20.シスコン悪役令嬢、勉強会を開かれる
投稿時間遅れました。いつも遅れてすいませんorz
私の勉強会は結局、開かれることはなかった……
だって勉強なんて好きじゃないのだ。それは世界が変わっても不変な事実である。
魔法学という名前だけ聞けばファンタジー心に火がつきそうだが、残念ながら教科書の中身は理論的なこととか、専門用語の羅列ばかりでハッキリ言うならつまんなかった。
要約すれば教えてくれ、なんて言われても無理なのだ。
なのに勢いだけでオッケーしてしまった私は今何故かフィアナと隣合わせで座っている。
「ですから、ここでいう魔法原理は自然現象の延長線であり──」
そしてどういうことか、シグネの勉強会が開かれている。
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全ての始まりは私のせいだ。出来もしないお願いを二つ返事でオーケーするのは常識ならありえない。まぁフィアナの頼みを断る選択肢がないからそれもしょうがないのだが。
そんなわけでどうしようか困り果てていたら、良いタイミングでアイカが紅茶と茶菓子を持ってやってきたのだ。後ろに私服姿のシグネを伴って。メイド服ではなくシンプルな青を基調としたワンピースに白のスカートを穿いていて……あれだ、モデルさんみたいな美人さんである。
「アイカから変なことをしようとしてると聞いて不安になったので」
変なこととはなんだ。こちとら真面目に(全くわからない)勉強の講師をしようとしたいたというのに!
「シグネはとっても頭が良いし教えるのも上手なんですよー。だからちょうどいいと思ってー」
「変なこと」と称したらしいアイカが間延びした声でそう言う。実のところを言えば物凄くありがたい話だ。正直あのままだったら固まったまま時間だけが過ぎたに違いない。
だけど気になることがある。
「シグネは今日休日なんでしょ? 何か予定とかあったんじゃないの?」
そう、彼女は今日は非番のはずだ。流石にその時間を私達の勉強に充ててくれなんて頼むのは申し訳ない。
だが、シグネの反応は私の思っていたものではなかった。
「セリーネお嬢様が……私に気を使っている……!? ど、どうしたんですか、もしかしてまだお体の具合が」
「失礼ね!? 至って身体は正常よ!」
「は、はぁ……」
何だか納得していないようだが、まぁいい。今は私の性格の話が本題ではないのだから。
「それで、いいの? 折角のお休みなのに」
「いいですよ。今日は特に予定もなかったですし。フィアナ様も、休日を使ってまで勉強しているというのに私が何もしないというのはお付きメイドの名が廃れます」
「シグネ、さん」
フィアナは相変わらず誰にでもさん付けしているようだ。礼儀正しいのかまだ完全に打ち解けていないか、恐らく両方だろう。
「ですから、ここは私にお任せくださいませ」
とにかく、そういってスカートをちょんと摘まんで優雅にカーテシーを決めるシグネはまさしく立派なメイドで先生だった。
そんなわけでシグネの講義を受けることになったわけだが……
「なるほど……シグネって本当に頭良いんだ……」
熱心にシグネの授業を受けているフィアナと、相変わらずのんびりしているアイカに聞こえないようにボソッと呟いた。
シグネの授業は丁寧で、しかもわかりやすかった。声質が良いのもあるのかよく通るし、聞いていてすんなりと耳に入ってくる。
何も知らなかった私に、中等部で習う魔法学が知識として入ってくる感じがあった。
「じゃあ、少し休憩しましょうか」
「は、はいっ」
フィアナも同じような気持ちなのだろうか、どこか感嘆とした返事をして熱っぽい視線をシグネに向けているような気がする。ちょっと待って、それ尊敬する人を見る目じゃない!? 姉である私に向けて欲しい奴じゃないの!?
「……ぐぬぬ」
何だか一本先に取られた気がする。別に勝負しているわけではないが、確かに頼りになるお姉さんという感じはある。
「悔しいっ」
「どうしたんですか、急に」
そんな私の呪詛をシグネはあっさりと受け流す。そこら辺も出来る大人ということなのだろうか。
「いや、何でこんなに教えるの上手なのかなーって。フィアナもそう思うでしょ?」
「え? あ、はい! すっごくわかりやすかったです!」
「そう言って頂ければ嬉しいですが、別に何かあるわけじゃないですよ。ただ……」
「ただ?」
私の疑問にシグネは少しだけ間をおいて、そして少し恥ずかしそうに答えた。
「その、昔……本当に昔ですが。いつかどこかの学園の教師になりたいと思っていた時期があって、それで教え方とか学んだことがあるってだけなんです」
「あぁ、そうだったの。それなら納得だわ……」
理由を聞いて理解した。なるほど、シグネの夢は教師だったのか。この情報はゲームでも語られることがなかったけど、ずっと隠していたということだろうか。
「もったいないわ、素敵な夢なのに」
「え?」
いかんいかん、つい思ったことを呟いていた。
「あ、いや、シグネは教え方も上手だし先生としては文句のつけようがないなぁって」
「私も、シグネさんみたいな先生だったら、凄く勉強しやすいと思いますっ」
それで誤魔化すように本心をフィアナと一緒に伝えると、シグネは……少しだけど確かに嬉しそうに微笑んだ。そんな顔もするんだ。
「ありがとう、ございます。まぁ、叶わぬ夢ではありますが、こうしてお二人のお役に立てたのなら無駄ではなかったですね」
叶わぬ夢? そういえばどうしてシグネは教師になることを諦めたんだろう? それを聞いてみたくなったがしかし、何となく踏み込んではいけない予感がして、言葉を飲み込んだ。
「それじゃ、休憩するんですよねー。今日もとっても美味しい紅茶とあまーいお菓子を用意しましたよー」
そのタイミングでアイカが横からゆっくりと入ってくる。彼女の用意するお茶菓子はいつも絶品だ。
今日用意された紅茶も香りが良く、まさに優雅な一時を過ごすためにだけ用意されたものだといっても過言ではない。
そんな彼女はふと、珍しく瞳に影を落として呟くように話す。
「私も、実は一流のパティシエールを目指してた時期があるんですよー……」
「……本当?」
しかし、何か引っかかって疑いの目を向けると彼女はあっさりと光を取り戻しておちゃらけた。
「今考えましたー」
ああ、もう本当マイペースだなこのメイド! ただ、そのおかげで休憩の時間は和やかでゆったりと過ぎて行った。
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次回の投稿ですが、明日はちょっとある設定を変えたいので大幅な改稿をする予定です!
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