表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復活の時  作者: 第三群二十一隊
16/21

異世界

 暗い・・・・・・、どこだろう真っ暗だ。私は冷たい岩の上に寝そべっていた。


「ハッ、クミ、マリ、ユウコ、居る?」


 起き上がり両目のライトを点灯させる。これやるとけっこう眩しいんだけど見えないよりは幾分ましなの。

 周りを見渡すとそこは私が元の大きさに戻ってもじゅうぶん移動できる大きさの洞窟だった。


「ううん、それはクミの缶詰なのだー、返すのだームニャムニャ」

「ええ~、これはユッコのあんパンですよ~ムニャムニャ」


 クミとユウコは抱き合って眠っていた。この二人は夢の中で何をやってるのだろう。 


「クミ、ユウコ起きろ」

「ミーナ様」

「おわあっ!」


 いきなり後ろからアンさんに声をかけられ飛び上がってしまった。


「アンさんビックリさせないでよー」

「申し訳ございません」

「う~ん、あ~おはようございます~。はわわわ」


 ユウコが大きなあくびをしながら起きてきた。クミはー、まだ寝てる。


「あれ? アンさんだけですか? 他のメイドさん達はー」

「周辺の偵察に出ております。そろそろ帰って来ると思います」

「あ、どうも済みません」


 流石に対応が早い。それにひきかえこちらはマリが居ないとー。


「クミ、クミったら、起きなさい」

「あーん、あと・・・・・・。グウ」

「こら、ギャグが思い付かなかったからって寝たふりしちゃダメでしょ」

「ミーナ様、戻ったようです」


 偵察に行っていた三人のメイドが音も無く帰って来た。


「アン姉、この先で数人の見たことのねえ奴らが争っているぜ」

「片方は人間の様でしたが、片方は異形の者でした」

「あのねあのね、角が生えててね赤や青や黄色の信号機みたいな色してるの」


 ペリーヌやフローネ、クララが矢継ぎ早に報告する。


「アンさんどうしましよう。戦闘中に近づくのは危険でしょうか?」

「ええそうですね、でも状況が全く分かりませんので……、てっとり早くどちらかに加勢して私達が今置かれている状況を確認することが優先されると考えます」


 おおっ、流石メイドの長女でリーダー、頼りになる。


「じゃ~、行きましょ~か~。クミちゃんは私がおぶって行きますよ~」

「あ、ユウコお願い。ほらクミ」

「のだ~?」


 まだフラフラしているクミをユウコのー。


「いや、クミ様は俺が背負うぜ」

「あっ」


 クララがクミを奪う様に持ち上げて、そのまま背中に乗せた。


「広い背中なのだ~」

「ミーナ様、これからはクミお嬢様は我々が守りますのでご安心下さい」


 アンさんが誰にも譲らない感じで宣言した、あ、そう言えばクミを主人とするとか言ってたような。


「……そう、じゃ……しばらくお願いします」

「はい、ご安心下さい」

「おう! 任せな」

「お守りします」

「ついでに一緒に遊んじゃうよー!」


 うん、ここはー、任せよう。さて、洞窟の先へ進もう。


「あ~、向こうに明かりが見えます~、出口でしょうかね~」


 ユウコか光を見つけて指さす。


「いえ、あの光は洞窟に自生しているヒカリゴケだと思います」

「へ~、ペリーヌちゃんは物知りなんですね~」


 メイド達は暗闇の中私の前を警戒しながら進むことができた、やっぱり周りが見えてるみたい。凄いな。


「あそこはヒカリゴケが生えていて広い空洞になっているんだぜ、ドンパチと言うかチャンバラはそこでやってんだ」


 チャンバラ? そう言えば金属がぶつかる音が聞こえてきた。



「ぐあぁぁぁぁっ」


 短い槍を持って戦っていた鬼が、槍ごと切られて破れた紙切れとなって地面に落ちる。


「クッ、済まない今ので使役している鬼は最後だ」


 頭に烏帽子をかぶった陰陽師姿の男、いや服装の上からでも分かる体の線は女である事を強烈に主張している。

 しかしその服はボロボロで所々に血が滲んでいた。


「下がってて精華さん、・・・・・・こい」


 これまたボロボロで小柄の侍がーって、子供? 小学五六年生位の男の子が半分に折れてしまっている刀をニタニタと笑っている鬼へと向ける。


「や、やらせないよ、真治はこのお雪様の物なんだからねぇ!」


 長い黒髪を振り乱して座り込んだまま、あちこち焦げた白い着物を着た女が鬼に向かって吠える。

 良く見たらこの人周りに冷気みたいな白い煙を纏ってる、雪女みたい。


 鬼は全て2メートル越えの大男で総勢二十人前後、刀や棍棒で武装していた。

 更に上半身裸でご丁寧に皆トラのシマシマパンツを着けている。先頭の一際大きな鬼はトラのマントを背負っていた。


「吠えるなや、この裏切りもんが。だいたい何考えてんのや話し合いにも出てこんで嫌がらせみたいに毎回毎回変な奴ら送り込んでぇ! 子供やからって、しまいにゃ怒るぞこらぁ!」


「何を言っている、お前達が生け贄などを望むからー」


「そいつぁ仕方ねえんだわ陰陽師の嬢ちゃん。わい等は女が生まれへんから人間を貰わなきゃ子孫が作れんのや、それに橋を作ったり道を切り開いたり地震や火災からも守ってるんやないかぁ」


「嬢ちゃん? それはさて置き橋や道を作っただと? 何時の話しだ、そんなのおとぎ話でしか聞いたことが無いぞ」


「そりゃあ暫く旅行にいっとったからなぁ。せやけどこれ以上邪魔するんやったら、容赦しまへんでぇ」


「クッ」

「真治クン」


 精華と呼ばれた陰陽師の後ろに、いつの間にそこに居たのか白い頭巾をかぶった尼姿の小柄な女性が顔を出した。


「お香さん、どうでした?」

「ダメです、この奥は行き止まりです。通れません」


「へっ、どないする? 降参するなら命は助けてやってもええけども、女はわい等と一緒に来て貰うでぇ」



「ミーナ様、全員排除しますか?」

「イヤイヤ、待って彼等から情報を聞き出さなきゃでしょ」

「ミーナ様、あの方たちの言葉がお分かりになるのですか?」


 えっ? そう言えばー、何で分かるのだろう。

 今私達が居るのは彼等が退治している所から右側に50メートル程離れ、少し上の所に開いている脇道だ。そこから様子をうかがっている。


「うん、なぜだかわかんないけどね。ここはピンチになっている方を助けて恩を売りましょう。だけどもう片方にも傷を付けないで引いて貰うようにしましょう、後々面倒になるかもです。できますか?」

「今のうちに全滅させといた方がいいと思いますが・・・・・・、そういう事ならー、分かりました」


 アンさんは背中に担いでいた(何時の間に)大きな対物ライフルを岩の上に固定する。



「女……か、ではここで降参すれば侍の真治と陰陽師の私は見逃してくれる。と言う事かな?」


「まてまて、まてぇい! 見逃すんはそこの侍だけや」


「何を言っているんだい、僕は男だよ?」


「そっちこそ何言ってんねん! そんな胸のデカイ男が何処におるんや!」


「こ、これはー、単なるでき物で最近大きくなったなーと」


「あほかっ! じゃあお前ついとるんかっ!?」


「父上が言うには小さい頃病気にかかって取れてしまったとー」


「……お前の父ちゃんちょっとここへ連れてこい。ああ、もうええわ。とにかくお前は女やからここに残るんや」


「まだそんなことを、いいだろう僕が男だと証明しよう。僕は女の子が大好きなんだ、それも少女や幼女が、そう、離れてても居場所が分かるぐらい。そこに居るんでしょ? 出ておいで」


 陰陽師の恰好をした女の人が、こちらへ呼びかけて来た。あれ? 私、陰陽師知ってるの?


「一発かまします、耳をふさいで下さい」


 えっ、待ってー。


 ズ、ドオォオォォォォォォン!

 パッ、カアァァァァァァン!


 もの凄い音が洞窟内に響き渡り、アンさんが放った弾丸は鬼達の横にあった大岩を粉砕した。

 鬼が数名破片に当たって蹲ってる。他の人も耳を塞いで身を縮めている。


「な、なんや、何が起きたんやぁ。大丈夫かお前らぁ」

「あっ、あそこ、なに者やあいつら」


 騒ぐ鬼達を見下して岩の上にに立つアンさんは鬼達に向かい。


「引きなさい! 引かぬなら次に粉々になるのはあなた達です」


「女や・・・・・・、でも何言ってはるんやろ」

「バテレンや、服装からしてバテレンの女でっせぇたぶん」


 ああ、やっぱり言葉が通じない。私はアンさんの横から身を乗り出してー。


「あの・・・・・・、退散して頂ければこれ以上何もしませんから退散して下さい。と言ってます」


「あ、また出よった、今度も女や」

「でも今度はちゃーんと喋っとるわー」

「・・・・・・おいお前ら引くぞ、こいつ等に手を貸してやれ」


 鬼達は蹲っている者を担ぐと洞窟の奥の方へと引いてくれた、良かった。引いてくれないと今度は本当に当てそうだもの。

 私達は鬼達が見えなくなるとその場にへたり込んでいる変なパーティの元へ下りていった。


「あ、あなた達はー止まって、下さい」


 私達が近付くと女の子達を守るようにヨロヨロと立ち上がり身構える。

 わぁ、この男の子目が細い! 私みたい。


「あーそんなに警戒しないで、私達はー、えっと迷子になっちゃって困ってるの」

「迷子? それは大変だ、僕がー・・・・・・っ!」


 陰陽師の女の子が確りと立ち上がり、つっつーと私の隣に寄ってきたと思ったらいきなりバッ、と衣をはためかせ離れた。何してるんだこの人は。


「気を付けろ皆、この人達ーいや、こいつら人間じゃ無い! 人間の波動じゃ無い」

「なんだって! 内等の仲間にこんなのは居なかったよ」


 向こうも焦ってるようだがこちらもビックリした、私達のこと見抜ける人が居るなんて。


「この人たち~、なに言ってるんですかね~。ミーナさんよく分かりますね~」


 ユウコが私の横に来ると。


「ば、バニーガール! それにメイドさん」


 細い目を更に細めて驚いている。


「きみバニーガールやメイドを知ってるの?」

「えっ、うん知ってるよ。でもなんでこんな所にー、うわ」


 私に近付こうとする男の子を雪女みたいな人と陰陽師が引き戻した。


「真治、迂闊に近付くな。人じゃないんだぞ」

「そうよ、妖怪でもないし、あんた達一体何者!」


 私はメイドとバニーガールを見渡してー。


「ど、とうもー、お笑い芸人メイドとウサギですぅー。ガチョーン、ビックリしたなもう・・・・・・」

「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」

「ミーナ様、撃ちますか? 何を言われたか分かりませんが空気が最悪になったのは分かります」


 なぜ? 場を和ませようとしたのに、この空気はどおゆうこと?


「クククク、アハハハハッ!」


 あ、小柄な尼さんには受けたみたい。


「ちょっとお香、なに笑ってんのよ」

「だ、だってガチョーンで、ビックリしたなもうなんだよ、アハハハハ」


「掴みはオーケー、ということで改めて自己紹介をします。私はロボットのー、あーえっとカラクリ人形のミーナと申します」


「「カラクリ人形!」」


 んー、もう人間じゃないことがバレてるから嘘つく必要も無いよね。問題はどう説明するか、ロボットはカラクリ人形で大丈夫だよね。後はー。


「えーと強化型人造人間のー、人が特別な手法で製造されたメイド四姉妹。こちらからアンさんにクララさんペリーヌさんにフローネちゃんで、クララの背中で寝てるのは唯一の人間クミです」

「クミお嬢様のメイド姉妹です。宜しくお願いします」


 名前を言ったので自分たちが紹介されたのだと分かったようだ、四人がスッと腰を低くする。言葉は分からなくても友好的だと分かって貰えたかな。


「あ、あたし~、まだ紹介されてないよね~。あ~、面倒そうな顔~。いいもん~自分で言うも~ん。あたしはね~」

「ぼっ、僕たちは冒険者でこの洞窟に巣くっている鬼達を退治に来ています!」

「・・・・・・グスン、まだなのに~」


 冒険者!? そんな職業があるのかここは。折れた刀を鞘に収めて警戒を解いてくれた。


「僕は牧瀬真治、見ての通り侍をやってます。今日は他のパーティと一緒にこの洞窟に巣くう鬼を退治に来たのですが・・・・・・、見ての通りです。そしてー」


 視線を陰陽師に向ける真治君。


「僕の名は土御門精華、精華と呼んでいいよ。一応陰陽師だよ」


 雪女みたいな人と視線を合わせる精華さん。


「アタイはお雪、まあ見て分かるだろうけど雪女さ。いろいろあって今は真治に取り憑いてんの。でー」


 尼さんが立ち上がりこちらを見る。


「あたしはお香てぇの一応尼なんだけど、どっちかってーと盗みとがが得意かなぁ」


 なんでだろう、私は知ってるこの人達のことを。このお香さんは手癖が悪く捕まりそうになったで尼寺に駆け込んだ。そして人手不足だったので無理やり真治のパーティに僧侶として編入された。


 お雪さんは真治君が初めて討伐した妖怪で、始めは良い匂いがする真治の魂が目当てて憑いていたけど段々真治のことが気に入ってきた。今では真治君をずっと守っている。


 そしてー。


「ミーナ~、どうしたの~? この人達と会ってからおかしいよ~。この人達が~言ってること~、説明して~」


 ユウコが私の目の前で手をヒラヒラさせていた。


「あ、ごめんなさい。うん、少し気になることがあってね。それでこの男の子がー」


 一応皆にも分かるように自己紹介を翻訳しておく。


「分かりました、もう少しいろいろと喋って頂ければ私達もここの言葉を理解できるでしょう」


 おおっ、流石メイド四兄妹! それに比べてユウコはー、ただニコニコしてるだけ。


「鬼退治ですか~、小さいのに大変ですね~」


 ゲッ、もうこっちの言葉で話してる。ユウコって変な所でスペックが高い。


「いえ、桜井先生を早く探さないと・・・・・・」


 私はその場に倒れ込んだ。


 そうだ! この子は一緒に召喚され行方不明になった小学校の担任で桜井桃子先生を探しているんだ。・・・・・・思い出した、この設定何もかも。これは私が地蔵マンの前に描いていた「小学生が初恋の先生と一緒に異世界に召喚されたようです」だ!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ