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「邂逅」
あたしは砂粒の言った山の中に連れていかれて、そのどこかにあった洞窟に入った。
何でもその場所は、昔神様の祟りを恐れた人たちが生贄を差し出したいわく付きの場所らしい。
生贄を差し出さないと、災という神様が不思議な事とか変な事とかをたくさん起こすからって、そうしたようだ。
そこには、牢屋がたくさん並んでいて恐ろしい所で、もしかしたらそんな場所に一生閉じ込められるのかもって思ったけど、違った。
砂粒は洞窟の奥にある変な場所へとあたしを連れて行った。
そこには色んな機会があって、あたしはしはよく分からないけどそれで色んな事をされた。
何でも「ブンキセイメイ」とかいうのを作り出す為らしい。
よく分からないけど。
その後、一番大きな機械の大きな輪に放り込まれた。
そして、気が付いたら今まで生きていた世界ではなく、別の世界にいたのだった。
エアロは、ロングミストの町で幼いながらも町長に目をかけられた存在だった。
優秀だけど、へたれているクルス町長。
あの人は少しだけ抜けている所があるので、エアロがよく手伝って仕事の穴を埋めなければならなかった。
その影響でか、たまに睡眠時間が遅くなってしまう事がある。
「そこまでしなくて良い」と、さすがに大人として申し訳ないのかクルス町長は言ってくれるのだが、その当人が中途半端に情けない人格のせいで、断りきれなかった仕事がたまっているので仕方がなかった。
その日もエアロは夜遅くまで作業をしていて、その途中で机で眠ってしまっていた。
はっとして起きた時にはずいぶん時間が経ってしまったようで、窓の外の星月が大分移動してしまっていたのが分かった。
仕方なく仕事にケリをつけて、終わった分だけでも執務室に運んでおこうと考えたエアロは寝ぼけまなこで町長の屋敷の中を歩いていく。
幼い娘が他の人間の家に寝泊まりするなどは色々な事情で普通なら考えられない事だったが、クルス長はとてもヘタレているのでそこらへんは心配要らなかった。
「ふぁ……」
あくびをしながら、目的の部屋へと行くといつもはいないはずの町長がいて驚いた。
その部屋にはもう一人の少女。
どうやら迷子らしき子供を保護した様だった。
「あ、すいやせん、エアロ君。あっしちょっと別件があるんで、しばらくこの子を相手しえてくれませんかね」
「え? ちょ、ちょっとクルス町長」
そして、町長はこちらを見つけるとこれ幸いにと、その子の相手を押し付けてどこかに行ってしまったのだ。
こんな夜遅くまで部屋に残っている事は珍しいので、本当に外せない用事でもあるのだろう。
私は町長補佐としての役割がある、仕方なくその子の面倒を見る事にした。
「貴方、迷子なんですか? 名前は……」
「んー。みーちゃん?」
「それは名前ではなくあだ名ですね。はぁ……」
背丈を見るに同じ年頃の少女のはずだが、その迷子らしき子供は自分よりもいつくか幼いようにも見えた。
「何かしてほしい事はありますか? お腹がすいたとかはご飯作れないので無理ですけど、眠いならクッションもってきますよ」
「んーと……じゃあ、遊んで」
「私は仕事中です」
「そっかー、あたしはざんねんです……」
断ると目に見えて萎れだしたので、仕方なくエアロは了承するしかなかった。
「……仕方ないですね、少しだけですよ」
「やった。あのね、あたしはオセロ! オセロやりたい!」
「おせろ? 何ですかそれ」
「えっとねー。まるがたくさん。そんでしかく!」
「余計に分からなくなったんですけど……。それ、本当に遊びなんですか?」
「やたーっ。やろーやろー! ルール教えます! あたし先生。先生があたしです!」
たった一晩、数時間だけの短い邂逅。
それは、数年経ったエアロがやがて忘れてしまう事になる、数時間の出来事だった。
「むにぅ、お姉ちゃん……」
「遊び疲れて眠ってしまったみたいですね。はぁ、意外に元気いっぱい過ぎです」
数時間して、すっかり夢の中と言った様子の少女をエアロが眺めれば、町長が部屋へと戻って来た。
「ああ、エアロ君ごめんごめん。この子を引き取りたい人ってのが表れたから、もう相手をしなくて大丈夫。ほんとうにすいやせん」
「いいですけどね。町長の尻拭いをするのは毎度の事ですし」
「うう、すんません」




