ヘビースモーカー
彼の香りは愛用のタバコの匂い。
でも最近その匂いがしない。
「最近、煙草吸わないね。どうしたの?」
私の部屋でも平気ですぱすぱ吸っていたのに、最近はめっきり吸わない。
彼が残す残り香も何も無い。
「健康意識」
にやりと彼が笑った。
ポケットの中に財布と煙草を押し込んでいたのに、今は煙草の代わりと言わんばかりにケータイが押し込まれている。
そして、煙草の代わりにケータイを開いてメール。
「今更どの口が。ヘビースモーカーさん?」
皮肉を込めて言ってやると、彼は苦笑いした。
けれどそれ以上は何も言わなかった。
それから幾月経っただろうか。
相変わらず、私の部屋でケータイを弄っている彼。
煙草も吸わない。
禁煙が達成されているのだと思う。
メールに夢中で私を見ようともしない彼に聞いてみる。
「誰とメールしてるの?」
そういえば一度も聞いたことがなかった。
彼に興味が無かったと言うよりも、メール相手に予想がつくからだ。
「元カノ」
即答して、こちらをやはり見もしない。
「今カノいるんですけど」
どうして私はこんなに皮肉っぽくしか言えないんだろう。
たまに思う。
彼は私の何が良くて付き合っているのか。
ただのクラスメイトだったと思うのに。
他にも可愛い子なんてそこら中にいる。
それこそ、元カノさんの方が可愛いと思うのに。
「知ってるけど?それが?」
唯我独尊。
この男は私を何だと思っているのだろうか。
こちらを見もしないで。
元カノとのメールに夢中。
最低だと思う。
でも別れを切り出さないのは彼の優しさを知っているから。
それが別れない理由。
―――――煙草は自分以外にも被害があるんだって。
―――――ふぅん?
―――――俺、禁煙するから。
―――――なんで?
―――――お前に害があるなら吸わない。
禁煙している間は付き合っていける。
私はそう信じてる。
久しぶりに書かせていただきました。ネコです(=^・Å・^=)感想、評価、批判などございましたら遠慮なく送ってくださいませ。努力します!!(=^>ω<^=)