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(更新4)

【ドラス】


我が盟友ザップとダンジョンに潜入。現在地地下五階層。


現在地到達までの時間経過、二日と八時間弱。


現在まで接敵9回、内戦闘4回。過去平均戦闘回数に準じる。素材・アイテム拾得も同様。


地下五階層


我々二名での探索限界と目されている階層、原因は戦力不足による。


我が盟友ザップによれば、自由人二名及び奴隷一名とパーティー加入交渉を成功との事。但し正式加入は日数を要すると註釈有り。



「それぞれ都合ってものがあるからな」



との言。


参加人数の増加は今後の探索行を有利に進める期待値が高まる。


地下四階層までは我々の戦闘能力的に危険値・低なるも、現階層においては、敵性生物、仮称・魔物の群生により危険値・高へ上昇す。



「やれない訳じゃねぇが、数が多過ぎるな。そろそろ戻るかい?」



我が盟友ザップは行動において慎重。我も同意す。



「ソうでスね。帰ったら新しく参加シて下サる方を紹介シて下サい」



我等帰還の途にて、異音を耳にせり。



「戦闘音だな、近い、巻き込まれないように様子を見るか」



我等隠密行動により戦闘音へ近付く。


敵性生物・魔物とヒューマン冒険者との集団戦闘を目撃す。



「……なんだありゃあ、前衛で戦ってる奴ら、ろくな装備も持ってねぇ」



盟友ザップの評する通り、冒険者前衛三名は防具無し・剣等装備武器の粗雑なる造り、遠目にても確認可能。


また、練度甚だ不足にて、たちまち倒れる。



「……お?押し返したな……なんだって仲間を見殺しに……」



残る冒険者達は皆武器防具の質良く、残った魔物を倒しきる。


盟友ザップの言に同意。何故先の三名に加勢し集団行動を取らなかったか疑問。


冒険者集団は僧侶による傷の回復、及び魔物素材の採集後、前進。死亡せし三名を残す。


死体に接近し捜査。



「コイツまだ生きてるぞ」


「生存者がいまシたか」



残念な事に我等の介抱虚しくなるなり。



「先程のパーティーには僧侶がいまシたが、何故助けなかったのでショうか?」


「……見なよ、首輪付きだ。ヒューマンは金持ちだねぇ、使い捨てとは畏れ入ったぜ」


「ソれでは資産がもたないのでは?」


「僧侶がめんどくさがったんだろ?……帰ろうぜ、ケチがついた」



死亡者を通路脇に並べ、我等その場を後にする。




【ガンズ】


俺が魔国王都へ到着して二週間、やっとこの日がきた。


朝から東門の前で待つ。門から望む街道の先、朝日が上る。



「まだ早いだろう、着いたら連絡するよ?」


「いや、ありがたいが結構。出迎えに遅れる訳にはいかないからな」



門衛に促されるが、それでは義理が立たない。俺が出迎えなければ一族は安心しないだろう。


昼前、街道を狼が駆けて来た、と思えばそれは目の前で立ち上がり門衛に敬礼をする。


……ビーストマンは四つ足で走るのか、成る程、尻尾があるのはその為か。



「伝令!これより半時間後オーガ一族が到着予定。我王宮へ報告に向かう」



伝令役は門衛にそう告げるとまた駆け出した。



「……良かったなあんた、あの分なら皆無事だろう」


「あぁ、ありがとう」



30分後、先頭が街道の奥に姿を現した。


あれは大隊長だ!俺は拳を振り上げた。すぐに大隊長は同じく拳を振り上げ返事を返してくれた。


思わず駆け出す。



「大隊長!副長!」


「ガンズ!よくやってくれた」


「王様からの伝令で首尾は聞いていたが貴様のおかげで皆安心して旅が出来たぞ」



大隊長、副長、ゴル部隊長……皆無事にたどり着いてくれた。



「ゴル!」


「ガンズ!元気そうだ。……実はな、隊の何人かを居留地に残して見張らせてたんだが」



ゴルが声をひそめて言った。



「……やっぱりヒューマン共が押し寄せてきたそうだ。光神教だ。間一髪だったな」


「新王の手の者は?」


「平服だったらしいがいた様だぜ。お前のおかげだ、お前が意見しなけりゃ今頃は……」


「よせよ、それより追手は?」


「なかった。連中、居留地が手に入った事で取り合えず満足したらしい」



皆と話をしながら城門をくぐる。門には王宮からの使者が来ていた。



「我が国へようこそ。我が国王陛下が謁見をお待ちしております。代表の方はこちらへ」



大隊長と族長が使者に促されて王宮へ向かう。その後ろ姿と、ゴル部隊長達が一族を纏める様を見ながら俺は思った。



先王陛下、終わりました。御恩をお返し出来ましたでしょうか。




【サウル】


オーガとの謁見は恙無く終える事が出来た。


大隊長を名乗るオーガが大隊ごと売り込んできたので有り難く軍に組み込む事にしようと思う。


まぁそれもオーガ一族が北の開拓村に落ち着いてからだな。


既にミノタウロスを始めとする開拓民は先行させている。暫くは村作りで身動きがとれまい。



「今日のお仕事終了~」



ちょっと軽いノリで言ってみたら、爺に睨まれた。目の無い骸骨のくせに。


謁見の間から出て廊下を歩く。控えているはずの侍女がいない。



「小猿~!何処だ小猿!」



余の侍女は何をやっているのか?


また猫と遊んでるんじゃあるまいな。



「若、大声を出さない!」



また小言だ、仕方ないだろう?王宮は広いんだ。



「は~い!只今参りま~す!」



小猿が走ってきた。おい爺、あいつには小言無しか?大声をあげてるぞ?



「女官長殿の管轄ですからな。もっとも女官長殿は宿屋の管理で王宮にこれない様ですが」



女官長の狐も料理長の熊も宿屋に行きっぱなしだ。求人を出すか。



「お疲れさまでした陛下、ご用はなんでしょう?あと私は猿じゃありませんサーラです」



お前、余に対して口のきき方がおかしいだろ?狐に再教育させんと。



「晩飯時だ宿屋に行くぞ供をしろ。あと侍女の名前なんか余が知るか、小猿で充分だ」


「ハイハイわかりました……なんでこんな所に働きに来たんだろ」



族長であるお前の親父が寄越したんだろ、親父に文句云え、親父に。



「若、また宿屋で食事ですか?下々の間に交ざるのはあまりお勧めしませんぞ」


「仕方あるまい、奥がその下々の間で過ごしておるのだ。様子を見んと」



奥とは政略による婚約で、向こうの一族にしてみれば結婚にまで到らずとも我が種族との友好を結ぶきっかけになるだろうと見越して婚約話を持ちかけてきた。


ヴァンパイアとドラゴニュートは昔から敵対していたからな。同じ捕食生物だ、獲物がかち合っていたのだから仕方あるまい。


種族が違い過ぎて将来子が産まれる事もあるまい。国家としては益のある婚約でも、益のない結婚となるだろう、王家としては。


とはいえ、お互い嫌い合っている訳でもなく、ならば良い関係を作りたい。


爺と小猿を伴い王宮を出て第一城壁西門へ向かう。


夕闇の迫るなか、街は昼の顔から夜の顔へ様相を変えていく。物売りが姿を隠し、飲み屋が店を開く。



「あまりヒューマンの姿を見んな」


「ヒューマンの住処は東門辺りに固まっておりますからな」



『万民協和』を進めるうえで、目下のところヒューマンが一番の問題だ。他種族と交流をまるでしない。


何かしら法案でもこしらえるか?しかし農村ではヒューマンも他種族と上手く折り合っている様だし、下手につつく訳にも……


そんな事を考えるうちに宿屋へ到着した。



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