33.シスコン悪役令嬢、姉妹になる
投稿時間が遅れて申し訳ありません。多忙な日々が続いております……
フィアナの話は難しくなかった。
「じゃあ、元から魔力の素質があって、あの時のアレがきっかけで目覚めたってこと?」
「恐らくそうだと思います……」
「それってつまり、私のおかげ!?」
調子に乗った発言をしたらお父様に軽く頭を小突かれた。
「馬鹿者。皆に心配を掛けたことを喜ぶな」
「はいすいません」
何はともあれ、フィアナの覚醒イベントはこれで終わりだ。ちょっと予期してない事もあって焦ったけど無事(?)に済んだことを喜ぼう。
このイベントが終わるとフィアナの周りからの評判は一変する。そりゃ国でも随一とも言える機関である魔法院に認められたわけで、彼女の将来は決まったようなものである。
そんなわけで急に利が生まれた彼女に、今まで蔑んでいた奴らは手の平グルグルというわけだ。
ちなみにゲームでの私はさらにそれを妬んで味方は減っているものの嫌がらせをやめないどころか、過激にしていく。そこまで貫くのは寧ろ凄いとすら思える。
「はー、でもフィアナが引っ越さなくてよかったー。最悪魔法院突撃まで考えてたからさー」
「それは本当にやめなさい」
お父様が拳を作るのを見て私は慌てて手を振った。
「やらないって!! だから拳を下ろして!!」
「全く……今までそんなことなかったのにどうして急に活発になったのか……」
「まぁまぁ、貴方。元気なことはいいですし、二人とも仲の良い証拠でしょう」
お母様はそう言って微笑んでくれた。お父様も呆れているようだが実際のところは私達のことを大事に思っていてくれているのだ。
迷惑かけて本当に申し訳ない限りだ。
「はぁ……まあよい。ではフィアナにはちょっと聞きたいことがあるからもう少し残ってくれるか」
「え? は、はい」
話とは何だろうと思い、普通に残ろうとしたのだが「お前は倒れているんだから休みなさい」と言われて無理矢理追い出された。解せぬ。
「別に私も残ってたっていいじゃん! 昨日しっかり休んだから平気なのに……」
「まぁまぁ、すぐに終わりますよー」
「むー」
学園を休むのは熱で寝込んだ時以来だった。あの時とは違って今回のは完全に私事による自業自得みたいなものなので、何だか明日学園に行くのが億劫だ。
「今は待つしかないかー」
「そうですよー。それまでお話でもしてましょうー」
「はいはい」
それからアイカと他愛のない話に花が咲いたが、結局フィアナは夕食の時間まで解放されることはなかった。
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そして、その夕食も過ぎてお風呂まで済ませた私はすっかり寝る準備を整えてしまった。
「そういえば、別にこの部屋に来てなんて誘ってないし、来るわけないか」
今日の仕事が終わったアイカも既に部屋から出て行っている。要は私一人なわけだが、どうしようもう寝てしまおうか。
深夜は当然眠くなる。フィアナとはまた明日の朝、一緒に学園に行く途中に話すことにしよう。
そう思った時だった。コンコンと控えめに扉がノックされた。
「はーい?」
てっきり誰か使用人かと思ったが、そこから響いた声に私は寝ようとしていた意識を飛び起こすことになった。
「あの、フィアナです。すみません夜遅くに……今、よろしいですか?」
「フィアナ!? ま、待って今開けるから!」
慌てて扉を開けると声の主が立っていた。
「ど、どうしたの? とにかく入って」
「はい、失礼します」
フィアナを自室に招いて椅子に座ってもらう。いや、来て欲しいとは思っていたけど彼女から来てくれるとは何か用があるのだろうか。
「それで、どうしたの?」
「あの、私謝りたくて……」
「謝る?」
突然の言葉に戸惑う。謝る、とはどういうことだろうか。フィアナに何か落ち度があるわけもなく、それどころか迷惑を掛けたのは私だ。
どちらかというと逆じゃないだろうか。
「えっと、謝るって何のことかな。正直、私の方が色々滅茶苦茶しちゃって謝るべきなんじゃないかと思うんだけど」
「そ、そんな、だって元を辿れば私が原因ですし……だから謝らないとって思って」
「いやいやいや、そんな気にしないでよ! 大体あの糞王──バリス第二王子が原因だし、ね?」
私がそう言うとフィアナは申し訳なさそうにしていた。ううむ、だいぶ深刻に思っているのだろうか。
こういう時は話を変えるに限る。
「とにかくさ、フィアナは全然気にしなくていいよ! それに魔法にも目覚めたんだしさ」
「で、ですが」
「それよりもさ。今朝帰ってきたときのことなんだけど」
「……はい?」
「そのー、聞き間違いだったら恥ずかしいんだけど『セリーネお姉様』って呼んでくれなかった?」
ぶっちゃけ、今回の件よりもそのことの方が重要であった。だって、今までセリーネ様って他人行儀な呼び方だったし、それがいきなりお姉様になったら感激どころじゃない。
「え、あ……も、もしかしてダメでした……?」
そんなフィアナは私の言葉に少し瞳を揺らした。い、いかん、これは勘違いされる!
「いや! それでいい! というかそれがいい! ずっとそう呼んで欲しかったからさ。でも何でそう呼ぶようになったのかなって」
「それは……アクシア様やシグネさんから話を聞いて」
「話?」
なんでも私が常日頃嘆いていた「お姉ちゃんと呼ばれたい」という旨の話を二人から聞いていたらしい。やっぱり常日頃からそういう願望は垂れ流しておくべきということか。
「そっかそっかー。いやーお姉様かぁ。ウフフ……ねぇ、もう一回呼んでくれないかしら?」
「え? い、いいですけど。改めると少し恥ずかしいです……」
そういって可愛く頬を少し赤らめるフィアナが愛おしい。いや、本当出来過ぎた妹だ。
そんな彼女は少しだけ間を置いた後、いつもよりも小さい声だったがちゃんと私に向けて言ってくれた。
「せ、セリーネ、お姉様……」
ああ、やっとちゃんとその言葉が聞けた。何だか感動すら覚えてしまう。血は繋がっていないものの、これで漸く彼女とは姉妹になれたような、そんな気がする。
でも、あんまり満足気に見つめていたせいだろうか、フィアナはボッと顔を赤らめると中々の勢いで立ち上がった。
「……あ、あの夜も遅いので今日は失礼します! お、おやすみなさい!」
「え? あ、お、おやすみ」
ってあれ、出て行くの!? ついでに添い寝でもしようかと考えていたのに……
「まぁいいか。添い寝はまた次の機会ってことで……」
それよりも今日は姉妹仲が進展したことを素直に喜ぼう。
「お姉様だって、ふへへへへ……」
だいぶキモイ笑い方をしているが、それくらい私は舞い上がっていた。
だからこそ、忘れていた。私が試合の前にした例の約束を。
そしてそれを知ることになるのはその翌日、学園に登校した時に知ることになる……
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