神族の謀
それは私が九歳の秋の終わり頃……、学校から帰ってきたらアリスちゃんが居た。
「ヤッホ~、 お帰り、待ってたわよ~ん」
「え?」
その変な格好上下赤と白のツートンカラーを着て体をクネクネさせる女性は自分の事を神様だと言い、厳正な抽選の結果私が選ばれたので知恵を授けに来た。と言った。
私は迷わず警察へ通報した。
翌日学校から帰ると連れて行かれたはずなのに何故か昨日の女性が玄関に居てー。
「お帰り~ん、もう昨日は大変だったんだからね~」
と、言って抱き着いて来たので私は思いっきり叫び声を上げた。
再び連れて行かれる女性を見送り家に戻り部屋に入るとー、連れて行かれたはずの女性が居た。
「て、手品? あなたマジシャン? テレビね! こんな可愛い私を驚かして笑い者にする気ね」
こんな共働きの一般家庭の子供を驚かして喜ぶなんて、最低!
「ち、違うわよ~ん、昨日も言ったけど君は~ん、知恵を与えられる五人の中の一人に選ばれたの~ん。そしてアタシは神族でぇアマノアリスノヒメ、アリスちゃんって呼んでね~ん。ウフ」
私はランドセルにぶら下げている警報機に手を掛ける。
「待ってー! お願いだから止めてぇ、マジで。それやられると大変なの~、記憶書き換えなくちゃなんないしー」
「記憶を書き換える?」
「そうよ~ん、アタシ得意じゃないのよ書き換えるのぉ。で~、あなたはセナちゃんで良かったかしら~ん?」
「え、ええそうよ。セナ・マーキュリーよ」
「よし! 今度は間違えなかったわ~。やったわ~ん、これで怒られない~ん。ヤッターヤッターヤッターワーン!」
女は目の前で変な踊りをする、やっぱりー、警報機の紐をグッと握る。
「あわわわわ! だから待ってぇ~、ごめんなさい、謝るから待って~!」
「真面目に話してくれますか?」
「うん、大丈夫よ~。真面目に話すわ!」
私は警報機から手を離す。
「ではそこに座って下さい、落ち着いて話しましょう」
ランドセルを勉強机の上に置いて私は椅子に座る。
「そ、そうね、あの~ん、座布団なんかー、はい無くても大丈夫よぉ。はい」
「正座! なに胡坐かいてんの? 何様?」
女はササッと正座をする。
「あ、あの~、一応神様なんですけどぉ」
「で、その変にキラキラした赤と白の服は何? どっかの民族衣装?」
ちょっと気になる事を聞いてみた。
「えっ、あ~、これはね~、女神の制服と言うかぁ元々は神に仕える女性が着ていた物なんだけどぉ、巫女服って言ってねあたしのお気に入りの一張羅なの~ん。ウフ」
「フーン、で、もう一度ちゃーんと真面目に答えてね、あなたは何者? それとその喋り方、と体をクネクネさせるの止めて下さい」
「あ、酷い、一生懸命キャラ作りしてきたのに……、でもこのままじゃあ又通報されちゃう。じ、じゃあまずアタシが神様だってこと証明するねぇ」
女は立ち上がり後ろを向くと何もない空間に人一人が入れるほどの円を書いた、すると円の内側が歪んで光り出した。
「どう? この向こうが霊界よ、セナちゃんは入れないけどね」
「なに? また手品なの、それであなたを神様だと信じろと?」
こんな手品で信じさせようなんて、子供だと思って舐めてもらっては困る。これでもご近所から確り者のセナちゃんと言われているのだ。
「うっ、だったらー」
女が私にの方へ手を伸ばしてきた! 本性を現したわねー、しまった警報装置がー。
「な、なに私どうしたの?」
私は宙に浮いていた、プカプカと……。私の右手を女が掴んでいる。こ、これも手品? 女が指差す方を見るとー、私だ! 私が机に倒れ掛かっている。あー、なんて間抜けな顔、美少女が台無し。
「どう? 信じてくれる? このまま霊界へ連れて行ってもいいのよ」
「わ、分かりました、戻して! 今すぐ、か、神様!」
「ノンノンノン」
「えっ」
女は、いいえ神様は私の目の前で人差し指を立てて左右に振ります。
「ア・リ・スちゃん、オケー?」
「お、お願いアリスちゃん! 元に戻してぇー」
「はーい、いくよー、よいしょっと」
「キャーーー」
アリスちゃんは片手で私をグルンと回すと、勢いよく私に投げつけた。
「うっ、ぎゃあぁぁぁ! ハァハァハァー、も、戻ったーの?」
私は跳ね起きて両手両足を確認した、透けてない。
「うん、ストラーーイク。さぁ、これで私を信じてくれる?」
「う、うん、……信じる、信じます」
「そんじゃあまずは、座布団とお茶かな?」
「はい……」
私は部屋を出て座布団とお茶を用意した。
「急に素直になったじゃない、ビックリしちゃった? ズズズ……少しヌルイわね」
「あ、ごめんなさい。淹れなおします」
「ああ、いいのいいの。なんか調子狂っちゃうわね。ま、いいから座って説明するから」
私は胡坐をかいている神様、アリスちゃんの前に正座してジッと見つめる。
「う、やりにくいわね。椅子に座ってもいいのよ?」
「いいえ、神様の前でとんでもない。私はここで」
「そ、そう。じゃー初めからんっん。おめでとうセナちゃん! あなたは選ばれました!!」
「はい、ありがとうございます」
「……何となくだけど、バカにしてない?」
「いえ、アリスちゃんをバカにするなんて、そんな罰当たりな事」
ただ警戒しているだけです。そして観察。
「だってさっきからずっと無表情じゃない?」
「気にしないで先に進んでください」
「う、うん、しゃ……んっん。貴女はこの世界で五人の幸運な人類です。貴女にはなんと! 知識が与えられます」
「知識?」
「そう! 物理学に数学、生物学にその他様々な知識を一つだけ飛び抜けた知識を与えましょう」
フッ、何かと思えば。
「で、その目的は? 私達に知識を与えて神様は何を望むの?」
「えっ、それ聞いちゃう。えつと、どうしようかな、えっと、ほら、貴女達は一致団結して大気圏を突破して他の星へと今、出て行こうとしてるじゃない?」
あー、最近テレビで騒いでる国際なんたらで人類を他の星へと移住させる計画あったっけ。
「それで?」
「それで私達神様からのプレゼント! って言うかご褒美みたいなものかなー」
「それで本当の目的は?」
「うん本当はね、このまま人類が外へ進出できるかどうかの試験なの」
「へー、そうなんだ」
「あっ! 今の無し、忘れてお願い。って言うか記憶を操作ー」
アリスの膝に飛び付く。
「そんな、酷いわ! 記憶を操作するなんて……、私達もうお友達でしょ?」
必殺、涙目で手を合わせ斜め下から見上げる術!
「うっ、で、でもまた上司に怒られー」
「大丈夫、心配しないで。私が知らないふりしてればいいの、お願い神様、いえアリスちゃん」
「う、うん、まぁそうだね、大丈夫だよね。うん」
チョロイ。
「もっと詳しく教えて。私、ロボット工学がいいなアリスちゃん」
私はお父さんの影響でと言うか、教育で今も小さいけどもっと小さい頃からロボットアニメばかり見せられてきた。
「ゼナ、お父さんはねぇ、本当は巨大ロボットのパイロットになりたかったんだ。だけどまだ技術的に
だった、だから僕は研究者になったんだ! だからゼナ、お前にお父さんが造った巨大ロボに乗って欲しい。やはりパイロットは少年や少女じゃないとね! 僕はもう研究所の所長もいいかなって思ってる」
とまあこんなことを何遍も聞かされた、私もチャッカリ洗脳されてしまい気付いたら男子としか話が合わず男子とばかり遊んでいた。
何か大切な物を失った気がするけど・・・・・・、まあいいか、お父さんと一緒に漫画見れるし。
「分かったわ、ロボットを作りたいのね? まーかして」
胸を張り、その胸をトンと叩くアリスちゃん。
私はアリスの前に正座し直して問いかける。
「で、具体的にどうするの? 知恵を授かった私はどうなるの?」
「うん、そう心配しないで。これをー」
アリスは懐からコレで殴ったら人を確実に殺せそうな分厚い本を取り出した。その本をドン、と私の前に置いて。(もう突っ込まない。だって神様なんだもん)
「この本の内容読んで全部覚えて貰うから」
「冗談でしょ?」
「うん、冗談だよ。読むてぇ所だけ」
「え?」
アリスは両手の人差し指をこめかみに当てて。
「記憶操作の要領で頭にインプットするのよ」
「・・・・・・頭、破裂しない?」
「たまーにするけど大丈夫よ、任せなさい!」
破裂するんかい!
「その自信はどこから来るの? アリスちゃん記憶操作が苦手だって・・・・・・」
「だ、大丈夫、インプットの方はちゃーんと練習してきたから」
「どんな練習してきたの?」
「マグロにイルカの記憶をインプット! みたいな?」
「・・・・・・結果は」
「もちろん上手くいったわよ、最初はうまく泳げなくて溺れたりしてたけど、最終的にはケケケケケ、って鳴きながら飛び跳ねてボール跳ね飛ばしていたから」
「マグロが、イルカになったの?」
「そうよ、だから任せなさ~い。あなたも立派なイルカにしてあげる。あ、違った、えーと何だっけ?」
ダメだ、コイッゼンゼン信用できない。
「この話、無かったことにー、キャ! 体がー、動かない」
「神様舐めてもらっちゃー困るわね、金縛りを掛けさしてもらったわ」
何? ちょっと、アリスちゃん目のが怖い。
「何をするの、止めて、解いて!」
「諦めて大人しく神様の恩寵を受けなさい」
「いや、来ないでー、あっ」
アリスちゃんが私の頭を両手で掴む。
「うりゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
ワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシ!
うーー、あれ? 気持ちいい、これってー頭皮マッサージ? あぁ、気持ちよすぎてなんだかボーッとする……。
「ハァハァ、ウム、終わったよ。ほら起きて、どんな感じ?」
「……ハッ、私、座ったまま寝てた? どんな感じって、何にも変わってないー」
アリスちゃんは私を見下したままムスッとして。
「そんなこしは無いでしょ、ほら、ロボットが人間の様に動きをするにはどうしたらいいかとか、色んな武器を搭載するにはとか、ね? あるでしょ? ね、ねっ!」
なんか少しづつ焦ってない? 肩を掴んでそんなに揺さられてもー、あっ!
「ロボ、ロボットが人間の様な動きをするには……、人とロボットの間を繋げる存在が必要である」
「あ、ほらほらほらほら!! やった、見事成功! アリスちゃん偉いっ!」
あれ? なんで私、こんな事を知ってるの? アリスちゃんがー。
「アリスちゃん、ねえ、アリスちゃん!」
飛び跳ねて喜んでいたアリスちゃんに呼びかけると。
「え、なに? お礼ならいいわよ、これも仕事だし。え、違うの?」
頭を横にブンブン振る私を見て私の前に座りなおすアリスちゃん。あれ? 髪の毛がー。
髪の毛を触ろうと少し俯いた私に、下から覗き込むように声を掛けてきた。
「どうしたのゼナちゃん。ヤッパ頭痛い?」
「あ、違うの髪の毛がー、じゃなくて、もう一度聞かせて、私に何をさせようとしてるの?」
私がそう言うとアリスちゃんは又スックと立ち上がり、両手を広げ。
「それは勿論あなた達人類へのー」
「立前は良いんで、本当のことを言って下さい」
横の回転も加えようとしたところでピタリと止まるアリスちゃん。
「あ・・・・・・、えっとね、ホントに黙っててよ、絶対だからね」
「あーはいはい、守りますから」
今度は私の前に正座して。
「コホン、・・・・・・ホントはね、試験なの。あなた達が宇宙へ出られるかどうかの」
「もっと詳しく、具体的に」
私が睨むとアリスちゃんはおずおずと話し始めた。
「う、……うん。あなた達は一応纏まって外に出ようとしているわね、だけど私達神はまだ不安なの、宇宙でもあなた達は争いを始めるのではないかって」
「そんなの神様だからどうにかできるんじゃ無いの?」
「神様だからって万能じゃ無いわ! あなた達が他の会社ー、じゃなかった他の星の神様の所に戦争を吹っ掛けたりしたら大変な事になるのよ。だからそんなことが無いように試験をするの」
他の星の神様? 神様の世界も複雑そうね。
「ふ、ふーん、んでその試験の内容は?」
「うっ、そこまで話すの? かんべんしてくれないかなぁ」
冷や汗をかいてるみたいだけど今更遅い、観念して貰おう。
「あに言ってんの、チャッチャと話す、ほら」
私は床をパンパンと叩いて催促する。
「ヒッ、な、なんか扱い方酷くなってない? もうここまで話したら仕方無いけど・・・・・・。まあいいわ、実はゼナちゃんの他に五人ほどオーバーテクノロジーを授けることになってるの、でね、それぞれに誘惑する人が現れるわ」
「誘惑する人!? 私にも現れるの?」
この私を誘惑、かぁ・・・・・・。ロリコンじゃん。
「ええ勿論、それもその人好みの異性となって」
「い、異性って男の人? それも私好み」
「そう、ゼナちゃんはどんな男性が好みなの?」
いきなり聞かれてもねー…あ、そうだ!
「それはー、私の言う事を黙って聞いてくれる、絶対に刃向かったりしない犬のような忠誠心漲る人」
「え、犬?」
「うん、私イヌ派なの。だけどお父さんもお母さんも猫派で、犬飼ってくれないの、だからー」
「あはは、ペットじゃ無いんだから・・・・・・」
「それで、その誘惑してくる人はどんな誘惑をしてくるの?」
ま、心構えは必要だろうね。
「うん、それはね。世界征服よ」
「せ、世界征服?」
ハツ、笑ってしまう。
「あ、笑ったわね。でもこれは上手くやれば可能なのよ、それぐらい凄いテクノロジーなんだから」
「でもこんな小学生誘惑して世界征服に持って行けるの?」
「そこはそれ神様だから、万能じゃ無くてもそれぐらいはね」
いい樣に神様使ってるなぁ。でもー。
「そっかぁ、なるほどねぇ。でもいきなり破綻しそうねその計画」
「そうなのよねぇ、ゼナちゃんにぜぇーんぶ、話しちゃったから。ねえゼナちゃんやっぱり記憶をー」
あ、ヤバ。
「待ってアリスちゃん、もしかしたら私がこの件に関わらなければいいんじゃない?」
「関わらないって、世界大戦になるかも知れないのよ」
「大丈夫、一時的に地球上から待避すればいいのよ。この町ごと」
「へ? どう言う事?」
ぷっ、神様でも面白い顔できるじゃない。
アリスちゃんはどうやら大変なミスをしたみたいね。
「つまり、巨大戦艦みたいな物造って宇宙へ待避するの」
「だ、ダメよ! それやっちゃあ。あなた達が外に出て良いかの試験なんだからあ!」
やっぱりそうか、だったら。
「大丈夫よ、私達が待避するのは平行宇宙、違う次元の地球だから」
「違う次元? 平行宇宙? ゼナちゃん何でーあっ!」
「気付いた? アリスちゃん、アリスちゃんは元々天才だった私を大天才にしたのよ。いいえ、もうアリスちゃんと同じ神、と言っていいわ」
私は高揚して立ち上がり椅子にドカッと座る、その時机の上に置いてある鏡に見慣れない物が映っている事に気付いた。
「んーー、ん!! 何コレ、私の自慢の黒髪がー、真っ赤に!」
「あー、それ? ゴメンねー私がやるとどうしても髪の毛がゆでだ蟹みたいに真っ赤になるのよ。そんなことよりゼナちゃん、あなたもしかしてー」
「ゴメンですむかー! もう、こんなツンツン頭にしてぇ。……ま、まあいいわ、後でセットと染め直しするから。と言う事でー、・・・・・・フッフッフ、そうよ、アリスちゃんの変な操作で私は科学と言う魔法を手に入れたのっ! あっはっはっはー」
私は立ち上がり高笑いをした。うっ、どうしたんだろ? これでは厨二病も真っ青のマアッド、サアァイェェン、シスト! だ、でも何故か止まらない。あ、あれ~。
「や、やっぱり、ああもう! アタシは又やらかしちゃったー。昔名前を叫ぶだけで色んな事ができちゃう漫画があったけど・・・・・・、科法って言ってたかなぁ」
「あ、それ良いわね、それ貰い! 科学の魔法で科法ね。私それ出来ちゃうかも」
私は目を伏せて左手で顔を覆い、アリスちゃんを指差す。ホントに何をー。
「ああ、ゼナちゃんが壊れてく。お願いゼナちゃん、止めて。アタシまた怒られるの、怒られるのイヤなの!」
「じゃあアリスちゃん、一緒に行こうよ」
またアリスちゃんの前にスチャッ! と正座してアリスちゃんの両手を握る。
「いー、一緒に?」
「そう、アリスちゃんとなら私一人でやるより、もっとすごい事が出来ると思うの」
「もっとすごい事? いいわねそれ」
やったー! アリスちゃん、神様が一緒なら怖い物はない!。
「でしょ! アリスちゃんならー」
「……でも無理よ。ゼナちゃんは私の正体薄々感じてるはずよ、だからあなたとは一緒に行けない」
「っー、そんな、たとえアリスちゃんが高次元生命体でもー」
「あら、まだ……。フッ、やっぱりサヨナラするわ。その力あんまり公に使わないでね。ゼナちゃんとは暫く会わない方がいいみたい」
うそ! アリスちゃんの体が半透明に透けて来た! このまま消えるつもり!?
「待ってアリスちゃん! 暫くって、逃げないでぇ」
「大丈夫、直ぐ会えるわ。ゼナちゃんが老衰で死んじゃう時にでも」
「なにそれ! 話になんないわ、ああつ、消えないで、アリスちゃん」
「ゴメンネ、もう一人のアタシ……」
何それ、どう言う事!? あー消えてしまうー。
「そんなぁー、……消えちゃった。ーフッ、私から逃げられると思ったのかしら、絶対に見つけて見せる。そして、そしてー!」




