男子小学生が初恋の先生と一緒に異世界へ召喚されたようです。
この世界は基本的に島国である。
地図を広げると和の国を中心に右から右回りに亜の国、伊の国、宇の国、江の国、御の国となり和の国を取り巻いている。
言わないで、今では自分でも変な設定だと思ってる。パクりも入ってるし、ただあの頃は斬新でいけてる設定だと思ってたのよ。
それで舞台は西洋じゃ無くて国の名前でも分かるように日本的なの、和の国を将軍が治めていて他の国は大名ってえ感じかな。そしてそこには魑魅魍魎、妖怪変化が居て国々を侵略しているの。
百年ほど前殆どの国を妖怪に侵略された事があり、その時偶然異世界から召喚された少女が大変な異能を発揮して瞬く間に妖怪達を江の国の一角に押し込んでしまった。
そして百年後、力を取り戻した妖怪達が再び侵略を開始した。
慌てた将軍は異世界より又少女を召喚することを陰陽師達に命じたが、偶然召喚されたためどうやって召喚したのか分からなかった。将軍から催促されるなか色々やったがどれも失敗した。
しかしヤケクソになって適当に描いた護法星からなんと百人以上の異世界人が出て来てしまった。出て来たのは殆どが高校生若しくは成人男性と女性で当然ながら色々なチートを身に着けていた。
その中でただ一人主人公の牧瀬真治だけが小学生だった。
多少もめたが数日後召喚者達は能力に合わせた数名程度の仲間を作り、将軍からは装備とお目付役の陰陽師と僧侶が付けられて妖怪退治へと送られた。
だが、妖怪達は以前とは比べものにならないぐらい強くなっていて、最初の一ヶ月で戦闘は素人の真面目な召喚者達は半分以上が死んでしまった。
結果色々な理由を付けて妖怪と戦わない者と、有力なチート持ちのだけが生き残っていた。
さて、主人公の牧瀬真治だが、彼は元々人見知りで大人しかった。このままではイカンと真治の親は自分も通っている剣道の道場へまだ小さな真治を通わせた。
真治は剣道が合っていたのかメキメキと腕を上げて、小学校の高学年になると各地の小学生の大会で上位を占めるようになっていた、だが性格的な物は中々変わらなかった。
そしてある日、真治の学校に女性教諭が転任してきた。
彼女は桜井桃子という先生で真治のクラスの担任となった、そして真治は初めての恋に落ちた。初恋プラス一目惚れである。
この思いをどうやって伝えようか、と悩んだ末真治は次の大会に先生に来て貰って、そこでもし優勝したら先生に告白しようダメだったら諦めようと決めた。
そして当日、なんと優勝してしまう。
優勝メダルを持ち、着替えないまま先生を探しまくる真治。道路の向こう側に先生の姿を見つけ駆け寄る真治、先生も真治の姿を見て微笑み手を振る。
真治の頭の中は最早「告白」の文字しか無かった。
が、左右も確認しないで道路に飛び出した真治にトラックが迫る。真治を助けようと先生が手を伸ばすが間に合わず、二人は抱き合ったまま一緒にトラックに跳ね飛ばされるー、寸前にかき消えた。
二人はそのたまま真っ暗な場所に居て何かに翻弄されるように、グルグル回ったり上下左右に揺さぶられていた。
そして明かりが見えた、と思った瞬間に二人は離れてしまい別々の所へ落ちていった。
気付くと大勢の人達と一緒に広いお寺の庭みたいなところに居た。
ーと言う設定で、・・・・・・お雪さんが居て鬼が巣くう洞窟に入ってるてぇ事はー、精華の家のことやお香の盗みこと等のイベントが済んでる、てぇ事でぇーあれ? ここで雪女は全力を出して真治達を逃がして自分は溶けてしまうはずだったのに、私達のせいでお話が変わっちゃった!
「ミーナ、ミーナァ」
そんな、私が作った小説なのに私達が現れた事でお話が変わるなんて。
「ミーナ、ミーナったら!」
もう、さっきからうるさいなぁ。だれ? ミーナさーん呼んでますよー。あ、ミーナは私か、そうだった。
「起きろミーナ、起きるんだ!」
こ、この声はー。
「ユーヤ!!」
飛び起きると目の前に懐かしい顔があった、思わず抱き付いてしまう。
「ミーナ、苦しいのだ」
「ユーヤ? ・・・・・・あ、ごめんクミだったんだね」
クミを解放して周りを見ると何時の間に洞窟を出たのだろう森の中、大きな木の下に私は寝かされていた。周りが明るい、何時ごろなのかな?
「ミーナ様、ご気分はいかがですか?」
アンさんが私の横に跪く、他のメイド達はバラバラに周囲を警戒している。真治君達はユウコと何か話している、時々ユウコの笑い声が聞こえて来る。いつの間に仲良くなったの。
「ありがとうアンさん、もう大丈夫です。私を運んでくれたんですね、重かったでしょう」
「え、ええ、見た目と違うので驚きました」
どう言う訳か私の重さはバイストン型の時と変わらない、これでも空を飛ぶので軽く作られている方だけど。
「ミーナ、クミも心配したのだぁ」
そう言ってクミはポフッ、と抱き付いてきたので頭をなでながら。
「ごめんごめん、ありがとねクミ、・・・・・・ユーヤも」
「ん?」
「それでこれからどうなさいますか、ミーナ様」
「それはー」
「あ~、ミーナ~、起きたんだ~」
ユウコが真治達をつれて来た。
「ミーナさん、大丈夫ですか? 急に倒れたんで心配しました」
あー真治君こっちに来て一年位か、すっかり大人びちゃって、でもしょうが無いよね色々あったもんねぇ。
「ミーナさん?」
「あ、いえ、何でも無いんです。はい、済みませんでした」
ついしみじみと考えてしまった。
「いえ、ミーナさん達の事ははユウコさんからだいたい聞きました。大変でしたね」
ユウコから!?
「ちょっとユウコ、変なこと言ってないでしょうね?」
「え、え~~と~~」
ユウコはいきなり目を泳がせる。
「なんでもこちらのメイド姉妹は元は悪鬼で人々を殺しまくっていたと、そこで勇者ユウコさんと付き人のミーナさんとクミちゃんでメイド姉妹を半殺しにして改心させ、その後奴隷にしたそうじゃないですか」
「ユー、ウコーー、あんたー」
「ゆ、ユウコちょっとお花摘みに行ってきます~」
「待ちなさい」
私はガシッ、とユウコの肩を掴む。
「そしてそれを祝福しに現れた神様がドジ子で、訳も分からず違う世界へ送り込まれたそうですね」
む、後半はそんなもんだけどね、でもカギ開けたのは私だし、もうそう言う事にしておこう。
「あのね真治君、後半はだいたいそんなもんだけど前半の悪鬼とか奴隷は違うから」
「えっ!?」
私は当たり障りが無いようにユウコが説明したことを訂正した。
「そうですか、ロボットに人造人間ですか、そちらの世界も大変なんですね」
真治君にはロボットで意味がつうじるんだけどね。
「そうだね、僕は未だに信じられないよ、大きなカラクリ人形が戦い動き回ってメイドさん達が持つ鉄砲が活躍する世界なんて。式神の類いじゃないよね?」
精華さんにはあまり信じて貰えないかな。
「こっちにも火縄銃があるけどアンさんが持つてるライフル? とは全然違うよね、今度見せて貰ってもいい?」
おつと、お香さんはライフルに興味津々だ。
「ちょっと、その前にちゃんとお礼するのが先でしょ? あの時アタシはもう最後の力でアンタ達を逃がすしかない、と思ってたんだから」
そうだ! あの場面はー。
「お雪さんの言う通だね、宿に帰ったらご馳走させてほしいんだけど大丈夫かな?」
精華さんが私とクミの手を取ってクイッと引き寄せた、二人で精華さんの懐に飛び込む形になった。
「あっ、これはー、デカイ」
「わっ、柔らかいのだ」
「フッ、すまない、いつもはさらしを巻いているのだけど先ほどので解けてしまっていてね。だけと二人を見てるとこうせずにはー、ウッ」
お香さんが持ってた杖で精華さんの後頭部を叩いたようだ。精華さんは頭を抑えて蹲ってしまった。
「また精華の悪い癖が出ただよ、真治、何とかしてくれんね」
「いや、何とかしてって言われてもー」
「つっー、痛いじゃないか! 叩くこと無いだろ」
見てると飽きない、良いパーティーだね。でもそろそろー。
「ではー疲れているところすみませんが、この世界ことを説明して頂けませんか?」
私は知ってるけどー、確認しないとね。
「あ、はい、ではこの近くの町に宿を取っているので、そこの食堂でご飯を食べながらで、どうでしょう?」
と、言う事で私達は真治達が宿を取っている町までやってきた。
おおっ、江戸時代の宿場町ってえ感じだ。
「ごはん、ごはんー! なのだぁー!」
「わ~い、わ~い、食べるぞ食べちゃうぞ~」
「クミー、そんなに先に行かないで、ユウコも止まれ!」
私達はゾロゾロと人通りの少ない道を私達は歩いた。やはり服装が珍しいらしく町行く人々から注目されている。
「大丈夫ですミーナ様、クミお嬢様は私達がお守りしてますから」
クミの後ろにピッタリとフローネが付き従っている。それにペリーヌが居ない、どうやら先行して町中を警戒しているらしい。
「う、うん、いざという時はお願いしますねアンさん」
「お任せを」
そして真治達が泊まっているという宿屋の前に着いた、二階建ての大きなお宿だ。
「ここです、全部和食ですけどここのご飯美味しいんですよ」
宿屋に入ると部屋まで持ってきてくれるタイプかと思ったが一階が食堂らしい。四角い六人掛けのテーブルが五個ほど並んでいる。今はまだ夕食時ではないので、きっとパーティなんだろう侍二人と僧侶が一人それに町娘みたいな和服姿のメガネをかけた女性が驚いた顔で口をパクパクさせながらこっちを見ている。
みんな傷だらけでボロボロだ。
「よかった、斉藤さん佐藤さん無事だったんですね。それで高原さんはー」
斉藤さんに佐藤さん? あ、そうだ藤藤コンビ! 後半時々一緒に行動させてたっけ。軽装の鎧を着けてるのが斉藤健吾さんで、町娘の方が佐藤玲子さんだったかな。
斉藤さんは錬成のチート持ちで空間から武器を作り出すことができる。とは言っても小さな手裏剣なら数多く出せるが刀や槍などは数に制限がある。それに一日たつと霧のように消えてしまう。
佐藤さんの方はいわゆるサイコキネシス、念動力って言うよね。軽自動車ぐらいなら楽に動かせる。
斉藤さんが作った手裏剣を佐藤さんが飛ばして妖怪を攻撃している。
あ、肝心の真治君のチートだけど彼は身体型で、つまり早さと力。早さはまるで加速装置、力は二トントラックを持ち上げられぐらいかな。でも、これも時間制限があって五時間ごとに休憩を取らないと力が無くなるの。回復時間は10分の時もあるし一日たっても回復しない時もある。
正直主人公だからもう一つぐらいチートを付けたかったんだけど、思い付かなくて・・・・・・。
「真治くーーーん!」
佐藤さんが凄い勢いで走ってきて真治君に抱き付いた。真治君は受け止めきれずに入り口の柱に背中を打ち付けてしまう。
「ウッ、ちょ、佐藤さん痛いです。お爺さんは、高原爺さんは無事ですか?」
「ごめんなさい、でも真治君が悪いんですよグスン。ええ、命には別状無いみたいです」
ふと気付くと背の高い斉藤さんが無言で真治君を見下ろしていた。
「・・・・・・」
「大丈夫です、そんなに謝らないで下さい」
えっ、謝ってるの? あ、斉藤さんは無口キャラだった。
「入り口で立ち話もなんですからテーブルに着きましょう。紹介したい人達が居ますから」
「あら、そうね、この人達は新しく召喚されたーわっ! バニーガールが居る」
「あはは~、ど~も~」
ユウコが入ってくると席に着いてた残りの二人も驚いて椅子を蹴って立ち上がる。妖怪と間違われてるのかも。
「・・・・・・!! う、うつく……しい」
うわ、斉藤さん顔真っ赤。って言うか今喋った!
「さ、佐藤殿、その者達はー」
僧侶姿なのに腕回りが私の胴回り以上な筋骨男が声を上げた。
「あ、大丈夫ですよ、この人達は洞窟で僕らを助けてくれた人たちです。座って座って」
「そ、そうでしたか、失礼いたしました」
僧侶の横で単槍を構えていた青年は軽い男らしく、槍を置くと前髪をかき上げながら。
「ほーら、僕が言ったとーりでしょ? こいつらはそう簡単には死なないってぇ」
「なに言ってるかなぁ、さっきまでグジグジ泣いてたくせに」
「ちょ、姉御ばらさないでくださいよ」
「誰が姉御じゃ!」
「ハハハ、さあ、皆さんに紹介しますので座って下さい。何か注文しましょう」
真治君が注文しようとすると。
「肉! 肉が食べたいのだ」
「そうですね~、お肉~、いいですね~」
私とクミ、ユウコは席に着いたがメイド達はクミの後ろに並ぶ。何時の間にかペリーヌも帰って来てる。
「アンさん座りましょう、ここはお屋敷ではないのですから」
「いえ、主人と同じテーブルに座る事はできません。私達はあくまでメイドですから」
「座るのだ、命令なのだ、一緒に食べるのだ!」
「クミ様! ……分かりました。皆さんお許しが出ました。ですが隣のテーブルに座りましょう」
ふとクミを見ると笑顔で泣いていた、涙がポタポタとテーブルに落ちる。
「お、お嬢様! どうなされたのですか!?」
「お嬢! 何か悪い物でも食ったか?」
「クミ様! このハンカチをお使い下さい」
「何処か痛いの? ここ? クミちゃん」
メイド達がアタフタしてる。
「グジ、まったく、なのだ、うー、山の上に隠れてた時もそうだったのだ・・・・・・。クミが言わないとご飯も食べないのだ」
そうか、クミは青髪のメイド達と一緒に暮らしてたんだよね。
そして双方自己紹介の後この世界を説明してもらっていた。
「そうなんだ~、真治君は初恋の先生を探してるんだ~」
「いや! あの、そんな、・・・・・・はい」
えっ、真治君は初恋のこと話してないのにユウコは見抜いてる! 更に真治君は認めちゃってる。ユウコは追い打ちをかける様に-。
「ねえ~、先生のどこが好きなの~」
「うっ、それはー」
「ユウコ、今そんな話ししてる場合じゃー」
「あ、脚、かな・・・・・・」
「「えっ!?」」
「先生はー透き通るような白くて、綺麗で、しなやかな脚なんです! ムフーー!」
あ、あれ? 真治君の設定おかしくなってる?
真治君の言動に少し引いてるとー、異変が起こった。私の体にー。