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14.シスコン悪役令嬢、不安になる

何度目になるかわからないのですが、予定していた投稿時間を過ぎて申し訳ありませんorz

 ほんの僅かかもしれないが、確かにフィアナとの距離が縮まったと思う。それは凄く嬉しいことだし、良い事に違いない。これからもっとその関係を深めていければ最高だ。


 しかし、それとは別に私には問題が山積みだった。


「ぐぬぬぬぬ……」


 基本的にこの学園では午後の授業は短い。大体3時くらいには終わり、それからは自主学習という項目になる。


 この自主学習というのは名目上そうなっているだけで、実際は自由時間と等しい。別に帰ってもいいし、勉強してもいいし、魔法の訓練をしてもいい。所謂「生徒の自立性を高めよう」という試みだ。


 ゲームではフィアナの行動をそこでプレイヤーが決めて、起こした行動によって彼女のステータスが成長するのである。これはもちろんイベントで必要となってくる要素のひとつだ。ただ怠けていると良い結末を迎えられないわけである。


 まぁ、ノーマルエンドでも皆仲良しエンドって感じで終わるだけだ。(ちなみにセリーネはやっぱり悪事がばれて追放される)


 ちょっと話が逸れてしまったがそんなこんなで自由な自習時間に、私は学園にある図書館まで案内図を頼りに来て、そこで絶賛教材とにらめっこ中であった。


「ま、まじでわからん……魔法原理ってなんだこれ……」


 静かな図書館に私の呟きが広がり、すぐに消えていく。


 午後の授業は短いおかげで午前程の脅威はなかったが、それでも何か質問されないようにとお祈りタイムを過ごすことには変わりなかった。

 流石の私もそれには危機感を抱いた。どう考えても不味い状況だ。それは『定期考査』というイベントがあることも一因している。


 要はテストなわけだが、もしも今の状態で受けたりしたら悲惨とかそういう話では済まないだろう。一応セリーネは秀才設定だから、それを崩すわけにもいかないし、公爵家令嬢として恥ずかしい成績は残せない。何よりフィアナに情けない恰好を見られたくない!


『え、お姉様……そんな点数しか取れないんですか? 失望しました……』


 フィアナに罵られスーッと血の気が引いていくのを感じる。一瞬、ほんの一瞬だけフィアナに蔑まれるのも悪くないかと思ってしまったが、すぐにそれを否定するように首を振る。ちなみに脳内では既にお姉様と呼ばせているのは気にしないで欲しい。


「うー、しかし困ったなぁ……」


 こういう時、頼れる人がいないのは中々辛い。朝倉美幸としての私だったら勉強を教えてくれる友人がいたのだが、生憎この世界では……


「とりあえず読んでみるだけ読んでみるか……」


 一つ欠伸を噛み殺して潤んだ瞳を軽く拭った。どうやら長い長い戦いになりそうだ。



#####



「あのー……」


「ううん、うう……ふぃあなぁ……?」


「あ、あのー」


「ん、んん……いいよぉ、おいで、ぇ……」


「あの、セリーネ様っ」


「ひゃい!? うぐっ!!」


 控えめながらもはっきりと響いた声に私は意識を覚醒させられ、瞬間的にガタンと飛び上がってしまい、強烈な勢いで机に足をぶつけて悶絶することになった。


「おおうっ……! 足がぁ……!」


「す、すいません! 大丈夫ですか!?」


 ジンジンとした痛みで目が覚める。どうやら何時の間にか寝ていたらしい。

 痛みに耐えながら顔を上げると、そこには司書と思われる女性が申し訳なさそうに立っていた。周りを見渡すと生徒の姿はなかった。


「あ、ごめんなさい、私いつの間にか寝てて……」


「い、いえ、それは構わなかったのですが、そろそろ閉館時間なので、あの」


「閉館……? っぅえ!? 今何時ですか!?」


「もうすぐ、6時ですね」


「ろ、ろっ!?」


 バッと窓から外を見れば既に薄暗かった。間違いなく夜が降りてきている。ついでにいうと絶対に迎えの馬車を待たせている。


「ごめんなさい! すぐに出て行きますから!」


 慌てて読んでいた本を元の位置に戻す。結局収穫はなしだった。


 バタバタと慌てながら図書館を出る。そのまま正門まで全力疾走だ。図書館が閉まるのは6時だが、まだ学園は閉まっていないので他の生徒がいるわけだが、彼らは走り抜ける私を怪訝な顔で見ていた。どうか見てないことにして忘れてほしい。


 そのまま、校門を出ると見覚えのある馬車がちゃんと停まっていた。慌てて御者に謝りつつ挨拶をして後ろから乗り込んだ。


 するとそこには──


「すー、すー……」


 ぼんやりメイドが安らかに寝息を立てていた。


「すー、ん、んんっ……あれ、セリーネお嬢様、遅かったですねー」


 私が入ってきた揺れで目が覚めたのか、アイカはゆっくりと伸びをすると、ぼんやりとした柔らかい瞳を向けてくる。


「ごめんなさい、ちょっとその……読書に集中してたらいつの間にか時間が過ぎてて」


「あー、そうだったんですかぁ。道理で道理でー。先にフィアナ様とシグネは戻っちゃいましたので、私たちも帰りましょー」


「え、ええ……待たせてしまって本当にごめんなさい」


「……いえいえー、私はのんびり好きなんで大丈夫ですよー。じゃあ帰りましょうー」


 アイカが合図をすると馬車がゆっくりと動き出した。馬車の窓から外を見ているとアイカが話しかけてくる。


「そういえば、読書って何を読んでいたんですか?」


「え? ああ、ちょっと勉強しようかと思って教材みたいなのを読んでたの」


「へー、でもセリーネお嬢様って勉強必要でしたっけ?」


「うぐっ」


 痛いところをあっさり突かれる。やっぱり秀才設定なのか。いよいよ本当に下手なことが出来なくなってきた。


「い、いや、初歩的なことは重要だけど忘れがちだから。言うでしょ? 初心忘るべからずって」


「ほぇー、勉強熱心なんですねー」


 熱心にならざるを得ないだけだ。しかも今日は悲しいことに失敗している。それに気にしないといけないのは勉強だけではない。


(勉強もだけど、魔法も何とかしないと……)


 この世界における常識とも言える魔法。私は氷の魔法が使えるはずなのだが。


「セリーネお嬢様?」


 いきなり右手を突き出した私にアイカが疑問符のついた声を出す。私の手先からは何も出ることはなく、所在なさげにそれを下ろした私はため息を一つついた。


 先行きの不安だけがどんどん募っていく。


 しかし、意外なところから救いの手が差し伸べられることになるとは、この時の私は知らなかったのである。

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次回の投稿は明日の10時を予定しております!どうぞよろしくお願いします!

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