メイド大好き!
あれから約百年、軍は解体され私達戦闘用のマジンはそれぞれ好きな職へ付くようにと最後の命令を受けた。
私は私の発展型で猛禽類に似た飛行体系に変わることが出来る、マリと小説を造り始めた。
マリは確り者の妹、と言う設定だった。私と同じで姉と慕う操縦者を探していたところ、行き倒れになっていた私を拾ってくれた。
それ以来マリは私を姉さんと呼び、慕ってくれている。きっと操縦士の代わりなのだろう……。
マリと私は一軒家を改築してもらい住むことにした、タマも相変わらず私の操縦席に居座ってる。
そのタマが……。
「ミーナお腹空いたニャ、今日のおやつは鰹節がいいニャ」
あれから猫又になり実体化してしまった、何でぇ?
あ、そうそうマリは絵が上手なので挿絵を書いてもらっているの。
「姉さん、また床屋のケイさんがメイドを蹴ったみたいだよ。穴だらけにされて修理工場に担ぎ込まれたんですって」
「またぁ? 今月三回目だよね」
私はパソコンに接続した端子を抜き取り、マリの方を見る。
メイド、そう、謎の生物兵器はメイドの格好をしていた。
「だいたいケイも良く床屋なんかでお金を稼げるわね」
「フフ、そうですね」
人類が居なくなった町には今でも、四人一組になったメイドたちが人を探してウロウロしている。
メイドたちが世界を埋め尽くして百年が過ぎた。
その間人類は初めの内、南極や北極高い山へと逃れ細々と暮らしていた。
それはメイドたちが寒さに弱く、赤い髪は気温が下がるにつれ青くなっていき著しく戦闘力を下げてしまうからなの。と言うか人を攻撃しなくなるらしい。
しかしあれから百年、人は極寒の中で暮らしていけるはずもなく、人は絶滅したと思われている。
だけど、もしかするとまだ生き残っている人が居るかも、知れない。いえ私は信じている人類はそんなやわじゃない。
望みの一つはメイド達だ、あの赤い髪はマイナス二十度以下になると赤から真っ青な髪に変わる。するとなぜか攻撃しない所か人を守ると言うの、まだ噂の段階だけど……。
結局、私達マジンはー、人類を見捨てた……の。
「マリ、テレビ点けて」
「あ、今日は久々の人類特集だったね」
羽が邪魔にならない様に特注で作ってもらった椅子を回して、部屋の壁に貼り付けているテレビを見る。
私の後ろにいるマリんが片手をテレビに向けると、モニターがどこか見覚えのある山を映し出した。
「やっぱり便利だねー、リモコン」
「姉さんも埋め込んでもらえばー、あっ、ーごめんなさい」
「いいのよ」
できれば色々と改造するんだけど……、私の機体は改造も新しい装備も全部弾いてしまうから。
「なんだ、ミーナはマリがうらやましいのかニャ?」
タマは私のお腹からいつも突っ込みを入れて来る。
「そ、そんな事ないしー。それよりテレビが始まるわ、タイトルはー、いつもと変わんないわね……」
テレビのタイトルはー、実録! 極寒の山頂で見た!! 人類最後の生き残り!? だ。
少女と思われる人影が目撃された山へ、タレントが高感度カメラを搭載して人を探す番組。
その番組は以前南極や北極で目撃された人影を長々と放送して評論家がワイワイやった後、やっと今回のスクープ映像の説明に入った。
「ま、またどうせ防寒服を着たメイドの見間違いだろうけど……」
映像が切り替わりタレントマジン多分あれは農業用だろう、雪山様に足がキャタピラに変わっている。そのキャタピラでどんどん雪山を登っている。そしてカメラの端に山頂近くに人影がー、あ、髪の毛が青い。
「あー、メイドの格好をしてますね」
やっぱりか、やはり人はー、ち、ちょっと待って。
「マリ、メイドの隣にまだ一人居る、赤い髪」
「赤い髪ならメイド間違いなしですよ、姉さん」
いや、いや! あの燃えるような赤い髪はー、ユーヤ!
「ニャ! あの髪の色はユーヤニャ」
約百年前、第三群がメイド達と初めて戦闘した際、人類とマジンはぼろ負けした。
メイド達は性能的に私達を上回っていた、それだけではなくメイド達には反則とも言える能力があった。
後にメインから詳しく説明を受けたんだけど、何でそこまで知っているのか不思議なくらい。んで、それもそれはずこのメイド達は商業国家フェゾーンの研究者がメインの協力の元作った物だった。
「いや~、面白い発想をする子が居てね、つい協力しちゃった。でもこんな事になるなんて、あたしも思わなかったよぉ」
どこかで聞いたことがある様な甲高いどすの利いた女性の声が私のコアに響いた。後ろから思いっきりドロップキックしてやりたかったが、当時私は動けなかった。どこから話しているのかも分からなかったし。
話を元に戻して、その研究者は「私はメイドが好きだ! メイド服が好きだ! メイドが発する声が好きだ! メイドから発生する体液が好きだ! メイドが使う物全てが好きだ! メイドに殺されるなら本望だ!!」と言い放つ変態科学者が開発したのがメイド型生物兵器だった。
研究者はあまりにもメイド達が高性能だったので、封印(独り占め)しようとしたが、二つの大国は既に研究者の元にスパイを送り込んでいた。
結局研究者はメイドに守られ疾走するが、研究者はカギを残して行った。
それは「ご主人様」と「お嬢様」と名付けれた一組の人造人間だった、研究者はこれと一緒に書置きを残したの。
二人を起こしてはならない、もし起こして二人が会うことになったら人類は滅亡するだろう。
と、予言めいたことをのこして。
二つの大国は話し合い一人ずつ保有することになったが、フェゾーンから輸送する段階になって双方とも特殊部隊を送り込んじゃって。その目的はもう片方のカギ人造人間をを奪うため。
双方の作戦は成功して、脱出ポイントを双方ともフェゾーンの中央にある湖にしていたのよ、水上機が迎えに来る予定だったんだって。
そうなるとー、鉢合わせした特殊部隊同士の戦闘が始まるわよね。双方とも不意の遭遇戦だったので混乱してしまって、せっかく奪って運んでいたコンテナに格納した冬眠カプセルに銃弾が命中してしまちゃったの。
そのまま壊れてしまったら良かったのに誤作動を起こしてしまい、混乱の中双方のカギ人造人間が起動して自己保存の為逃げ出してしまったの。もう最悪。
カギを見失った隊長たちは、敵の手に渡してなるものか! と人造人間を破壊することを命じたみたい。
何も分からず必死で逃げまわったご主人様とお嬢様は、裸のまま偶然湖の畔で出会ってしまう。何も知らずに見たらロマンチックなんだけど。
無言で見つめ合う二人。だがそこに戦闘員が現れ銃を向ける。
咄嗟に抱き合った二人の体は、まるでコーヒーとクリームの様に溶け合ってしまう。
二人もビックリしたが、もっとびっくりした戦闘員は銃を乱射、その内の数発が命中してそのまま湖に落ちてしまった。
メインが言うには、この時人を完全に敵だと認識したのではないかって。
その報告を受けた隊長は速やかに撤退の指示を出したが、もう遅かった。
湖が光り輝いた、その光の中から総数数百万のメイド達がワラワラと生まれでた。
「いや~凄かったよー、上から見てたんだけどまるで蟻の群れが水たまりから湧き出て来るみたいだったね」 とメイン談。
二つの特殊部隊はあっという間にメイドに呑み込まれて全滅してしまったの。
そしてメイド達はご主人様とお嬢様を守りながら人類を殲滅していく。
回想終わり。
「へーー、今度は本物かなぁ。ねえお姉ちゃん、お姉ちゃん?」
私は思わず変な声で鳴きたくなるぐらい震えていた、震えが止まらない! あれは、あれは間違いなくユーヤ、……だがあれから既に百年以上、人が姿を変えずにそのまま生きていける訳が無い。
「そうニャ、もしあれがユーヤなら幽霊か妖怪ニャ」
あ、タマも妖怪化したからユーヤもー。
「姉さん?」
「ハッ、ご、ごめんなさい。マリ、この番組のデータ―を取って」
「は、はい」
マリはモニターに手をかざす。
「……はい、終りました。詳細はこれに。やっぱり……行くの? お姉ちゃん」
「行く」
マリから地図と目撃された時間と場所、移動経路等が書かれたプリントを受け取る。
キール山脈か、近くの飛行場から輸送機で三時間半てぇとこか。
直ぐに飛び立って向かいたいけど今は町の上空を飛行するのは禁止されてる。もし飛んだらメイド達の恰好の標的になる。
私とマリは急いで支度をして空港へ向かう。歩き回るとお尻が痒くなるけど仕方がない、マリは大丈夫かな。
街に出るとウジャウジャとメイド達が歩き回っているので、蹴ったり踏んだりしない様に歩いて行く。
「お姉ちゃん、最近メイドの数が少し減って来たと思いませんか?」
「そう? あ、気を付けて、角から五六組出て来るよ」
血の様に少し暗い真っな赤髪を靡かせ、それぞれの武器を携えてメイド達は確りと信号を守って進んでいく。
彼女たちはいつも四人一組で行動しているの。たぶん四人姉妹なのだろうと思う。だって皆同じく美人さんなの。
メインからの情報によるとそれぞれに名前と得意な武器があるらしい。
まずは長女と思われるアン、アンは二十代後半でメガネが似合う知的美人。腰まであるストレートのロングヘアー、対戦車ライフルを携えて山の裏側でも跳弾を使い確実に仕留める。
近接戦用にリボルバー拳銃も装備している。
四姉妹のリーダーらしく、鋭い目をしている。が、細いとは言い難い。同じメイドを見る目は通常より大きい程だ。
次女クララは肩に届かない短めのウルフカットで二十代前半、姉妹一の長身で男性と見まごう程の肩幅だが、出るとこは出ている。得意の武器は多種多様の手榴弾、その筋肉を生かし五十キロ離れていても確実に目標にぶち当てる。対艦ミサイル並みの破壊力を誇る。
近接戦用にトンファーを腰に刺している。
基本的に無表情だが笑えば豪快に笑うのだろう、そんな顔をしている。彼女も鋭い目をすることはあるが基本的に目は大きい方だろう。
三女ペリーヌは十代後半でポニーテールで、漫画だったらヒロインか主人公タイプ。しかも四姉妹の中で一番スタイルが良い、 メイド服の上からでも分かる大変ケシカラン体系をしている。刀を使い高層ビルでも輪切りにしてしまう。予備として背中に剣を仕込んでいる。
彼女は……なんと言うか、色んな物(者)を切る時でも目が細くならない。いや多少は細くなっているのだろうが、常に大きな目で周囲を警戒している。
末っ子のフローネは三つ編みのお下げで十代前半、顔にソバカスを付けたロリっ子。P90サブマシンガンを抱え彼女の放つ弾丸は戦艦の装甲も容易く貫く。太ももに短剣を忍ばせている。
太ももの短剣を取るためか一人だけミニスカート。
こいつは反則だ! 何でか目が顔の半分をしめている。実際近くで見ると気持ち悪いが、何故か慣れてくると……可愛く見える。不思議。
結局四姉妹は皆目が異常に大きく、かつ虹色に光りお星様までキラキラと光っている。
なんて、なんて不公平な……。
ほとんどメイドはみんな通常人形の様に表情が無い、アイコンタクトのみだ。ただその赤い髪に青い髪がマダラに混ざった髪をしたメイドがたまに居て、マダラどうしで喋っているのを見たことがある。
ただもう一つメイド達には特殊能力がある。数が爆発的に増えたのもこの能力があったせいなのよね。
私が動けるようになった五十年前にはある程度人を殲滅し終わっていた、それでもメイド達は人を探してあちこちを歩き回っている。
今は南極や北極、高い山等を重点的に特殊な防寒着を着て探し回っている様だ。
メイド達はこちらから攻撃しない限り攻撃してこない。ただあまりにも大勢いるのと三頭身や二頭身のメイドまでいるので油断すると蹴ったり踏んだりしてしまう。
すると手痛い攻撃を受けてしまうが、私達はコアが無事なら何度でも再生可能なの。結構お金がかかるけどね。
空港に到着後飛行プランを提出する、そして管制塔から許可が出るまで待機する。
私は飛べるだけけど、後継機のマリは飛行形態に変形して高速で飛べる。私を牽引してもそこらの飛行機より早いんじゃないかな。
「お姉ちゃん、準備はいい?」
「ええ、やっちゃって」
私の指から延びるワイヤーをマリは自分の腰に接続した。
翼を広げ青い空へ舞い上がると、マリは飛行形態へ変形し私を引っ張りスピードを上げる。
ワオ、やっぱりマリは早い。
マリに引かれながら私はあの時の事を思い出す。メインから召集を掛けられた時の事を。




