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復活の時  作者: 第三群二十一隊
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英雄誕生

「もう! そんなことまで忘れてしまったの、いい? アタシ達神様は存在しないの、その存在しないアタシが目立ちゃ困るからあなた達がこのブラックホールを潰すの! 分かる、あんだすたん」


 またこちらに向き直って説明して下さいましたがー、わたくし達がこれを潰すなんて無理ですわ!


「そう、無理ですわ!」


「大丈夫よ、ミーナは潰すふりだけすればいいわ」


「ふり、ですの?」


「うん、まずこいつを叩きだすのと一緒にミーナを地上へ送ります。その後その背中の剣で真っ二つに切って、一刀両断! てな感じで」


「で、でくるわけなかー、そがんこつ!」


「あら、ミーナは九州の人? じやなくて、だーかーら、ふり、だけでいいって言ってるじゃない!」


 自称神様アマノアリスノヒメは丸い穴の中から身を乗り出して、斜め下から見上げる様に言い放ちましたわ。


「そ、そうでしたわね。ーー九州? なんか懐かしい響き……」


「もー、しょうが無いなー、特別に私が乗ってあげる」


「えっ?」


 神様、アリスちゃんはそう言うと穴ごとフッ、と消えましたの。


「へー、意外とシンプルなのね」


 急にわたくしのお腹の中から声がしましたわ。


「あら、このだらしなく伸びてる男はパイロット?」


 操縦席のカメラに切り替えると、そこに身長20センチの妖精が居ましたの。

 モコモコのピンクの髪に水色のレオタード姿。


「あ、その男は操縦士のジョウですわ。それにしても先ほどと同じ神様、アリスちゃんですの? 姿がー」


「あ、この格好? 雰囲気よ雰囲気。分かる人が分かればいいから」


 何の雰囲気なのでしょう、分かりませんわ。

 アリスちゃんはトンボの様な羽で操縦席内を飛び回りましたの、するとジョウが目を覚ましましたわ。


「う、うーん……ハツ、ここは? 俺たち助かったのか?」


「あ、おはようジョウ。初めまして、神様のアリスちゃんだよ」


 ジョウの目の前でペコリ、と頭を下げるアリスちゃん。


「わ、わーーっ! ななな、何だこいつは」


「ジョウが呼び出した神様ですの」


「えっ、俺が呼び出した? 神様?」


 ジョウはマジマジとアリスちゃんを見ましたの、そしたら顔がーまったく、だらしないですわ。


「い、色っぽいじゃねーか。流石神様だぜ」


 アリスちゃんも引き気味ですわ。


「あ、ありがとね。じゃこれから私の言う通にしてね」


「なんか分かんねえけど、おう、任せな!」


 巨大なブラックホールが突然研究所の上空に現れましたの、注目していたお偉いさんやマスコミはビックリしたでしょうね。

 そこへ私達が光の玉に包まれて、ド派手に登場! ですわ。何処からかカッコイイ音楽も流れてますの。


「いっけーージョウ、ハイパーオーラ切りだーー!」


 アリスちゃんが又訳の分からない事を叫びましたの。

 するとジョウはノリノリでわたくしの背中にある剣を引き抜き、ブラックホールに切りかかりましたの。普通の大きな剣だったのに、この時は光り輝き、さながら光の剣でしたわ。それが伸びる伸びる、地球を切ってしまうかと思いましたわ。


「たぁりやぁーーーー!」


 ジョウが叫び、わたくしは思いっきり剣を上段から振りぬきましたの。すると巨大なブラックホールは真っ二つになって消えましたの、何の手ごたえもありませんでしたわ。


「ふーーーっ、なんとかうまく消すことができたわ。ひと段落ね」


 アリスちゃんは何をやったのか、小さな頭をクリクリと回してますの。


「……凄いですわ、あの巨大なブラックホールをー」


「すげぇぜアリスちゃん! これで俺たち英雄だ、世界の女は俺の物だ!」


「フフッ、あんまり調子に乗らないことね」


「お、おう」


アリスちゃんはシュタッ、と片手を軽く上げて。


「じゃ、アタシそろそろ帰るから」


「えっ、もう帰るのかよ。一緒にパレードに出ようぜ」


「いいえ、これ以上はー、発見されちゃうから。そうそう、ジョウはこれから英雄として扱われるけどミーナ、あなたはそんなのは無いのよ。だからこれはアタシからのプレゼント」


 アリスちゃんはそう言うと、わたくしの操縦パネルに触れましたの。ブン! と音がして何かがズレて直ぐに元に戻りましたの。


「! なにをしましたの? アリスちゃん」


 アリスちゃんはパネルに腰を掛け、足を組むと。


「ウフ、あなたが今まで装備した機体を、念じる事で再び装備することが出来るようにしたのよ」


「ええっ! ホントですの?」


 わたくしが生まれて数千年、色んな機体を装備してきましたわ。衰退しきったこの時代に繁栄を極めた頃の機体になれるのですのね?。


「じゃ、ジョウも頑張ってねー。いつか又会えるかもー……」


「おう、またな、アリスちゃん」


「あ、待ってですの。念じるってどうすればー、あー、消えちゃっいましたわ……」



「とー、言う訳なの」


「へー、スゴイなぁ。神様って本当に居るんだ、でも太古のマジンになれるなんて僕想像も出来ないや」


 ユーヤは半信半疑みたいな顔してる、まあ仕方ないか。


「それがねー、アリスちゃんは大変なーって、ユーヤ、猫たちに何をしました?」


「え、いやー、僕猫に好かれる体質みたいでぇー。それより、どうして今はバイストン型なんですか? 文献では太古のマジンは今では考えられない程の性能があったとありますが」


 ユーヤの周りに三十匹ほど集まって、もはや猫饅頭状態だ。暑くないのかな?


「そ、そうね、続きを話しましょう。その後ジョウは勇者とか英雄と持て囃されて、一躍ヒーローとなったんだけどー、私は……」



「なんですって! ジョウがキョウコに後ろから刺された!? あれほど女遊びは限度を弁えなさい、って言ってましたのに……」


 愚かですこと、可哀そうなぐらい。まあこれでヒーロー騒ぎは治まることでしょう。

 わたくしは暫くジョウのためにー、え? 死でませんの? そ、それはそれとして、わたくしの機体の変化ですわ! アリスちゃんがちゃんと教えてくれないから、わたくしまだ機体を変化させていませんの。


 わたくしの記憶にある一番高性能な機体……、それは白い悪魔と呼ばれ恐れられたー、念じてーんー! どうだーーー!

 わたくしの機体が白く輝きましたの! やりましたわ、だけどー。機体がみるみる小さくなって人と変わらなくなりましたの。

 何これ、太い胴体に細い手足、片手には旧式なライフル。ロボットなのは間違いないですわ、でもーロボット三等兵? いきなり頭にその言葉が浮かびましたの。なぜこんな弱そうなのにー、もう一度ですわ。

 だったら次は伝説の巨人と恐れられた赤いボディのー、念じて念じてぇー。

 ……真っ赤な丸いボディに銀色の蛇腹の手足、根性だけはありそうですわ。でも燃料のガソリンが無くなって動けなくなりましたの。

 わたくし負けませんわ! もう一度ですの。

 ジェット機にも変形できる機体で、歌姫と呼ばれる人間を乗せた事のあるー、念じてーーー!

三度わたくしの機体は輝きましたのー、……やっぱり変ですわ。

 ありえないですわ。なんで緑色の長い髪が特徴的な少女になってしまうの? 


「も、モー〇? また名前がー、人間みたいだけどーあ、右腕が取れちゃった。ロボットみたい、でもこれでは戦闘ができませんわ。わたくしは戦闘用ですのに。だけど女の子なのよね……か、鏡どこか無いかしら」


 結局鏡は見つからず、仕方なく入口のガラス窓に映して見ましたの、そしたらー。


「こ、これは、キツネ目! 何で? どうして? 絶対おかしいわ、わたくしビックリして目を見開いたはずなのに、殆ど線ですわ。それにこの流れは大きなおめめキラキラの美少女のはず」

 わたくしの目には呪いか何か掛かっているのでしょうか? そのままだと落ち込むので元の昆虫型のロボットに戻りましたの。

やっぱり変ですわ、わたくしはこんなロボットに換装された事は一度もありませんもの。

 きっとこれはあの神様、アリスちゃんが失敗してますの。


 そうこうしている内に人類の技術が少しずつ進み、機体を換装する時が来ましたの。やっと人類は活発に動く様になりましたわ、これからどんどん科学技術が進んでいくことでしょう。

 だけど工場に送られて制御系とコアを取り外す段階になって、異変が起こりましたの。

 工場長が言うには、わたくしのコアの周りにエネルギーシールドみたいな物が張られていて、コアを取り出すことができないそうですの。

 わたくしだけ新しい機体に換装できませんでしたの! 絶対アリスちゃんのせいですわ。



「ーーとぉ、これが今から二百年、いいえ五百年前だったかしら、まあー、そんな出来事だったの」


「あ、えーと、大変だったんですね。できれば……、その変身見せてもらえませんか?」


「あら、信じられない?」


「い、いえ、信じてないわけではー」


「いいのよ、でもごめんなさい。昨日変身を解いたばかりなの、だからあと一週間使えないわ」


「時間制限があるんですか?」


「ええ、合計で七十二時間変身できるけど変身を解いたら一週間変身ができないの。面倒よね」


「じゃあ一週間後……、ミーナさんは変身して何をしてるんですか?」


「あー、うん、基地の食堂に侵入して猫たちのご飯もらったり、隣の軍港から海に入って魚を取ったりー、この辺一帯軍港だから魚影が濃いのよ」


「へー、では僕はこれで戻ります。また来てもいいですか?」


 ユーヤは纏わり付いてくる猫たちをうまく避けて、入って来た壁の穴の前まで行くとペコリと頭を下げた。


「ええ、勿論! 待ってるわ」


「ありがとうございます。それじゃ。こら、付いて来ちゃダメだろ、背中に乗るなよー」


 ユーヤはそう言うと格納庫から出て行った、纏わり付く沢山の猫を引き連れて。

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