分岐生命4 欠片01
『「分岐生命四番」記録されない世界の話』
……番外個体失敗。
……一番目は失敗。
……二番目、三番目は不完全個体。
……四番目は成功。
記憶に残っている言葉はこれだけだった。
旅人に助け出された少女は、町の中の別荘と呼ばれる建物の中で、血に沈んで倒れている。
建物の外から人の気配が近づいてくる。
もうすぐ人がここにやってきて、少女の光景を見て息を呑む事になる。
その事に倒れている少女の胸が痛んだ。
少女はもやは生きているとは言えない有様だった。
自分の意思で己の指一本すら動かせない。
それでも生きていたのは、おそるべき生命力としか言いようがなかった。
「良いですか? 今後は彼女の甘さと優しさに付け込んでいちいち近づいてこないでください。貴方みたいな不審者然とした不審者、本当は彼女に近づけたくないんですよ。大体初対面の人間の肩を掴んで、別の人間の名前を連呼するような人間のどこを信用しろと言うんですか。どこからどう見ても怪しさしかないじゃないですか」
「うるさいな。誰に近づこうと俺の勝手だろう。あいつは別に迷惑だと言ってない」
「貴方のそういう彼女に甘えきった態度、本当に嫌になりますね。まるで昔の自分を見てるみたいで、なおさら……」
響いてくるのは旅人の声と、どこか聞き覚えのありそうな……けれど思い出せない少女の声。
その声をしかし、段々聞き取る事ができなくなっていき意識が薄れていく。
何を言っているのか理解できなくなった頃に、別荘の扉が乱暴に開けられた。
「言い忘れていたが、今その家には俺が保護した……」
「どうして中に人が、え……?」
死体が、死体になりかけている自分の姿が彼等に目撃される。
真っ赤な液体がぶちまけられた部屋の内装を見られる。
何かが零れた人体の一部が、骨が見られる。
ベッドの上で、複雑な形になっているもはや何か分からない塊を見られる。
見られて、見られて、それで……。
「あ、あ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」
絶叫が悲鳴が上がる。
それがどちらのものなのか、あるいは両方のものなのか分からずに、少女は完全に意識を落としていった。
赤い髪の襲撃者の事は伝えられなかった。




