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復活の時  作者: 第三群二十一隊
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ユーヤの機体

今日はお休みの日なのにユーヤは町にも行かず私の格納庫に来ている。

 ああ、何でだろう。ユーヤを見ているだけでー、なんかこうー、変な気分になってしまう。


「ね、ねえユーヤ、お姉さんの操縦席にす、座ってみる?」


 ユーヤはパァッと花の様な笑顔になりー。


「えっ、いいのミーナ姉さん! 今まだ座学だけでマジンに乗せてくれないんだぁ」


 うっ、わ~~、本当に何でこんなに可愛いのぉ。第一印象は子猫の様に小さくて、実際に燃えているのでは? と思うような赤い髪をした女の子かと思ったけど。

 それが良くサーチしたら男の子! ううっ、もしかしたら私、興奮、してる?


「さっ、私の手に乗って」


 私は椅子に座っているので少し屈んで右手を両足の間へ、操縦席はそんなに高くない、操縦席は私の下腹だ。


「はい、ミーナ姉さん。お願いします!」


 ユーヤが手の上に乗ったので姿勢を元に戻して、操縦席の装甲を開ける。……なんだか恥ずかしい。


「あ、あんまりジロジロ見ないでね?」


「? わぁ、バイストン型はホント凄いなぁ。機械と生体が融合しているー、あれ!?」


「どどうしたの?!」


 操縦席のカメラを起動させる。


「猫が……、とても立派な白猫が座席にー、寝てる」


「あー、タマね。そう、ユーヤは見えるのね」


 タマは目を開け立ちゆっくりと起き上がるとジッとユーヤを見つめた。


「うっ、体がー、動かない。ね、姉さん、この猫はー」


「ここに居る全ての猫たちのお母さん。数十年前に死んでるけどね、時々帰って来るのよ。私の座席がお気に入りだったの」


 タマは大きく欠伸をすると座席から下りて消えてしまった。同時にユーヤが動けるようになったみたい。


「カハッ、き、消えた、そうすると猫のー幽霊?」


「そうよ、ユーヤは気に入られたみたいね、タマが座席を譲ったのだから。さあ、入って」


「う、うん。あ、はい」


 ユーヤが私の、私の操縦席に座る!


「か、格納庫はそんなに広くないけどー、操縦してみる?」


「はい! 操縦したいです、でもー」


「でも?」


「なんか埃っぽいです。猫の毛も沢山ー、あ、蜘蛛の巣」


「あ、あー、ホコリね。そうね、なかなか掃除できなくてー。いっぺん出て、エアーブローするから」


 それからユーヤは休みのたびにこの格納庫にやって来て、友人や教官の事、訓練での失敗や相談をした。それと猫たちのご飯を取りに食堂に忍び込んだり、軍港へ魚を取りに行った。

 嬉しい、楽しい! 以前とは大違いだ。

 別に隠している訳ではないけど、数百年前の機体が稼働状態で存在していると、騒がれたくないのでゴミ置き場になっている格納庫のことは秘密にしてもらった。

 ユーヤ自身の事も話してくれた、ユーヤの家は元大貴族だったのだけど数百年前何かをやらかして、爵位を剥奪されたらしい。なので今では平民と変わらない生活をしている。

 だけどユーヤの父親はユーヤを操縦士にして活躍させ、再び貴族に返り咲こうとしているらしい。

 ユーヤはマジンを研究をする学者になりたかった、と言っていたのだけど……。


 そろそろ私の秘密を話しても良い頃だろう。


 食堂にユーヤと忍び込む前のある日、ユーヤが来てこんな事を言って来た。


「ミーナ、この基地の七不思議って知ってる?」


「えっ、し、知らないわね。七不思議って学校みたいね」


「うん、まあこの基地はマジンの教育隊も兼ねているから学校と言えなくもないんだけど……」


「その七不思議がどうしたの?」


 ユーヤは下を向き言いにくそうにしてるけど、そこがまた可愛い♡


「……七不思議の一つに徘徊するハラペコ少女ってえのがあってー」


「な、なにそれ」


「うん、先輩から聞いた話なんだけど、昔冬の寒い時期に一人の男が入隊検査に来たんだけど男は娘を連れていたんだって。その男は娘に門の外で待つように言ってこの基地に入ったんだ、男は元々体が弱くて直ぐに不合格になって追い返されるだろうと思ってた。だけど合格しちゃってその男は飛行機で別の基地に連れていたれたんだって」


「えっ、じゃあ女の子は?」


「雪が降り出したのに女の子は門兵が帰る様に言っても動こうとはしなかった、見かねた当直士官が中に無理やり入れたんだけど何時の間にか抜け出してー、少女は門の外で翌朝冷たくなっていたんだって」


「……悲しい話ね」


「それから時折夜の基地内で少女が父親を探して徘徊しているんだって」


「ちょっと待って、じゃあなんでハラペコなんて名前が付くの?」


「うん、少女が目撃された翌朝は必ず食料倉庫から食料が無くなっているんだって。だからー」


「あ! あー、そうなの、そうなことがあるんだー」


「棒読みだね、ミーナなにか知ってるの? だったら教えてほしいんだ、昨日見回り当番だったんだけどー、僕見たんだ! 見ただけじゃなく話しかけられてー、もう怖くて怖くてー。お願いミーナ何とかしてほしいんだ!」


「あーゴメンユーヤ、それ私だわ」


「へっ?」


 ああーん、ポカーンとする顔も可愛い! 適当に話しを造ったら信じてくれるかな。


「実は私の機体に使われている巨大な虫はどうやら何処かの山の主、だったみたいなの」


「山の主?」


「そうよ、そしてその主は変身が得意だったみたいなの。私はその能力を数百年かけて自分の物にしたわ!」


 私はグッ、と拳を造り斜め上を見上げる。


「えっ、えっ? 理解が追い付かないよっ。結局ミーナ姉さんは何ができるの?」


「うん、女の子に変身できるのよ。昨日も猫達のご飯を貰おうといつもの様に食料庫に忍び込んだんだけど、そこで偶然ユーヤに会ったから声をかけたの。けど怖がらせたみたいでー、ゴメンネ」


「ええーっ! 女の子になれるって本当だったんだ。そうかーねえ、もう一度女の子になってみてよ」


 うっ、それってデートのお誘い? そうかぁ、女の子になればー。


「いいわ、女の子になっちゃう! でも私目にコンプレックスがあって・・・・・・」


「えっ、こん…ふれ? よく分かんないけど大丈夫、あの時は暗くてよく見えなかったけど絶対可愛いよ!」


「う、うーん。よし、女の子になっちゃうよっ」


 私は女の子の姿に変身する。

私の足元から光が噴き出してくる、変身する時はいつもこうだ。そしてその光が私の機体全体に広がると縮小が始まる、どんな仕組みなのか分からないが物の数十秒でユーヤと変わらないか少し小さくなったところで光がポン! と弾けて美少女が登場する。キツネ目でも美少女なの!


「わ、わー! 本当だあの時の緑の髪の子だ。細い目も似合ってる、全然気にならないよ」


「ありがとうユーヤ。フフッ、どーお。体の凹凸は少なめだけど子供にしては良い体していると思わない?」


 ユーヤの前でクネクネと体を動かしてみる。あー、やっぱりお年頃♡ 恥ずかしそう。


「え? う、うん、そうだね。う、うー、ねえミーナ!」


「ん!? な、なに?」


 ユーヤは逸らしていた目をギュッと閉じて大声を上げたのでビックリした。


「ててててて、手を、つ、つな、つないー、つな、つないでー、も」


「いいわよ」


 私はユーヤの右手を両手でキュッ、と握る。わぁ、まだ女の子みたいな手、スベスベしてるぅ。思わず頬刷りしちゃう!


「ヒッ-----!!!」


 もう、たぶん耳の裏まで真っ赤にしてるねー、くぅーーーっ。私を殺す気か?


「ウフ、手を繋ぐだけでいいの? もっと、もーと先の事でも大丈夫よ」


 ユーヤの手元から見上げて誘惑しちゃう! 私悪乗りしてるかな? でもいいよね、こんなに可愛いユーヤが悪いんだ。 


「も、もっと先って? な、なに?」


「そーれーはー、ウフフ、のフー、フー」


 私は鼻息も荒くユーヤの顔に私の顔を近づける。


「……なんだか怖いよ。ミーナ」


「大丈夫! 全てお姉さん任せなさい。そう、キ、スとか、ねっ」


「わっ! わーーっ、ま、待ってミーナ! 早い、早いよそんな、きき、キスなんてー!」


「あっ、ちょっと、暴れないで。そんなに手をー」


 ガキッ!


「「あ!」」


「あーあ、そんなに暴れるから又右肩の関節が取れちゃったじゃない。どうもはずれ癖が付いちゃってるのよねーって、どうしたのユーヤ? あっ」


 ユーヤは私の右腕を持ったまま気絶していた。


「あちゃー、トラウマにならなきゃいいけど……」

 それから時々ユーヤが当直の時に猫たちのご飯確保を手伝ってくれた。




 そして月日は流て一年後、少し逞しくなったしまったユーヤが練習過程を終了する時が来た。とうとう別れの時だ、ううっ。

 普通は二年だけど戦況の悪化で一年に短縮されてしまった。

 制服姿のユーヤが私の前に立つ、私を真っ直ぐ見上げている。ユーヤ、ユーヤァ……私は。


「ユーヤ、……お別れー」


「ミーナ! 僕と契約してほしい」


 ユーヤが私を見上げて真剣な顔で私を見詰めている。


「えっ、私と契約?」


「そう、僕の専用機になってほしいんだ! ミーナ、君しかいないんだ」


 マジで? と言いそうになった。


「な、なぜそんな、私は旧式も旧式で武器も剣しかないのよ。今のマジンは飛べないまでも色んな飛び道具を扱えるじゃない、それに平坦な地上なら高速で走り回ることができるし」


「新型は、ボトム型は僕には合わないよ。射撃は下手だし、それにボトム型はすぐ壊れるんだ」


「あ、ユーヤは扱いが荒いのよ。頑丈が唯一の取り柄な私のせいかもしれないけど」


「そうなんだ、ミーナなら絶対に壊れないのにボトムはー」


「だけど私は数百年戦闘に参加してないしー」


 現在世界は二つの大国に分かれ、間に中小の国を挟んて数十年戦争を続けている。

 私達マジンは「メイン」と呼ばれる謎の組織に所属していて、各国にコアと制御系を貸し出されている。機体はそれぞれの国が製造していた。

 私が貸し出されていた国はとっくに無くなってるけど。


「僕はミーナとなら何処までも行ける、それこそ宇宙の果てまでも!」


 ユーヤあなたはー。


「うー、分かったわ! 仕方ないわね、このままユーヤを戦場には出せないわ。私が守ってあげる」


「やったー! ありがとうミーナ」


「で、ユーヤは私の性格をどんな風に変えるつもり?」


 操縦者は契約を結ぶとき私達マジンの性格を決める事になっているの。何百年ぶりだろう。


「うん、僕はそのままでいいよ。ミーナはそのままが一番……さ」


「こ、このままでいいの? このままで……」


「じゃ、ここから出て神殿へ行こう。ミーナ」


「え、神殿? なんで?」


「なんでって、契約するのに神殿に行かなきゃ。もしかして神前で契約するの初めてなの?」


 なんてことでしょう、契約なんて私の記憶では書類の賛成と操縦者の血を一滴操作盤に垂らすだけだったのにー。神殿なんて心の準備がー。


「ち、ちょっと待って、この機体ではゴミの山蹴散らさないと出れないから変身してからでいい?」


「う、うん! できればー、女の子のー」


 ユーヤが顔を赤くして俯く、そっかそっか、ふむふむ。だが断る! やはり基地内へ入るのなら三等兵が無難だろう。似たような者も歩いてるし。

 私の変身は女の子になるだけでは無いのだ、その辺をウロウロしてる雑用ロボットにもなれるのだ。

 私が変身するとユーヤは脱力して膝を着いてしまった、ユーヤは結局ロボット三等兵と神殿に入るのであった。


「ユーヤ、今度ちゃんと指輪とドレスを揃えてくれたらー。ねっ」

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