81.シスコン悪役令嬢、街の祭りへ……
投稿が少し遅れました……申し訳ありません
パーティは何事もなく終わりを告げた。
それから私を含めた学生の皆さんは嬉しい嬉しい長期休みに入る。当たり前だが課題も出るし、休み明けにはきっちり試験もあるところは日本と同じで顔を顰めてしまうが。
それでも、休みの間はフィアナと一緒に色々と楽しむ予定だった。どこかに出掛けてもいいし、逆に家でまったりと過ごすのも悪くはない。
とにかく楽しみでしょうがなかった。素晴らしい日々になるはずだと心を躍らせていた。
だけど、現実は違っていた。
「あ、の……フィアナ?」
だいぶ寝るのに慣れた自室のベッド。そこに仰向けに寝ている私の視界に映るのは綺麗な天井ではなく、目を潤ませている不安げなフィアナの顔。
はっきり言うと私の上にフィアナが馬乗りになっている。彼女は膝を私の体の左右に置いているのでその重さは感じないが、ベッドは関係なく二人分の重みでギシリと音を立てる。
(なんで……こうなったんだっけ……?)
私の頭に巻かれている包帯の理由と、朝倉美幸が日本で"生きていた"時のことをぼんやりと思い出しながら、私はフィアナと視線を交えたのであった。
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「パーティは楽しめたかしら?」
裏庭での一興から戻ってきた私たちを両親が迎えた。フロール達とは一緒ではなく既に解散している。
『また学園で会いましょう。お互いに頑張りましょうね』
フロールは何か意味深なことを言い放って、フィアナをチラリと見ていたような気がする。さて、ダンスの時間が終わると後は歓談するか、帰路につくか選択することができるようになる。
これ以上残る意味はない。フィアナに変な虫が付く前にこの会場からとっとと去りたいのが本音である。
それで戻ってきたところ、先のようにお母様が声をかけてきたわけである。
「ええ、とっても楽しかったわ。ねぇ、フィアナ」
「はい! お姉様とたっぷり踊りました!」
素直なフィアナにあらあらとお母様は困ったように笑った。姉妹仲が良すぎるのもどうかと思っているのだろうか。私も適当にぼかした方がいいんじゃないかと思ったが、嘘をつけない性格のフィアナに無理強いしてもよくない。それに彼女が嬉しそうに言ってくれると姉としては嬉しいし、変にやましい意味にも聞こえないだろう。
「フィアナもまだ経験がなかったし、何より最初は私がダンスの相手になりたかったの」
また次の機会があるからいいでしょ? という言葉を含ませて私も入る。私達が裏庭で二人きり(厳密には違うが)で踊っていたことは流石に伏せた。
「まあ、そうね。少しずつ慣れていけばいいものね。こういう大きな催しは初めてだったでしょう? 疲れてない?」
「んー、少しだけ疲れました……」
あれだけ踊ったのだからその疲れも頷ける。ちょうど他の貴族と思われる人と話していたお父様も区切りがいいところで戻ってきた。
「それじゃ今日は帰りましょう。明日から街の方が賑やかになるからそっちも楽しむ体力を残しとかないといけないものね」
お母様はそう言ってにっこり笑う。私が学園で騒動を起こすと鬼のように怒るが、いつもは優しくて良い母親だ。
お父様もこういった会場ではあまり仕事の話を持ち出さないようにしているのか、特に用事はないらしい。
「では、我が家へ帰ろうか」
そして、私達はいまだに賑やかな会場から少し早めに帰路についたのであった。
そこまで、その日まではよかったのだ。何もない平和な日々が続いていた。
事件は、その次の日。祭りに賑わっている街の中で起こることになる。
「わぁぁぁ……」
フィアナは賑やかで明るい街に興奮していた。時刻はとっくに夜で空は暗闇であったのだが、街は街灯がまばゆいばかりに輝いていた。
私はフィアナとお付きメイド二人と一緒に街に繰り出ていた。事前の約束通りだったが流石にメイド服で歩いてもらっても困るのでアイカもシグネも私服だ。
「毎年おもいますけど、賑やかですねー」
ゆったりとした動きやすい薄い桃色のワンピースに身を包んだアイカが感嘆という。シグネはきっちりとした白いシャツに黒いスカートと落ち着いた色合いの服を着ており、二人の性格を表しているようで面白かった。
二人は私達の護衛も兼ねている。何かあるとは思えないが万が一のこともあるし、流石にフィアナと二人きりで祭りに出掛ける許可は出なかった。護衛をわちゃわちゃ付けられるのも困るし付き合ってくれる彼女らには感謝しかない。(元々一緒に行く約束はしていたのだが)
さて、話を戻して豊穣祭だ。この祭りの目玉は何と言っても記念パーティの後の街にあるとセリーネは認識している。というのもやはりゲームの中のイベントがあるからだ。
パーティ会場で攻略対象との踊りを楽しんだ後、フィアナは次の日の祭りに秘密裏に会おうと言われ約束する。所謂お祭りデート、というやつだ。
今まで表立って一緒になれなかった相手と祭りの中だけだが親密な時間が過ぎる。幸せの絶頂である。
しかし! そこは悪役令嬢である私の出番である。どこからか現れた彼女は幸せな二人に嫉妬を爆発させ、あろうことか魔法を暴走させてしまい祭り会場を荒らしてしまうのだ。その時に祭りの時用に設営されている高台が崩れ、あわやフィアナはそれに押し潰されそうになってしまうのだ。
あとはお約束というか、それをかばい攻略対象は怪我を負うことになる。それに負い目と責任を感じてしまったフィアナはもう迷惑はかけられないと塞ぎ込んでしまうものの、それではいけないと奮起し攻略対象の元に看病のために通うのである。
そこからフィアナと対象キャラは仲をより深め、そしてその頃あたりから遂に悪役令嬢である私が追い詰められ始めるのだ。
(でも、大丈夫なはず……何より元凶の私はここにいるわけだし事件が起きるわけはない。だから祭りを心から楽しめる!)
油断、慢心、いつだって気が緩むと出てくる彼らに私はすっかり気を緩めていた。今までのイベントで悪役令嬢がいなかったために何も起きなかったから大丈夫と、そう勝手に思い込んでいたのだ。
そんな私とフィアナを戒めるかのようにそれは突然起きたのであった。
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今回から少しずつセリーネとフィアナの関係が……という展開になっていきますので、どうぞ最後までよろしくお願いします!




