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13.シスコン悪役令嬢、妹を探す

いつも予定していた投稿時間から遅れて本当に申し訳ありませんorz

 ちょっとしたハプニングがあったものの、とりあえず中等部までやってきた。その学年の生徒から見たら珍しいのか、数多の視線を感じながらフィアナの教室まで向かう。


(まだいればいいんだけど……)


 さっきの件でちょっと時間が過ぎている。基本的に生徒の昼食は食堂の利用か購買が殆どだ。確かフィアナも初めのうちは購買で買って、学園の広い校庭の隅で食べていたはずだ。


「あの、ごめんなさい。フィアナはいるかしら?」


 ちょうどフィアナの教室から出てきた女生徒達に尋ねてみる。まさかこんなところに上級生がいるとは思っていなかったのか、彼女らは私に少し驚いたようだったがすぐに何事もなかったように整えて答える。流石貴族の学校に通うだけはあるなぁ。


「フィアナさんでしたら、つい先ほど教室を出て行かれましたが……」


「え、マジか……」


「まじ?」


「あ、ああ、いえ、何でもないの。教えてくれてありがとう」


 いかんいかん、私も仮にも令嬢なんだから素を出さないように気を付けなければ。教えてくれた生徒にお礼を言ってとりあえず外に出る。


 学園の敷地は無駄に広く、その中に開放されている校庭がある。芝生が一面に敷かれており天気が良い日はそこで購買で買った物を広げる生徒が多く目立つ。


 というのはゲームでの設定だ。


 フィアナは食堂で食べると視線が集まったり陰で嫌味を言われたりするので、出来るだけ目立たないようにこの校庭の隅で昼食をとっている。

 ただ、ストーリーが進むと友人や攻略対象と食堂に行くこともあるのだが、今の時期ならばストーリー的にも序盤なのでいるとしたら校庭の可能性が高い。


「流石に校庭まで迷うことはなさそうね」


 ある程度校庭への人の流れもあるおかげか、そこまではスムーズにいけた。ただ広いとは知っていたが、それは想像以上だった。


「うーん、どこだろう……」


 楽しそうに談笑している生徒は多いが、フィアナの姿は見当たらない。隅の方にいるはずだからととりあえず周りを中心に確認する。綺麗な金髪だから目立たないはずはないけど……


 すると、私に気づいたのか数人の生徒が寄ってきた。流石に金髪縦ロール公爵令嬢は目立つかな。別に縦ロールにしないといけない決まりはないから、明日はアイカに頼んで別の髪形にしてみようか。


「セリーネ様! 珍しいですね、こちらの方に来るなんて」


「え、ええ」


 珍しい、ということは日頃セリーネは食堂を利用しているのか。まあ確かにセリーネは陽の下で食事をする性格ではないと思う。


「もし良かったら一緒に食事でもどうですか?」


 その誘いは嬉しいのだが、申し訳ないが今は応えることが出来ない。


「あー、ごめんなさい。ちょっと人を探しているの」


「人、ですか?」


 そうだ、と思いつく。ちょうど話しかけてくれたし聞いてみたらいいかもしれない。


「そう、フィアナを探しているの。"私の妹"なんだけど、どこかで見てないかしら」


「え、妹?」


「ええ、"私の妹"なんだけど」


「は、はぁ……」


 妹であることを強調する。特に意味のないアピールかと思われるが、こうして広めておくのは重要だ。ただの自己満足だと言われればそうなんだけど。


「え、えっと、ねぇ、誰か見た?」


 駆け寄ってきた生徒達が伝聞しながら話している。誰か見ていればいいのだが、と思っていると一人の女生徒が答えてくれた。


「ちょっと遠くからだったんですけど、向こうに見える木の方向に歩いて行ったのを見たかもしれません。見間違いかもしれませんけど……」


「本当!? ありがとう、助かったわ!」


 まさかあっさりと一発目で情報が得られるとは思っていなかった。心からのお礼を込めて女生徒の手を握りお礼を言う。


「あ、い、いえ。お力になれたなら……」


 その生徒は突然の私の行動に困ったようにはにかんだ。しまった、また素を出してしまった。慌てて私は手を引っ込めて整える。


「じゃ、じゃあ行くわ。お昼の時間を邪魔してごめんなさい」


 今更遅いかもしれないが、とりあえずそれっぽく振る舞って別れを告げる。何か言いたそうにしていた気がするが、これ以上はボロが出そうだった。


 そんなわけで私は教えてくれた木の方へ向かう。途中途中でやはり目線が向けられている気がするが、一つ一つ反応する暇はない。


(変に注目されてるのも辛いものね)


 それが公爵家の力なのだろうか。確かに家柄が重要視される世界ではそれは大きな力なのかもしれない。


 そんなことを考えながら木の近くまで来ると、その陰に必死に探していた人物が座っているのが見えた。


(いたっ!!!)


 一瞬、どう声を掛ければいいかと考えたが、そのまま足は止まらなかった。悪いけど妹を前にして深慮している余裕はない。


「フィアナ!」


「っ!? ひ、ひゃっ、あ、せ、セリーネ様!?」


 突然、私が前に出てきたせいかフィアナは素っ頓狂な声を上げて慌てふためいた。やばい、思った以上に驚かれた。


「ど、どどど、どうしてここに?」


「いえ、どうせなら一緒にお昼を食べようかなって、探してたの」


「私を、ですか?」


「そうよ? 貴女以外に誰がいるの」


 当たり前のように答えて彼女に近くに腰を下ろす。ただ、やっぱりまだ他人のような距離感がある気がする。やっぱり義理という理由は大きいか、それと初対面の悪印象がまだ残っているのだろう。


「あー、その、ね。私も出来ればフィアナと仲良くしたいし、いきなりで驚いているとは思うんだけど」


「そ、そうですね。ちょっと、驚いてます……」


 ですよねー。とちょっと項垂れる。本当に何であんなに拗れてから出会ってしまったのだろうか。最初から私として会っていればきっと今頃は姉妹キャッキャウフフな関係になれていたはずなのにぃ……


「あー……そのね、フィアナが嫌だったら戻るから。別に嫌がらせしたくて近づいているわけじゃなくてね? ちょっと距離感がおかしいってのはわかってるんだけどね、えっと、その……なんというか」


 だから必死に弁解をする。これ以上誤解されてもっと関係が悪くなったら最悪だ。見た感じ無様だとは思うのだが、どうしようもなくワタワタとしながら説明する。どうにか好意が伝わってくれと願いながら。


 そう願った、その時だった。


「ふふっ」


 それは本当に小さな声で、笑い声には全く満たないクスリとした声だった。しかし、その声は私がずっと待ち望んでいた、欲しかった声だった。


「あっ、ごめんなさい……! その、凄い剣幕とお話の内容が何だか不釣り合いで、少しおかしくて……その」


 必死に妹ラブを伝えようとしたのだが、上手くは伝わっていなかったらしい、それでもいつも不安げな表情だったフィアナが私を見て、小さく微笑んでくれている。


「いえ、いいの。いつかわかってもらうから……!」


「えっ?」


 思わず感動しそうになったが、それを悟られないように喜びの感情を必死に抑え込みながら、話す。


「あ、ううん。こっちの話。それよりも一緒に昼食をとってもいいのかしら?」


 もう一度のその問いに、フィアナはゆっくりと頷いてくれた。


「セリーネ様がいいのであれば、どうぞ」


「あ、ありがとうっ!」


 ぱあっと心がポカポカと温かくなる。少しだけフィアナが心を開いてくれたのだろうか。そうであれば凄く嬉しい。


 そう思って、私は一息つこうとして……


「あっ」


 何も持っていない手ぶらなことに気が付いた。


(や、やっば! 探すのに夢中で何も買ってないじゃない! というか、そういえばお金とか持ってないじゃん!?)


 これはあまりにもバカすぎた。折角フィアナと少し関係が良くなったというのに……!


 そんな悲痛な思いを巡らせてどうしようか考えていた私だったが、その時スッと何かが差し出された。


「……フィアナ?」


「あ、あの、何も持っていないように見えて、その良かったら。ただのパンですけど……」


「……フィアナぁっ、ごめん、ごめんね。昼食を買い忘れるようなバカな姉でごめんねぇありがとうぅ」


 あまりにも情けなさすぎる。オヨヨと泣きながら施しを貰うように私はフィアナからパンを受け取った。なんて優しい妹なのだろう。


「絶対に百倍にしてこの恩は返すから……」


「いいですよ、そんな。私も一人で食べるよりは……楽しいですから」


 そう言って、微笑んだフィアナのその表情は私の脳裏にしっかりと焼き付いた。

ブックマークや評価、感想などありがとうございます!

明日の投稿は10時頃を予定しております!よろしくお願いします!

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