2.夢のお告げ
「なんかやけにリアルな夢をみたよ。」
茜に作ってもらった目玉焼きに塩コショウをかけながら、おれは言った。
「え、私もみた。なんか神様出てきたよ。」
茜は微笑みながら言う。
「それ、俺も全く同じ夢だわ多分!」
こんなに珍しいこともあるものなのかと思い、すこしテンションを上げて答える。
「なんか学校ごと異世界転移することになったから、準備をしといた方が得だとかなんとか。」
「そうそう、そんなこと言ってたな。自称神様さんは。」
「えっとたしか、寝る前に[イガネオ]って唱えろとも言ってたな。そうすれば異世界の説明してくれたり、資料もくれるって。」
「あ、そうそう。なぜかすごく鮮明におもいだせるよ。なんでだろ〜?」
「さあな、本物の神さまだからじゃないか?」
ちょっと冗談ぽく言ったものの、俺は、実は少し楽しみにしていた。
理由1。もしもこれが本当で、異世界に転移できるなら素直に嬉しい。さすがにあり得ないということは、まあ分かっている。
理由2。単なる偶然にせよ、全く同じ夢を、お互いに同時に見たという現象に興味がある。
理由3。仮になんの意味のない事であれ、信じてみた方が面白い。こっちにはなんのリスクも、コストもかからないのだから。
「そんなこと言って、絶対やってみるでしょ。今夜寝るとき。[イガネオ]って。」
クスクスと笑いながら茜は言った。
「なぜバレた。」俺は苦笑いした。スマホのメモ帳にさりげなく[イガネオ]とメモって、茜に見せる。
茜は楽しそうに笑った。俺たちは冗談や軽口を言うのが結構好きだ。わざわざメモ帳に記すほどの本気ぶりが少しウケたようだ。
それから、その日の学校、バイトもいつも通り退屈に終了した。ただ一つ、面白いことがあった。全く同じではないものの、なにかしら他の人たちもリアルな夢を見ていたらしいのだ。
しかし、そこまで鮮明には思い出さないという。なんとなく、リアルな夢だったなぁ、とだけ。
たしかに鮮明には思い出せ、、、、、ない!!
おかしい。他の人はともかく、俺は茜と夢についてあれだけ会話したのだ。思い出せないわけがない。それなのに、なぜか霧がかかったようにモヤモヤとして思い出せない。
この違和感はなんだ??
この不思議な現象を前にして、俺は、、、、、ワクワクした。