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復活の時  作者: 第三群二十一隊
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プロローグ

暗闇の中、私は淡く光る白い猫に問いかける。

「ねえ……、ねえお願い聞かせて。私は、私達はいつか、いつかあれを知る事が出来る様になるの? …………そう、そうよね。ありがとう、タマ……」


 私はまだホカホカと湯気を上げているアスファルトを見ながらバックを担ぎ上げる。


「お疲れ様でしたー」

「おお、和美ちゃん今日は大変だったねー」

「いいえー、ではではー」


 私はとうに七十を超えてるであろうお爺さん誘導員に挨拶をして夕闇の中近くの駅へ向かう。

 私は宮崎和美まだ二十代。正確な歳? ・・・・・・あと三日で三十よ。悪い? 


 今日は大変だったのよ細い道は通行止めにして、片側一車線の道は片側通行にしての大道路工事。誘導員も私を含めて八人動員されたの、それに加えて公園にトイレが無いし近くにコンビニも無い。

 男みたいに立ちションなんか出来ないし・・・・・・、近くの工事現場に簡易トイレが無かったらほんとヤバかったわ。


「あの! 宮崎さん・・・・・・」

「うわ! 香川くん、ど、どうしたの?」


 急に声を掛けてきたのはここが初めての現場だった香川くん、彼はバイトしながら大学に通う苦学生だ。

 それとー、大学生とは思えないヘタしたら中学生に見えてしまうほど幼く可愛い男の子だ。


「今日は済みませんでした、片側通行の誘導失敗しちゃっって・・・・・・」

「い、いいのよいいの、あれぐらい初めてなんだから誰にでもあることよ?」

「・・・・・・ありがとうございます」


 く~~、落ち込んだ表情も可愛い! もう、お持ち帰りしたい! 


「ま、また同じ現場になったら確り教えてあげるわよ。同じ警備会社なんだから、だからね、そんなに落ち込まないの」

「は、はい、ありがとうございます! 今度絶対ですよ。それでは失礼します」


 香川くんは駅とは反対方向のバス停へと駆けていった。


「ほんと可愛いなぁ、でも歳が・・・・・・離れすぎてるなぁ。それに私はー」




 私の目は細い、いわゆるキツネ目と言う奴だ。

 小さい頃、綺麗なヒラヒラのドレスを着て殴ったり蹴ったりして化け物を退治するアニメを見て、私もあんな大きくでキラキラした目になりたい! と思ってずっと気合を入れて目を開けてプルプルと震えていたら、有無も言わさずお爺さんが私を拝み屋さんの所へ連れて行いっの。


 震えながら目をカッと見開いていたので、どうも何かに憑りつかれたと思われたらしいわ。まったく、困ったおお爺ちゃんだ。

 私が驚いて素に戻ってると拝み屋のお婆さんは、私にはキツネが憑いている。と言ったの、キツネ目だからって安直よね? んで色んな祈祷が行われたらしいんだけど、らしいと言いうのは何故かこの時の記憶が無くて、気付いたら病院のベッドに寝かされていたのよ。後で聞いても大騒ぎだった。としか教えてくれなくて・・・・・・、お金も相当追持って行かれたみたい。と言うか取られた?


 私が目を開いたばかりに……。

 それから私はキラキラお目々を諦めて、前髪を伸ばして他の人から私の目が見えない様にしたの。そしてー・・・・・・あの日から私は目標と言うか、夢みたいな物まで無くした気がする。


 お爺ちゃんが言ってた、まるで尻こだまを抜かれたみたいだって、どういうこと?


  んー、今まで何となく生きてきた、そして私は何となく死んで逝くのだろうと思っていた。

 何となく学校へ通い、何となく勉強をして、何となく友達を作り、何となく生活をこなしていた。


 なのでこのままでは大変なことになるのでは? と何となく思った。

 なので最近良く見かけて私も何となく呼んでいた、ラノベを何となく書いてみようかな、ラノベぐらいなら私でも何となく書けるのでは? と、何となく思ってしまった。

 でも、書き方位は勉強しようと専門学校へ行こうと何となく考えて親に言った所、お前がそんな事を言い出すとは思わなかった! いいだろう、行って来い。となぜか喜ばれた。


 そして私は上京してラノベの専門学校へと通う事になった。学費も生活費も親持ちで。

 うん、これでまた何となく生活ができる。と思ってたらお父さんの会社が倒産してしまった。

 当然仕送りは途絶えた、学費は始めにまとめて払っていたので問題は無かったのだが……。

 私の何となく生活はこれで終わりを迎えてしまったのである。

 生きて、ご飯を食べていく為には働かなくてはいけないことを初めて知る事になった。


だが、ずっと何となく生きてきた私がそう簡単に「何となく」を終わらせることができるはずも無く・・・・・・、バイト先をコロコロと変えることとなった。何となく合わない気がしたから……。

 しかし、悪い事ばかりではない。学校では先鋭化の授業なるものがあった。

 これは自分の好きな事を尖らせていく授業だ、私の好きな事……、何だろう? ずっと何となく生きて来たので自分が何が好きなのか考えたことが無かった。

 今までの人生を何となく思い返してみるとー。

 ……そう言えば、高校生の頃にたまに遅刻していた。理由は小学校の前で男の子を何となく真剣に見ていたから……。

 そうか! 私は小さな男の子が好きだったのか!!



 と、せっかく尖らせる物が分かったと言うのに・・・・・・。


「あぁ……、やっちゃった」


 そこに安アパートの風呂場で、うつ伏せに倒れている自分の体を見ながら途方に暮れる全裸の私が居た。


「うぅっ、芋焼酎なんか飲むんじゃなかった」


 どうするかなこれ。あ、私の顔……、めっちゃ変。何で目……開くなかなぁ。


「ニァー……」

「タマァ、私が見えるの?」


 十年前拾ってきた白猫の「タマ」が浴室に入って来て私を見上げてる。

 なぜ私が自分の死体を見て途方に暮れているかと言うとー。

 

 二年間バイトをしながら専門学校でシナリオの書き方を教わった後バイトを点々とした、そして交通誘導員のバイトを見つけて数年間、映画やテレビドラマシナリオの投稿を何となく続けて、やっとテレビドラマ部門で「地蔵マン」で入選した。なのにぃ!

 因みに地蔵マンとは主人公は見た目中学生だが実は十九歳(美少年)交通誘導のバイト中馬に跳ね飛ばされ地蔵を壊してしまったことから地蔵型のヒーローとなり、地縛霊となっていた少女を救う物語なの。

 私はこの地蔵マンに何となくかけていたの。


他にも今はやりの異世界転移物とか書いてたんだけど、うまくいかなくて……。


 だからネットで入選を確認した今日は、何となく嬉しくて一人で祝杯を上げるため芋焼酎を買いに行き、お湯で割って飲んだところ物凄く、ものすごーーーく、美味しかったの! お芋の香りがたまらなかったの。

 ほっこりしちゃったの。ホントに何となく嬉しかったの。


 一緒に買ってきたお刺身も脂がのっていて甘く、これまた意外と物凄ーーく、美味しかったの。

 テンション上げ上げ~、みたいなぁ。なので飲み過ぎたのは私のせいでは無いと思うのぉ、ま、じ、で。

 しかも、これまで入選するまではと何となく思っていた恋愛解禁! 守り守られる家族を作る、最近歳のせいか何となく恋人と言うのを作ってみたいと思う様になってた。お酒も手伝いどんどん想像が膨らんでいったのぉ……。


「むふふ、かなり年下だけど今度バイトに来てたら、今度襲、いや誘っちゃおうかなぁ」

 

 昨日は片側通行の誘導に失敗して、怒られて落ち込んでいた。落ち込んだ顔もキュート!

 今度一緒になったらベテランの私が手取り足取り、ついでにあそこもってキャー! 優しく教えてあげよう。むふふふのふ。

 歳は少しだけ、離れてるけと姉さん女房……、いいじゃない! きっとあの子はすね毛も薄くてスベスベの足をしてるわ。


「クピクピ、んっ、あーー、美味い! ムフフ、私が守ってあげるの~。タマもおいでぇ~、お刺身あげるよ~」


 タマは拾ってきた当初はやせ細り、ヤンチャな猫だたけど今は本当の玉の様に丸々と太って一種の貫禄と言うか、以前は野良だったからか時々タマには風格みたいな物を感じていた。でも癒されるんだよね~。


 私はタマが呆れるぐらいで出来上がっていた。もうフワフワ~って感じ、ムフフ笑いが止まらない。

 しかし、この時何を思ったのかフラフラの状態でシャワーを浴びにジャージと下着をフン! と脱ぎ捨て風呂場に入ったらー、見事に滑りこけてしまった。


 覚えているのはここまで、気が付くとうつ伏せに倒れている自分を見下ろしていた。

 考えるに頭を打った後気絶して、そのまま凍死という間抜けなパターン?

 何故死んでいるのかがわかるかと言うと、オヘソの所からホースみたいなのが出ていて約一メートルぐらいで切れていた……。

 これったやっぱり魂の尾だよね? はーー。

 大きくため息をついてしまった。


「ほーらほら、魂の尾っぽだよー」


 タマの目の前に魂の尾をブラブラとさせてみる、あ……、又呆れてる。


「こ、こら! そんなとこの匂い嗅ぐな! 舐めるな、バッチイでしょ。……おいでぇタマ、いつもの様に

モフモフ……、あぁやっぱりモフモフできない!」


 私の腕はむなしくタマをすり抜ける。タマは私の事を心配するように、ニャーと言葉を掛けてくれた。



 自分の体を見ながら考え込んでしまう。


「どげんしよう、大事な所が丸見えばい。こげんもん人様にみせられん! あー、興奮してしまった落ち着こう。せめて下着だけでもなんとかー、ん?」


 何となく誰かが私を呼んでいる気がする、誰だろう。

 お迎えにしては早すぎるんじゃないかなー、まだお通夜も葬式も終わってないのに。


「でも……、呼んでいる」


 フラフラと私は浴室を出てジャージや下着を脱ぎ散らかした部屋へと入る。

 タマも私の足元に纏わり付く様にして部屋へー、なに? 警戒してるのタマ?

 ふと見ると机の上の飲み残した芋焼酎が目に入る。

 ああ、もったいない。この状態でも飲めるかな? いやいや、お酒はーもう、止めよう。


「窓の外からだ……」


 カーテンに手を伸ばす。

 うっ、カーテンが開けられない、窓も手ごたえが無い、スカスカだ。


「ふむ、仕方ない。ええい!」


 思い切って目を閉じて窓に頭を突っ込むとー。

 窓を突き抜けゆっくりと目を開ける私の目の前に光の球が浮いていた、直径三十センチ程の淡く光る玉。


「これがー、お迎え? でも暖かそうな光だな……」


 何となく光の球へ手を伸ばしてしまった。

 シュン!


「キャ!」


 私は一瞬で光の中へ引き込まれた。


「こ、これはー、良くある光のトンネル? あ、しまった、タマー」


 どうしよう、タマ置いてきちゃったー。

 焦る私の周りで、まるで宇宙船が亜高速に突入した時のようなー。

私は光のトンネルをたぶん高速で飛ぶように移動した、と思う。そしてスピードがゆるくなり終点かな? と思ったとたん何かに吸い取られるように丸い物の中に押し込められた。

 自分の体の感覚が分からない。

 急に暗くなった、ここは何処? まるで麻酔を注射された直後みたいに頭がボーっとする。誰かここから出して……。


 あ、光がー。

 どれぐらいの時が流れたのだろう。まるで絞り出されるようにウニョ~ッと、明るい場所へ出された。

 あたしゃうんちか? そしてー。


「やりましたね博士! 遂に魂の固定化に成功しました」

「何言ってるの、これからが本番よ! 気合入れなさい」

「はい!」


 だれ? 甲高いけど、いやにドスの利いた女性の声と若い男性の声が聞こえた。

 ドボン! と景気よく私は水の中へー、違う、これお湯だ! しかも熱い!


「あぢぃぃぃぃぃぃぃ!」


 お湯から這い上がろうとしたけどツルツル滑って上がれない。


「博士、水温が上がってます」

「何やってんの、直ぐに下げなさい! あんたも暴れないで」


 まるで不意に浴槽に落ちた猫の様だ、上に、上がれない。


「アチ、アチー、あー、ハァハァ、ふ、フゥー」


 やっとぬるま湯になった。


「申し訳ない、すみません。大丈夫でしょうか?」

「うん、まあ大丈夫でしょう。これから気を付けなさいよ助手君!」

「はい……」

「ごめんなさいねぇ、内の助手が不注意で」


 湯気で外が良く見えない、私はガラスの金魚鉢いや、大きなフラスコの中に居た。ゴーと空気を入れ替える音がする。

 あ……、巨人だ。


「……私はー、私はいつから小人になったのですか?」


 ようやくガラスのくもりも無くなり、外が見える様になってきた。


「え、小人って?」


 博士と呼ばれた赤い髪が棘の様にツンツンした女性が質問に質問で返してきた。

 雰囲気は落ち着いた感じだが、見た目は十代、それも前半みたいだ。


「だって……、私の大きさ金魚並み?」


 コテン、と首を傾げてみる。

 そう、外の二人は異様に大きかった。いややはり私が小さいのか?

 周りをよく観察してみる。白で統一された多分何かの研究室、私は机の上に置かれたフラスコ中に居るみたい。

 アハ、巨人ってやっぱ居たんだ。今度地蔵マンに出してみよう。


「あ、あー、今の姿ね、そうそう、説明するわね。今貴女が入ってるお湯は魂を可視化する液体で、貴女は今幽霊の状態なの。だから大きさはそんなに関係ないのよ」


 えー、可視化? 幽霊? あ、横から黒髪を肩まで伸ばしている若い男性がー、この人が助手?


「それに小さいから大事な所は良く見えないし、ですねハハ」

「えっ、大事な……、ところ?」


 スッと視線を下げてみる、お湯の中でワカメみたいなのがユラユラと揺れていた・・・・・・。


「ぎ、ギャーーーーー! なにこれ、ここ何処よ!? 何で? どうしてぇー」


 一気に頭の霧が晴れた。

 慌ててもう一度ガラスの壁を登ろうとするがー。


「助手君、女の子をじろじろ見ないの。落ち着いて、今は何もしないから」

 女の子、博士がフラスコにタオルの様な物を巻いてくれた。でも私は両足を抱いてお湯の中に沈む。


「う、ブブブブブ」

「ゴメンネ、まずは自己紹介ね。私はアカデミーの科学者でセナ、セナ・マーキュリーって言うの」

「自分はー」

「あー、こっちはただの助手君。さっ、手を休めないで、作業を続けるの!」

「……はい、助手です」


 助手さんはスゴスゴとフェードアウトしていった。

 クスッと笑う事の出来る自分に驚く。


「あ、笑ってくれたー。んで、貴女のお名前なんてーの?」


 少し顔を上げる。


「宮崎、宮崎和美、です。あ、と、申します」

「珍しい名前ね、じゃぁ和美って呼んでいい?」

「ま、まぁ……いいですけど」

「ありがと、じゃあ私の事はセナちゃんって呼んでね」

「あ、はい、ではー、セナー、さん。質問がー」

「セナちゃん!」


 ひぇぇぇぇぇぇぇっ!

 フラスコに顔を近づけると、顔が恐ろしい事になるから止めて! 


「セナー、ちゃん!」

「そうそう、あれ? その目……、もしかしてキツネのー」

「クッ! 違います、私は目が少し細いだけです!」

「そ、そう。で、質問て何、何でも聞いちゃって」


 まったくー、巨大な少女はやっとフラスコから離れてくれた。


「私はこれからどうなるの? できれば帰りたいのだけど……」

「帰りたいの?」

「ええ、アパートにタマを、猫を置いて来たから……。あ、でも私死んじゃってるからー、無理か」

「あら、結構タンパクね」

「うん、今まで何となくで生きて来たから、これからも……」

「あら、それは残念ね。貴女はもう何となくじゃ生きられないわよ」

「え?」


 あ、ゼナちゃんの後ろに何やら確変確定的な虹色の怪しいオーラが見えるー! 私、どうなるのぉ!?

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