。

 私たちの関係を変えようとして、リチャード様は一歩踏み出してくれたんだって。

 そこにどんな想いがあったのかまではわからないけれど、彼が私の事を妹ではなく本当の婚約者のように扱ってもいいと思ってくれたからこその行為だと。

 そんな事もわからない程、愚鈍ではないけれど。今はそういう事にしておいてほしい。


 臆病な私でごめんなさい。

 だけど、婚約解消のその時にはちゃんとするから。だから、許してほしい。

 なんて、心の中で誰にでもなく言い訳をしてみたりした。

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