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22.純粋無垢な妹、変わった義姉に戸惑う

仕事が忙しく投稿が遅れました。申し訳ありませんorz

 エトセリア家の方々の心遣いは凄く嬉しかったです。実際に声を掛けてもらわなかったら今頃私はどう暮らしていたのか想像も出来ません。

 ただ、そんなにすんなりとは受け入れて貰えるわけではありませんでした。


「ふぃ、フィアナです……これからお世話に、なります」


 エトセリア家の当主であるフォード様と奥方様であるマリン様に挨拶を済ませた後、私は公爵家令嬢であるセリーネ様の自室を訪れていました。


 これからは家族にもなることだし、私にとってはお姉さんのような方になるとのことで、挨拶をしておいた方が良いと言われたからです。


 フォード様やマリン様はとても穏やかな方で、平民の私にも凄く親切に対応してくれました。ただ、セリーネ様のその目つきはそれらとは反対で私を鋭く睨みつけるものでした。


「……あっそう。良かったわね、縁があったおかげでこの家に住めて」


 その声も酷く冷たいもので、私がはっきりと彼女から拒絶されているのだと理解するには十分過ぎました。彼女は私を家族としては見てくれず私もまた、彼女を姉と意識してはダメなのだとそこで知ったのです。


 その後に知ったのですが、セリーネ様は中々気難しい方のようで、私が突然迎えられることにもあまり良い反応をしていなかったようなのです。


 それからは私はセリーネ様とすれ違う日々を過ごし続けました。会っただけでも理不尽に怒られたりするばかりで、終いには彼女とは出来るだけ距離を置いた方がいいかもとさえ思ったほどです。


 正直に言うと辛かったです。でも、わざわざ昔の縁というだけで私を迎え入れてくれたこの家に、そんなことは言ってはならないとひたすら耐えることを選択しました。私が何もしなければ大丈夫だと、そう自分に言い聞かせながら。


 それに、私なんかにはとても申し訳ないのですが、お付きとして傍にいてくれるメイドのシグネさんはよく私に気を遣ってくれました。色々とお話をしてくれたり、私自身の話を聞いてくれたりと凄く優しい人だったのです。


 ただ、それからもセリーネ様との関係はよくなることはなく、時期の関係で急に通うことになった学園でも私は元が平民ということで周りとはうまく馴染めずに鬱々とした日々を送っていました。


 ただ、拾われてきた力のない私には環境を変えることなんて出来るはずもなく、ただ堪え忍ぶので精一杯でした。


 そんな時でした。


「セリーネ様が熱を出して寝込んでいるんですか……!?」


 シグネさんからセリーネ様が熱で倒られたと聞いて私は驚きました。


「はい。だいぶ酷いようで……今は自室にて医者が診ていますが、とりあえずしばらくは部屋に近づかないようにとのことです」


「は、はい……でも大丈夫なんですか?」


「命に別状はないとのことですが、意識がまだ戻らないのです」


「そ、そんな……」


 セリーネ様とは上手くいってはないですが、それとは関係なく凄く心配でした。彼女の両親も凄く心配らしく、忙しそうに何かと走り回っています。


 ただ、こういう時も何もできない無力な私でした……




 そして、セリーネ様が目を覚ましたのはそれから三日後でした。シグネさんから知らせを受けた私は、フォード様やマリン様と一緒に部屋に向かいます。


 そして部屋に入った時に妙な違和感がありあした。私を見て何故かセリーネ様は驚いたように目を見開いていましたが、その瞳から以前感じていた冷たい鋭さが微塵も感じなかったのです。

 その時はセリーネ様は安静にしなくてはということで、邪魔にならないよう一度部屋から出ることになりました。何だか少し熱の籠った目線だったような気がして、その時はただ不思議でした。


 しかし、その感覚は間違いでないことにしばらくしてから気がつきました。


 シグネさんから、セリーネ様が話したいことがあるらしく部屋まで来て欲しいと言われて向かってみたら……


「これは家宝にします。シグネ、このまま完璧な状態で保存して」


 私が作ったわけではないのですが、持っていったホットミルクに変なことを言ったり──


「ごめんなさいぃぃっ!」


 今まで見たこともない凄い勢いで突然謝ってきたりと、本当にセリーネ様なのか、疑問に思うほど彼女は変わっていたのです。


 病気で何かあったのかわかりませんし、彼女がそうなってしまったことが良いのか悪いのかはわかりません。でも、厳しく拒絶されることに比べればそれはそれはずっと嬉しくて。


「セリーネ、様」


「もうその呼び方じゃなくていいわよ」


「え?」


「私達はもう家族なんだから、ね」


 何だか性格が今までと真逆過ぎて少し戸惑うところもありましたが、セリーネ様のその言葉は今の私にとっては救いの言葉だったのかもしれません。


「お、お姉様……」


 本当にそう呼んでいいのかわかりませんでしたが、私が恐る恐るそう呼んでみるとセリーネ様は感極まったように抱き着いてきました。質の良い寝間着と一緒にふわりと香る彼女の良い匂いと僅かな汗の香りが鼻を擽りました。


(……誰かに抱き締められるの、久しぶり……)


 久々に感じたじんわりと伝わる人の暖かさに、私はバレないように少しだけ涙を流したのでした。

ブックマークや評価、感想などありがとうございます!

また誤字報告を毎度して頂いて本当にありがとうございます。というかすみません……

明日の投稿は23時頃を予定しております。よろしくお願いいたします!

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