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23.純粋無垢な妹、義姉への想い

本当に投稿がいつもいつも遅れてすみませんorz

 私がセリーネ様をお姉様と呼んだのはその日が初めてでした。ただそれからその呼び方は使っていません。


 その理由はセリーネ様が休養の為お休みしていた日、とある令嬢の方達に呼び出しをされた時にある事を言われたからです。


 リトルリア学園は貴族の方が通う学園なので、生徒の誰しもがちゃんとした家名を持っている偉い方々です。

 そんな方達からみたら、ちゃんとした家名を持たない平民の私は目障りだったのかもしれません。


「セリーネ様の家に引き取られたからっていい気にならないで」

「平民にはこの学園はふさわしくない」

「どれだけ迷惑をかけているのかわかっているのか」


 などなど、思いつく限りの悪口を私は毎日のように言われていました。私もそれをまともに受けるのは辛かったですが、抵抗のしようもなくひたすら彼らの気が収まるまで待つのが普通でした。


 ただ、私の悪口だけならよかったのですが、その日は違ったのです。


「貴女なんてセリーネ様に相応しくないのよ! 貴女のせいでエトセリア家の品格が落ちるのよ!」


 その言葉は私の心に重くのしかかりました。そう、気づいてしまったのです。

 確かにセリーネ様は私を受け入れてくれたかもしれませんが、私に彼女の、エトセリア家の家族としての資格がないのです。


 エトセリア家は公爵家で、その功績は言わずもがなです。しかし、それと比べて私は勉強も魔法もそこそこで、貴族としての礼儀作法やダンスなんか殆ど出来ません。そんな私ではただエトセリア家の皆さんに迷惑を掛けるだけという事実しかありません。


(甘えてるだけじゃ、だめなんだ……)


 私を呼び出した人達とのその後は殆ど覚えていません。ただ、迎えに来てくれたシグネと一緒にセリーネ様やアイカさんがいたことは驚きました。嬉しくもあり、それが申し訳なくもあります。


 結局、その日はずっと自分のことについて考えていました。なにも出来ない無力な私がどうすればセリーネ様達と肩を並べることができるのかをです。

 しかし、それは考えれば考えるほど深くなっていく穴のようで、私は大きな絶望感と一緒にいつしか涙を落としていました。体調が優れなかったため、夕食にも出ずに部屋の中で独り静かに嗚咽を漏らして過ごしたのです。




 ……でも、何もやる前から無理だと諦めるわけにはいきません。




「お母さん、お父さん……新しい生活は少しだけ大変だけど……私、頑張るから……だから……」


 もう会えない両親に私は胸の中に強い決意を秘めて誓います。


 たくさんのことを学んで学んで学んで、エトセリア家の者として、そして何よりセリーネ様の妹として相応しい教養を身に着けてみせます。

 そしてそれまでは自分への戒めとして、お姉様ではなくセリーネ様と呼ぶことも決めました。


 明日から私の戦いが始まる! そう覚悟を決めました。


 決めた、はず……だったのですが……


「さあ、一緒に学園に行きましょう! 私達は家族なんだから!」


 私のお姉様は、そんな重苦しい覚悟と決意の中にあっさりと踏み入ってきたのでした。




 セリーネ様はそれから何かと私のそばにいてくれました。流石に学年は全然違うので授業中は無理ですが、昼食の時間や放課後の帰るときなど、今までずっと一人だった日常の中に自然と彼女が混ざり始めたのです。


 学園に通い始めた頃、セリーネ様は私とは接点を持とうともしませんでした。寧ろその逆もあるくらいで、彼女の取り巻きと思われる人達は揃って私を非難していました。

 ただ、セリーネ様が近くにいるようになってからはそういうこともかなり減り、学園も少しずつですが過ごしやすくなってきました。


 この成り行きはちょっと予想外だったのですが、それは確かなチャンスでした。学べるうちに何でも学んでおくのが大事なのです。


 そんな私はまず勉強をすることに決めました。魔法の腕も礼儀作法もダンスも必要なのですが、まずは勉強が一番取っつきやすかったのです。そういう時にシグネさんはたくさん助けてくれました。

 今日だってそうです。私が急にセリーネ様に勉強を教えて欲しいとお願いをして困らせたしまった時も、休みだというのに私の勉強に時間を割いてくれたのですから。


 ただ、セリーネ様にとっては簡単すぎたのでしょう。


「すぅ、すう、んん……」


 私の隣で机に突っ伏しているセリーネ様の穏やかな寝息を立てていました。


「でも、珍しいですねー。セリーネ様がここまで無防備なのもー」


「そうですね。前まではずっと気を張っているようで、こんなゆったりと昼寝なんてしませんでしたから」


「そうなんですか……?」


 シグネさんとアイカさん曰く、セリーネ様はある時期を境にピリピリするようになり、誰にでも気を許すことはなかったらしいのです。それを聞いて思い出すのは初めて会ったときの彼女です。確かにあの時の彼女の目は周り全てを警戒しているようなそんな感じだったかもしれません。


「どうしたんですかねー。熱を出してからですかねー?」


「思い当たる節はそれしかありませんね……それか、フィアナ様何かしました?」


「えっ!? 私ですか!? な、何も覚えはないですっ!」


「ですよね……まぁ、悪いことだとは思いませんが。何だか気味悪いような」


「えー、シグネはひどいですねぇ」


「今までのセリーネお嬢様の行いを顧みて言ってるんです」


 シグネさんもアイカさんも穏やかに寝ているセリーネ様を少しだけ温かい目で見つめているようでした。

 私はそんなセリーネ様のキラキラと輝く金髪に目を奪われながら、もう一度心の中で強く誓います。


(絶対にセリーネ様に相応しい妹になってみせますから。そして、その時にお姉様と、そう呼ばせてください)


 聞こえたわけではないのでしょうが、セリーネ様はそんな私の思いに「ん、んん……」と寝言で小さな返事をくれたような、そんな気がしました。

ブックマークや評価、感想などありがとうございます!

次話から再びセリーネ視点に戻りますが、ちょっとした波乱(茶番)が巻き起こります。

楽しみにお待ち頂ければ幸いです。よろしくお願いします!


次回の投稿は明日の23時を予定しております!守れるよう頑張ります!

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