1.プロローグ
退屈。現実世界って、どうしてこんなにもつまらないのか。瞬間的に楽しいこと、例えばカラオケ、ゲームセンター、ボーリング、、、。そんなものは、その場の一瞬の楽しみにすぎない。
それが終わればまた、この意味の分からないストレス社会が待っている。
友達や家族、恋人と一緒なら、辛くても頑張れる??何を言ってるんだ、心の底から信用出来る人なんて、この世に1人しかいない。俺の幼馴染みの女の子。人間不信の俺にとって、その幼馴染以外の人はみんな敵に見えてしまう。
世の中、生き辛い。人間、向いてない。そう思えてしまう。漫画やアニメに出てくるようなファンタジーな世界に行けたらどれだけ楽しいだろうか。
幼馴染ーーー佐々木 茜ーーーと一緒に。
ーーーーーーーーーー
いつもと変わらない朝が来た。
「ゆーくん、起きて〜。朝だよ〜。」
ゆーくん、とは俺のこと。春日 勇が俺の本名。
可愛い声で起こしてくれているのは、俺がこの世でただ一人、心の底から信用している人。幼馴染の佐々木 茜である。
「・・・眠い。まだ大丈夫じゃね?」
「もー。私も眠いんだよ〜。私たち二人共、朝弱いんだからここで二度寝したら絶対遅刻だよ〜。」
そう、俺たちは高校二年生。
俺の母親は俺が一歳の時に死んだ。クズな父親は何も言わずに去っていった。きっと今頃遊び歩いているころだろう。幼馴染の茜は、両親を事故で亡くしている。
だからこのように、同棲する流れとなるのはある意味当然といえた。
お互いに、家族などという絆はとうに超え、そこには絶対的な信頼と愛情があった。毎日一緒のベッドで寝ることにも、なんの疑問も感じない。
羨ましいと思う人も多いだろう。たしかに、茜と2人でいるときだけは気が休まるし、楽しい。
だが、朝から夕方まで学校。その後は生活資金を稼ぐためのバイト。
ろくに遊ぶ時間も無いのだ。さらにいえば、幼い頃から自立した生活を送っているため、精神年齢が高いこともあり、周りのクラスメイトが幼く見えてしまい、話も合わない。
バイトでは周りに気を使ってばかりで疲れる。
そう、俺の、世の中に対する感想は[疲れる]に尽きる。
それは、茜も同じだった。よくも悪くも、茜と俺の思考回路はとても似ている。常に愛想良く八方美人な振る舞いをして、だれからも嫌われないようにしつつ、本音は、[あー、疲れた]これである。
だからこそ、茜とは波長が合うし、気楽にずっと一緒にいられる。俺も茜も、自分で言うのもアレだが、頭がキレる。クラスメイトたちには分からない込み入った話も、茜ならば理解してくれる。
そういう点でも、茜と一緒にいると楽しいし、信頼している。
ーーーーーーーーーー
前置きはこのくらいでいいだろう。
俺たちはこれから、とんでもないことに巻き込まれる。いや、そのとんでもないことは、俺たちにとっては最高の幸運であるのだが。