9.忠実なメイド、ひとまず見守る
すみません、投稿が遅れてしまいました!
よろしくお願いします!
強烈な違和感、しかし何でそれを感じているのかわかりません。
とりあえず、こちらを見て何故か驚いているセリーネ様と会話をします。
「えっと、どうしてシグネが?」
「食事の用意が出来たのですが、アイカが少し手が離せない状態でして代わりにお伝えに上がりました。お部屋に運び込んでもよろしいでしょうか?」
「あ、ああ、そういうこと。それでいいわ、ありがとう」
すると、セリーネ様からありえない言葉が聞こえました。
(今、ありがとうって……あれ、聞き間違い……?)
悲しい話なのですが、セリーネ様からそういった感謝の言葉を聞いた覚えがない私は固まってしまいました。
「どうしたの?」
「えっ、あ、その、いえ、失礼しました。すぐにお持ちします」
そんな私に対して首を傾げているセリーネ様、疑問は残ったままですが変に焦ってはいけないと思い、とりあえず何事もなかったかのように一度、退室しました。
「あら、セリーネお嬢様はどうだった?」
用意された食事、といっても病み上がりのために消化も考えられた温かいスープと果物だけですが、それを持っていこうとする前に、私に様子見するように指示をしたメイド長と会いました。
「どう? っていうのは……」
「いえ、まだ調子が悪そうだったかどうか、貴女の主観でいいから」
「は、はぁ、どうって言われると……うーん」
なんだか、どう答えればいいのかわかりません。確かに病み上がりにしては意識も言葉もはっきりしていましたし、問題はなさそうでしたが……
「特に体調は問題なさそうでしたが、何だか変に落ち着いているような……いや、そうじゃなくて、何かピリピリ感がないような」
「……?」
私の答えにメイド長は頭に疑問符を浮かべていました。それはそうでしょう、だって私も同じですから。
結局うまく表現できず、メイド長には疑問を残したままになってしまいました。まあ、いずれ会ったときにわかるでしょう。こういう時にお付きのアイカがいてくれたならまだわかったのにと思います。流石に家の事情とあれば恨むことはできませんが。
セリーネ様の自室にスープを運んだ時も少しヒヤヒヤしましたが、それも杞憂でした。
正直、「こんな適当な物食べれないわ!」なんて言うかもしれないと思っていたからです。
「ご馳走さまでした」
しかし、特に文句も言うことなくさらに食後の挨拶までする彼女を見て、いよいよどうしたのかと私は自分を疑っていました。もしかして実は熱にうなされているのは自分で、今見ているこれは夢なのじゃないかと実際それぐらい不思議な光景を目のあたりにしています。
ただ、そんな私の目を覚まさせる言葉が彼女から飛び出しました。
「それよりもフィアナはどうしているのかしら」
それを聞いた時、一瞬で戸惑いが消えてスーッと熱が下がるのを感じました。なにせ目の前のセリーネ様はまるで、今までの彼女の行為を知らない風に聞いてくるからです。
元々我慢していた分が、出してはいけない感情が少しずつ溢れていきます。
「セリーネお嬢様は本気でそう言ってらっしゃるのですか?」
つい、声色が冷たくなりしまったと思いましたが、一度言い出すと止まりませんでした。セリーネ様はそんな私に困惑しているようでしたが、何も反論はしてきません。
「ほ、本気って……だってフィアナが心配で」
「心配なのにあんなことを言ったのですか!?」
「あ、あんなこと……?」
だから、ついヒートアップして今までのフィアナ様に対する行為やそれについての不満を一思いに吐き出してしまいました。
もう別に首になってもいいやという、諦めと覚悟を混ぜ込んで。
「…………」
一通り、それを出して私は息をつきました。さて、どんな罵詈雑言を吐かれるのかそれが少し怖かったですが、しかしセリーネ様はまるで石のように固まっていて、そして……
「びゃああああああ!?」
とんでもない声で発狂したのでした……
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それからはもう大変でした。
「すみませんでした。罪を償って死にます」
「ま、待ってください!? なにしてるんですか!?」
突然、デザートの果実を切る用のナイフを自分に向けるわ……
「行きましょう! フィアナの部屋に今すぐ──きゃあっ!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
病み上がりだというのにいきなりベッドから立ち上がって床に倒れたり、とにもかくにも以前のセリーネ様とは確かに何かが違いました。
しかも突然変なことも言い出すのです。
「あのね、病気で寝込んだ時夢の中でお告げがあったの。『妹がどれほど尊い存在か、どれほど可愛いかそなたに教示しよう』って」
やはりどこか精神をおかしくしたに違いありません。正直、前の傲慢な時と比べるとマシな気はしますが、やっぱりもう一度医者に──
「待って! 医者を呼びに行こうとしてるでしょ!? ま、ほんと待って!!」
診てもらおうと思ったら、全力で阻止されました。流石に無理矢理医者を呼ぶのもあれかともう少し話をしてみることにしました。
まぁ、判断はそれからでも遅くはないでしょう。
それに何だか少しだけセリーネお嬢様の雰囲気が随分と柔らかい、というか変に庶民的というか、今までの高飛車な感じがなくなっていたので、それを確かめたいと思ったのもあります。
もしかしたら何か変わるのではないか、これが少しでも良い方向に向くのではないかと、核心はなかったのですが一つ信じてみたくなったのです。
それからは驚きの連続でした。
フィアナ様に謝りたいとひたすら無茶をしようとするセリーネお嬢様を止めて、彼女たちを引き合わせると泣きながら謝り続け、しかも疲れて寝落ちてしまったのです。
流石のフィアナ様もこの時ばかりは慌てていましたが、ただ少しだけほんの少しだけ、表情は明るくなっていました。まだ不安の残る中に少しだけ安心したようなそんな表情でしたが、それでも塞ぎこんでいるよりはずっとマシだと、そう素直に思いました。
「というわけで、そんな風に意味がわからなかったり、突然錯乱したりと変になってたから、一応注意してください」
「ほぇー、ちょっと信じられませんが、とにかく確認してみますー」
そんなわけで、その翌日無事に復帰してきたアイカにあったことを話しました。彼女も半信半疑でしたが、きっと今のセリーネお嬢様を見て驚くかもしれません。
ちょっとそれも見たかったのですが、私はフィアナ様について学園までの送りもあるのでそれは叶いませんでした。
とにもかくにもこれからどうなるのか、あのセリーネお嬢様の様子ではちょっと不安にも感じますが、でも何だか良い方向に進むような、そんな気持ちを私は確かに感じていたのでした。
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