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白昼夢・他  作者: レエ
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入れ子

 心霊写真を手に入れてしまった。


 始まりは、ネットの知り合いから聞いた、おまじないだった。

 どういう知り合いかというと、お互いネットで小説を公開していて、その感想を言いあっている仲だ。

 教えてもらったのは、文章のネタに詰まった時にするおまじないだ。


 まず、パソコンのどこかに、

 『できる』

 という名前のフォルダを作る。

 その中に、

 『できない』

 という名前のフォルダを作り、さらに中に『できる』『できない』と、交互の名前でフォルダを作っていく。

 そして、フォルダの階層ごとに決められたファイル……、

 例えば一番目のフォルダには、このパソコンで一番古いファイル。

 二番目の自分の顔写真など――を入れる。

 最後に、七番目の『できる』のフォルダに、書き途中の文書ファイルと、花の画像を入れる。

 ただし、花の画像は花弁七枚のものにする。

 それを一晩置いて、翌日、文書ファイルを取り出し、続きを書く。


 実践してみたら、あんなに詰まっていたのに、スラスラと書けた。

 一気に小説を完結させたところで、あの知り合いからチャット通話が掛かってきた。

「ありがとう。おまじない効いたよ」

 私は弾んだ声で礼を言った。

 けれど、相手の

「いや、あの……」

 相手は口ごもりながら、ようやく話した。

 その人もおまじないが効いたらしい。


 それと同時に、不可思議なことが起こった。

 七番目のフォルダの花の画像。

 ネットから拾ってきた七枚の花弁の写真を、確かに入れたそうだ。

 だが、今確認すると、花弁が全て千切られた写真になっていたと言う。

「まさか」

「本当だよ」

 更新日時はダウンロードした日のままだったらしい。

 薄ら寒くなった。

 二人も効果覿面となったおまじないだ。

 何か不思議な力が潜んでいるのかもしれない。

「ねえ、そっちも見てみて」

 そう頼まれてしまった。

 怖かったが、後で一人で調べるより、通話中に見た方がましだ。


 上の階層からフォルダを開いた。

 できる、できない、できる……。

 七番目のフォルダを開いた。

 小説はもう取り出したので、写真ファイルだけが入っている。

 更新日時はダウンロードした頃のまま変わっていない。

 ダブルクリックすると、画面にウィンドウが広がった。

「変わらないよ」

 ちゃんと七枚の花弁がある画像だった。

「えー、こっちだけ?」

「持ってくる時、何かと間違えたんじゃない」

「はげた花の写真なんてどこにも置いてないよ」

 まあ、そうなのだが、そう考えるしかないじゃないか。

 一応、セキュリティソフトを手動で走らせておくことを勧める。


 結局、このおまじないは、もう使わないようにしようと言いあって、通話を終えた。


「さて」

 花の画像をゴミ箱アイコンの上に持っていって捨てる。

 この入れ子フォルダを削除して忘れてしまおう。

 一つずつ上の階層に戻り、必要なファイルがないことを確認して、フォルダを消していく。

「この写真」

 数年前の旅行写真が入っていた。

 フォルダを作った時にも見たが、懐かしくてもう一度開く。


 友人たちとの集合写真。

 全員の首から上がなかった。

 写真に写っていたのは、私を含め、七人だった。



<入れ子  終>

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