42.シスコン悪役令嬢、妹と寝る
投稿時間が遅れて申し訳ありませんでした!
結局、最後までミリは帰ってこなかった。
「今日はありがとうございました。それと途中で少し予定が変わってしまい申し訳ありませんでした」
「ま、まあちょっとびっくりはしましたけど、貴重な経験になったから大丈夫ですよ。ね、フィアナ」
「はい。色々と新鮮で楽しかったです!」
時刻は陽が落ちる少し前。メイド服から私服に着替えた私とフィアナはイリサさんと王城の入り口で話していた。
「そう言って頂けるなら良かったです。私としても大変助かりました。このまま貴女達が休日に入ってくれば嬉しいのですが……」
「たまにならいいけど、流石に毎週は……」
今回のは今日一日という約束だ。確かにフィアナとメイドをやるのも楽しかったが、休日をこれに費やすのは少し難しい。
イリサさんは困ったように笑う。
「そうですよね。すみません、言ってみただけです。お任せすることになってすみませんが学園に良い方がいれば紹介くださいね」
「それについてはあんまり期待はしないで欲しいけど、まぁ頑張ってみます……」
そしてそのまま解散となった。用意された馬車に揺られていると隣でフィアナはゆっくりと船を漕いでいた。やっぱり疲れていたらしい。
その可愛らしい寝顔を見ながら、住み慣れた我が家に帰って来た頃には既に周囲は暗くなっていた。
「お帰りなさいませ」
家の前では知らせを受けていたのかシグネが待っていた。王城への馬車を見送った後、まだ眠たそうに目を擦っているフィアナと一緒に夕食の時間なので食堂へ向かう。
その途中で私のお付きメイドがいないことに気づいた。
「そういえばアイカはいないの?」
「今日はお嬢様方が出掛けられる予定でしたので非番です」
「ああ、それもそっか」
聞いて納得。確かにお付きの対象がいなければ仕事のしようがない。彼女にも家族があるだうし、ゆっくり団欒出来ていればいいのだが。
「じゃあ、シグネは? 休みじゃないの?」
「私は住み込みですから。こうしてお迎えぐらいはしますよ」
そういえばシグネからは彼女の家族の話を聞いたことがない。住み込みといっていたが、何か訳があるのだろうか。
しかし、それを聞くのは今ではなさそうだったので、そのまま当たり障りない話を選んでいたらすぐに食堂に着いた。
「二人ともお帰りなさい」
食堂では両親が既に待っていた。今日は二人とも仕事は終わっていたようだ。忙しくていない時もあるからこうして揃うと嬉しい。
「今日はどうだった? 何も問題はなかったか?」
「まあ問題はなかったけど、色々大変だったよ……」
食卓は今日の話で盛り上がることになった。流石に王子の変な行動は話さなかったが、一応メイド不足の事なんかは伝えておいた。もしかしたら何か両親にも伝手があるかもという希望も含めて。
食事の後も少し話していたがフィアナが凄く眠たそうにしていたので、細かい話は後日することになり、そのまま食堂を後にすることにした。
「あの、少し部屋に行ってもいいですか?」
その道中でフィアナにそう聞かれる。勿論歓迎なのだがてっきりフィアナは自室に戻るだろうと思っていた。
「いいけど。もう眠いんじゃない? 大丈夫?」
「眠いのはその通りなんですけど……少しお話したくて」
「そう、それなら行きましょうか」
「はいっ」
フィアナは私の言葉に嬉しそうに頷いた。そのまま私は迎えの時からそばに控えていたシグネにも声を掛ける。
「シグネはこれからどうする?」
「特に何もなさそうなので今日は戻ることにします。何か御用があればいつでも呼んでください」
「うん、わかった。今日はわざわざありがとうね」
「いえいえ、それではお二人ともお休みなさいませ。あまり夜更かしはしないようにお願いしますね」
はーい、とシグネに返事をして彼女とは別れた。
そのまま自室に着くとフィアナに大きなソファーに座るよう促し、私もその隣に座った。
「どうしたの? 話をしたいなんて」
フィアナ自身遠慮があるのか、あまりこういう風に接してきたことはなかった。そうした遠慮をしなくなったとしたら嬉しい限りではある。
「その、今日は色々とあって何か話さないと落ち着かないというか……」
「あー、そういうのあるよね。わかるわかる」
たぶん眠気と興奮が混じっているんじゃないかと推測する。楽しい祭りの後みたいなそんな感じ。
「王城は広かったですね……」
「あの広さじゃ使用人不足も納得できるわね」
しばらく今日の振り返りのようにあったことを話す。その中で一つだけ私は気になったことがあったので聞いてみることにした。
「そういえばフィアナってメイドになりたかったの?」
「え?」
そう、今日のフィアナは何かと張り切っていたように見えていたのだ。もしかしたらメイドになりたかったんじゃないかと思うぐらいには。
しかし、その考えは不正解だったらしい。
「メイドになりたかったわけじゃなくて……その実は家事をしたかったんです」
「……家事? どうして?」
「家では家事も分担してやってたんです。それに一時期は一人で全部やってたので……だから何もしなくていい状況にまだ慣れてなくて」
一人で、と言った時少しだけ悲しそうな顔をした。恐らく両親を亡くしてからのことだろう。
「だから、今回久しぶりに掃除とか出来て少しスッキリしました。すいません、何だか張り切りすぎちゃったみたいで」
「んん、全然いいよ。というかそういう事は全然言っていいんだよ? 家事とか手伝いで色々出来ると思うし」
「いいんですか?」
フィアナの問いに頷いて答える。まさか張り切っていたことにそんな理由があったとは知らなかった。流石にそれを先読みするのは無理だろうが、そういう願望を叶えることは出来るだろう。
「これからそういう事があったら私でもシグネでも、とりあえず相談してよ。力にはなれると思うし」
「あ、ありがとうございます! 嬉しいです……!」
フィアナは目をキラキラと輝かせている。これくらいで喜んでくれるならいくらでも聞こうじゃないか。
「ふわ、ぁ」
それからしばらく他愛もない会話をしていたらフィアナが大きな欠伸をする。どうやら眠気が頂点まで達していたらしく、さっきまで話していたというのに今は意識も弱くウトウトしている。
「フィアナ? 大丈夫?」
「ん、んん……はぁい、大丈夫ですー……」
全然大丈夫じゃない。返事も曖昧だし瞳も眠る寸前の虚ろになっている。
「…………」
その時、ちょっとだけ魔が差した。隣り合って座っている状態だからもしかしたら少し引き寄せればこっちに倒れてくるんじゃないかという、純粋に邪な思いで彼女に手を伸ばした。
「うーん……」
そして私の思惑通り、フィアナはゆったりと体をこちらに預けてきた。元々小さな体で全く重さは感じないが、少女特有の柔らかさとか眠いせいか少し高めの体温を直接感じる。
(これが……これが幸せ……!?)
フィアナは結構恥ずかしがりな所があるので、こうしたスキンシップは普段してくれないのだが、今日に限っては別だ。(単純に寝ているだけだが)
「……柔らかいし、何か良い匂いがするような」
こっちに倒れてきている姿勢を抱きかかえるようにすると、いよいよもってたまらない。控えめに頭を撫でてあげるとそれに合わせるように頭を埋めてくる。何この子可愛い。
「ふぁ、あ……」
そしてそんな幸せの時間を楽しんでいたら私にも睡魔が襲い掛かってきた。そりゃ私だって初めてのメイド体験で疲れていないわけもない。ただ今までそれを自覚していなかっただけなのだ。
「あ、だめ、せめてベッドで寝かさないと……」
座っていたソファーは無駄に大きい。例えそのままフィアナと一緒に横になっても問題はないだろう。しかし健康上良くない。
「あ、ああ、ぁぁ……」
しかし、悲しいことに私はそのままフィアナにのしかかられる形でソファーに横になった。
「すぅ、すぅ……」
今の私には心地よさそうに寝ているフィアナを起こすことは不可能だったし、何より私もとっくに限界が……
「あ、やば、い……いま、寝た、ら……ソファーじゃなく、ベッド……で」
気が付けば私もフィアナと一緒に夢の世界に旅立つことになった。
そして、そのせいで大変なことになることをこの時の私は知る由もなかったのだ。
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