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復活の時  作者: 第三群二十一隊
12/21

対メイド戦だあ! と思ったら。

数日後クミが元気になったので今後の事を話しあう事にした、いくら神様が急がなくてもいいと言ってもタイミングと言う物があるだろう。


「それでぇ、メイドさん達を生み出した~男女二人の事を創世の二人て言うらしいんですよ~」


 照明に使う電力が足りないので薄暗い格納庫で、ユウコが知っているメイドについて話してもらった。


「そうですか、百年ごとに五回も……、姉さん」

「うん、初めの百年でもうクミしか残っていないかも知れないのに、徹底的に人類を根絶やしにする気ね」


 私はマジンの姿に戻ってマリと並んでコンテナに座っている。ユウコはクレーンにぶら下がって私達と同じ目線でメイドの事を話してくれた。

 クミは私の操縦席で丸くなって眠っている。タマみたい。


「それでどうやってウルクーナ湖まで行くんですか~?」

「ウルクーナ湖?」

「メイド達が生まれた湖です姉さん」

「え、ああ、そうだったわね。そうそう」


 忘れてた訳じゃー、ゴメンナサイ。


「でもぉ、どうやってそんな所まで行くんですかぁ~。空を飛ぶにしても海の上でも~、直ぐにメイドさんに見つかっちゃいますよ~。そして私やクミさんが乗ってることがバレたら~」


 泣きそうな顔でユウコが訴えてきた。


「フッフッフッ、問題ないわユウコさん。私達がどうやってここまで来たのか分かる?」

「え~、メイドさん達と戦いながらじゃ~、ないんですか?」


 コテン、と小首をかしげるユウコ。こ、この子も結構可愛いわね。


「私達はメイドに勝てるほど強くないわよ、その代り私には特殊能力があるの」

「特殊能力ですか~、あの小さな可愛い女の子になる~」

「あれはアリスちゃんから貰った能力だけど、今回のはアリスちゃんから貰った能力じゃないの。なんせ異空間に入れる能力だもの」

「異空間~? 霊界みたいいな物ですか~」


 れ、霊界? まるで知ってるみたいなー、あ、アリスちゃんが見えるなら……。


「ま、まあそんなとこだけど少し違うかな。そこは海と陸の間にある世界なの」

「海と陸の間ですか~、辺鄙な所ですね~」

「辺鄙な所かどうかは別にして、私五十年ほど野原にず~~~っと立ってたことがあってぇ。その時友達になったフェラリオ、まっ妖精ね。それに教えてもらったのよ」


 あー、分かりやす。信じてないな、可哀そうな人を見る様な目で見てる。


「……お気の毒に」

「違うから! 本当なんだって、見てなさい」


 私は立ち上がり格納庫内を見渡す。

 こういう昔戦闘があった所はー、あった!


「どうしたんですかぁ~」


 私は壁の所まで行き屈みこんで隅っこをコリコリと指で削る、するとー。

 ビリビリビリ。

 まるで壁紙が破ける様に、空間が破けて行く。


「まあ! まあまあ! 凄いですね、アリスちゃんもビックリしてますよ~」

「こっちに来て覗いて見て、面白いわよ」

「はい~」


 ユウコはクレーンから飛び降りて私の横から開いた入口を覗き込む。


「これはオーラロードという道なのよ、メイドにも見つかんないし距離的にだいぶ稼げるはずよ」

「へ~、あ、何か歌が聞こえます。それにナレーションみたいな声も~」


 はぁ~あ~~、空腹を知らない者は幸せである、ふところ豊かであろうから……。


「?? どういう意味ですか~」

「き、気にしちゃダメよ。時々聞こえるの、なんか違う気もするけど」

「だけど姉さん、ずっとは使えないんですよね? ここに来るまでに機械をこの世界より排除する! って声が聞こえて、いきなり空中に弾き飛ばされましたから」

「そうねマリ、だいたい二三時間かしら。でもまた綻びを見つければ入れるわ」

「あの~、だったら戻った時にメイドさん達とバッタリ~と言う事が~」


 おずおずと手を上げながら聞いてくるユウコに。


「大丈夫そのための、あなた、よ」

「え~~!」

「兎に角ユウコさんはマリに乗って下さい、クミも元気になりましたからそろそろ出発します」

「はい、姉さん。これでやっとお尻のかゆみが無くなります」

「あの~、やっぱり私お腹の調子が~」

「マリ、やっておしまい」

「はい姉さん」


 マリはパコン、と操縦席の扉を開くと逃げようとしたユウコの襟首を摑まえる。


「あ~、わ、私マジンさん操縦したことが無いんですけど~」

「あ、それはマリがちゃんとサポートするので、ねっマリ」


 マリは自分の操縦席にユウコを放り込むとパコン、と扉を閉めて。


「はい、お任せを」

「出発なのだーーー!」


 何時の間にか起きていたクミが私のお腹で大声を出した。

 でも吹雪が止まず、結局出発したのは三日後だった。


「いってらっしゃ~~い、作戦の成功を祈ってますぅ~」


 晴れ渡る空の下、基地の出口で手を振るユウコに向かい、私は無言で背中の剣を抜く。


 シャコン!


「じ、冗談ですよ~。マリさん操縦席開けて下さい」

「はい」


 マリは扉を開きユウコを操縦席に座らせた。


「よいしょ~っと……、少し狭いですね~」

「ッ! 何を、言ってるのかなぁ、それ殆どユウコさんの食料ですよねぇ」


 この兵器燃費が悪すぎる、クミよりも大食いだ。その為私とマリの狭い操縦席に沢山の保存食が積み込まれている。おまけに私は背中に大きな袋を担いでいる、みーんなユウコの食料だ。


「ユウコはクミより沢山食べるのだ、なので尊敬するのだ」


 何でクミがユウコを尊敬するのか分からない。


「いや~、照れちゃいます~。クミちゃんも成長期ですからも~つと食べるですよ~」


 もう無視して私とマリは歩き出す。するとマリがー。


「クミちゃんはいいですけどユウコさんは少し遠慮すべきです、現在の調子で食べられたらこの大量の食料も一週間もちません」

「え~、そんなぁ~せっしょうな~。バリボリバリ」


 マリの操縦席で涙を流しながら、早速横にあった煎餅を頬張っている画像が送られてきた。


「キャー! 食べかすがパネルに、止めて下さい! 操縦席での飲食は禁止です!」

「バリバリ、すびまわへん。んぐ、あの~、お茶貰えますか~?」

「姉さん! つまみ出していいですかぁ」

「ま、まあ待って、落ち着いて」


 私達は用心しながら雪と氷の大地を進んでいた。


「ううっ、大変な目にあった」

「面白かったのだ」


 そうか、良かったねクミ。


「姉さん、可笑しいとは思いませんか?」

「えっ、そ、そうね、良かったらー、やっぱりクミとユウコさん取り換えー」

「そうじゃありません、ここまで来てメイドが一人も見当たらないなんて。空からの偵察でも見つけることが出来ませんでした」

「あ……、これは急いだ方がいいかもね」

「あの~、今更なんですけど~、何で基地の入口からその海と陸の間に入らなかったんですか?」


 マリは立ち止まり。


「何を聞いていたのですかユウコさん、私達はずっとあの空間で進むことが出来ないのですよ」

「あ~、そう言えばそんなこといってましたね~」

「だから途中で大勢のメイドが居る場所へ放り出される危険があるんだよ。その為にできるだけ隠れて進んでから異空間に入ろうとしてるんじゃない」

「でも何処にもメイドさん達が居ないのだ、・・・・・・もしかしてアンみたいに泡になったのだ?」

「うん、・・・・・・マリ、グズグスしてらんないみたい、飛びましょう」

「はい、急ぎます。飛び上がったら背中を掴んで下さい。ユウコさん、今から私が動かします」


 背中に背負っていた袋を下ろして私とマリは羽を広げて飛び上がる。


「あ~! 食料落としてますよ~、拾わないと~」


 マリが飛行体系に変化する。


「諦めなさい、後は現地調達よ。合体!」


 私はマリの背中を掴み、体を密着させる。


「姉さん確り掴まって下さい、行きます!」


 マリはオーラノズルから盛大にオーラの光を噴射して空に舞い上がる。


 しばらく低空で飛んだが攻撃を受けなかった、それどころかやはりメイドが居ない。たまに見つけても直ぐに泡と消えてしまう。やはり急がないと、これはアリスちゃんに一杯食わされたかな?


「・・・・・・姉さん、もしかしたら何処かに集まっている沢山のメイドさん達にお出迎えを受けるかもですね。通信を傍受したんですが他のマジン達も混乱しているみたいです」

「うん、でもその時の為にユウコさんが居るんじゃない。なんせ対メイド兵器なんだから」

「え~~! 違いますよ~、私はただのナイスバディなバニーガールです~」

「フン、そうならないように神様に祈りなさい」

「今アリスちゃん留守みたいです~」


 ・・・・・・何やってんだか、アリスちゃんは。


「姉さん、この調子なら夜には目的地に着けそうです」

「え~、途中休憩しないんですか~、ミーナさ~ん」


 早速ユウコが抗議の声を上げたがこればかりはー。


「ミ、ミーナ・・・・・・」

「なに? クミ。あっ!」


 クミの顔が赤い、もしかして熱がぶり返したの!


「ここで漏らしても・・・・・・、いいのだ? もしかしてこの空き缶にー」


 漏らす?


「あーーー! ちょっと待ってクミ、マリ、トイレ休憩よ」


 私はマリの背中から地上へダイブした。

 まだ雪が積もっている平原に着地して扉を開けるとクミは大急ぎで飛び降り、近くの岩の裏へと走り込む。


「ふーっ、なんとか間に合ったみたいね」

「わーーー! ミーナ!」

「えっ、どうしたのクミ。あっ!」


 突然岩の向こうの林からからメイドが現れた、アン、ペリーヌ、クララ、フローネの四体だ。上空から見た時は居なかったのに。皆八頭身だけど半分泡になってー、ゾンビみたいにふらふらしてる。


「クミちゃん!」


 ドン! とクミとメイドの間にマリが空から降り立っち、拳を振り上げる。


「待ってマリ、攻撃しないで!」

「えっ、でもー」

「良く見て、皆髪の色がー、青いわ」


 雪に埋もれているうちに変色したのだろう。そんなやり取りをしてる間にメイド達はマリの足元をすり抜け、クミの前に。


「あ、あ……、人だょ。こ、これ使って」


 四人姉妹の中で一番幼いフローネが持っていた小型マシンガンがタオルへと変形した。それを差し出すフローネの左腕が落ちて泡になる。


「だ、ダメだぜフローネ。ち、ちゃんと拭いてやらねぇと……。うっ」


 姉妹の中で一番体格がいいクララも手榴弾をタオルに変えたが足が泡に変わり、その場に倒れ込む。


「おぉ、お世話を、致します。お、嬢様……」


 ペリーヌは既に下半身が無く、両手で必死にはってクミに近づこうとしている。


「な、なんなりと……、わたくし共にお申し付けくださ……」


 唯一五体満足のアンがクミの前に跪くが、顔が……。あれでは目が見えないだろう。

 四体のメイドがフラフラとクミに手を伸ばすが、伸ばした手が泡に変わっていく。


「あ、アン姉、クララ! ペリーヌ、フローネ! い、いゃあぁ!!」


 あっ、クミは小さい頃からメイド達とー、まずい。

 メイド達はクミの前で、次々と泡になって消えて行った。


「な、何なのだーー! ミーナ、わーーっ、ミーナ、なんなのだー!」


 パンツを下したまま尻もちをついたクミが、泣き叫ぶ。

 私は人型となって抱きしめてやる事しかできなかった。

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