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10.シスコン悪役令嬢、学園に行く

(まさかゲーム内の学園に通うなんて、人生わからないものね……)


 昨日も来たリトルリア学園の門の前に私は立っていた。隣ではフィアナが何だか落ち着かない様子であたりを見回している。


「どうしたの?」


「い、いえ、まさか一緒に来て頂けるとは思ってなくて……」


 確かに、今まで冷たかった相手がいきなり一緒に登校すると言い出すなんて戸惑うに違いない。それにゲームではセリーネは一緒に登校するのを拒否するぐらいだから、つまりこの時点でもうゲームとしての歯車は狂っている。


(だからって、自重する気はないけどね!)


 正直なところ腕組みでもして一緒に行こうかと強く思っているぐらいだ。流石にいきなりそんなことを実行するつもりはないが。


(いつか絶対お姉ちゃんって呼んでもらって自主的に引っ付くいてくるぐらい姉ラブになってもらおう!)


 本当は今すぐにでもお姉ちゃんだとか、それこそあの日みたいにお姉様ともう一度そう呼んで欲しいのだが、何故かあれからフィアナは私を「セリーネ様」と呼ぶようになってしまっていた。

 それを訂正したいのだが、何せ私自身が「勝手に姉なんかにしないで頂戴」と言い放った過去があるので、流石に調子が良すぎかとそれをお願い出来ずにいた。


(何してるのよセリーネぇ……)


 自分で自分を恨みながらクルクルに巻かれた縦ロールを弄る。今日の私の髪型は、お嬢様のテンプレートのような見事すぎる縦ロールだ。アイカが朝の支度の時、鼻歌を歌いながら作ってくれた。意外な器用さに驚いたのは内緒だ。


 ちなみにフィアナはショートの金髪をサラリと流している、私とは別の意味でお嬢様のようだった。身長も私より小さいし、髪の色も一緒だから傍から見たら姉妹に見えるのではなかろうか!


 さて、そんな皮だけ完璧お嬢様な私だったが、先程からずっと数多の視線を感じている。そりゃ、公爵令嬢とその家に引き取られてやってきたフィアナがずっと門の前で隣り合って立っていれば注目されないはずもない。


「さ、行こう行こう!」


「は、はい……」


 私がそう言って歩き出すと、フィアナは一歩下がったように後ろからついてくる。それを見てすかさず私は彼女の横に並んだ。


「セリーネ様……?」


 フィアナは私が横に並んだのを見て申し訳なさそうにしていた。恐らく遠慮しているのか、その本心はわからないが私は努めて明るく話す。


「家族なんだから遠慮しないで。後ろから付いてくるんじゃ寂しいじゃない、ね?」


「え、あっ、すいません……」


 あれ、何だか逆にかしこまってしまったような気がする。ちょっとミスったかなとも思ったが、しかし、そうして横に並んで歩くことにも実は仕方のないこと理由があるのだ。


 それは──


(全然道がわからないんですけど!?)


 しょうがないじゃないか、だってゲームでは選択肢でどこに行くか選ぶだけで次のシーンでは勝手に移動するものだから、道を覚えるとかそもそもそういう話ではないのである。


 つまるところ、フィアナに道案内をして欲しいというも本音のひとつだ。ただ、だからといって道がわからないことを正直に告げるわけにもいかない。

 何故なら、今までずっと通ってたはずなのにと怪しまれるかもしれないし、何よりも「頼れるお姉ちゃん像」が崩れてしまうではないか!


 だから、さりげなーく中等部であるフィアナに半分付き添うことで最低限でも道を探っているのである。我ながらなんて策士! 問題は中等部と高等部が近いという私の想定があっていなければ失敗になる。


「さぁさぁ、ドンドン進むわよ!」


「は、はぁ……」


 横に並んでいるように見せかけて実は半歩だけわからないように遅らせている。きっとさぞ自然に並んで歩いているように見えることだろう、こうした小賢しい動きは得意なのだ。自慢ではないが。


 そんなこんなでたくさんある棟のうち、一つの場所にたどり着いた。そこには中等部というわかりやすい看板が立っており、さらに言えば初等部と高等部への案内板のような物も立っていた。


 ここまで来るまでもそれらしい建物がたくさんあったので、間違いなく一人だったら迷っていただろう。フィアナのおかげだ。


「あ、あの、私はこっちなので……」


「え、あ、そう。ここなのね」


 フィアナは中等部一年だ。残念なことに高等部の私は学園で彼女と一緒にいれる時間は多くない。出来ても昼休みとかそこら辺だろう。


「それじゃ、また後でね」


「あ、あとで……は、はい」


 何だかまだ煮え切らない返事だ。うーむ、まだ信頼が足りていないか。まあ好感度はマイナスからスタートしてるんだから、はっきりと拒絶されないだけましとしよう。


「お姉ちゃんへの道のりは遠いなぁ……」


 頭を悩ませながら高等部の階段をカツン、カツンと上っていく。途中途中ですれ違う生徒がわざわざ立ち止まって挨拶をしてくるのでそれを返していたが割とこれが疲れた。ここまで挨拶されるのはきっと私が公爵令嬢だからだろう。立場があるというのも大変だ。


 そんなことを考えていたら恐らく三年の教室がある三階についていた。しかし、ここでまたもや問題が発生する。


(クラス多いな!?)


 そう、私の目の先にはたくさんの教室があった。ドアの上には日本の学校と同じようにその教室の名前が書かれているが、どれがセリーネのクラスなのかさっぱりわからない。

 とりあえず変な目で見られていないということは、ここで階層はあっているはず。しかし、ここまでたくさんのクラスがあるとは思ってもいなかった。貴族が中心に通うといっても流石に多すぎではないだろうか。


「ど、どうしよう」


 ボソリと呟いて途方に暮れる。総当たりで入っていくわけにもいかないし、ちょっと困った。


 ええい、かくなる上は恥を捨てるか……私は一度深呼吸をすると、


「うっ」


 フラッと少しだけふらついて倒れそうになる。勿論、演技だ。わざとらしいとか言わないで。


「きゃあ、セリーネ様!? 大丈夫ですか!?」


 すると女生徒の一人が慌てて飛んできて支えてくれた。たぶん何だか騙しているようで良い気分ではないが、悪いことをするわけじゃないから許して欲しい。


「ごめんなさい……実はまだ少し体調が優れなくて……」


「む、無理しないでください。私なんかが支えて申し訳ないのですが……」


「いえ、そんなことないわ……ありがとう。申し訳ないけど、このまま教室の前までいいかしら?」


「わ、私なんかでよければっ!」


 助けに来てくれたのが真面目そうな子でよかった。というか、同学年の筈なのに敬語で接せられているのか。これが貴族社会か。

 そういえば攻略対象である王子の一人がセリーネと同じ学年という設定だったはずだ。公爵令嬢でこれなら王子はどんな最上級の扱いを受けているのだろうか、気になる。


 そんなことを考えていたら、一つの教室の前にいた。


「あの、着きました!」


「ありがとう。えっと、ごめんなさい名前は……」


「あ、えっと、ミリです。子爵家のトレース家の」


 反応的に、親睦がある相手ではなかったらしい。それなのに咄嗟に助けてくれるとは凄い良い子なのかもしれない。


「そう、ありがとうミリ。本当に助かったわ。いつか必ずお礼させてね」


「あ、ありがとうございますっ……!」


 割とマジな感謝を述べると、ミリは感激したように頭を下げて「それでは!」と早口に去っていってしまった。別に変な対応してないよね?


「さて、ミリちゃんのおかげでやっと着いた……」


 そして、漸く私は自分の通う教室に辿り着いたのであった。

ブックマークや評価、感想などありがとうございます!

遂に(?)セリーネが学園に通います。どうぞお楽しみ頂ければ嬉しいです!


次回の投稿は明日の10時を予定しております!よろしくお願いします!


また、誤字報告本当にありがとうございます……というより誤字脱字多くて本当にすみません……

出来るだけ誤字脱字しないよう見直しも頑張ります!

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