上野公園百魔石パニック
10月31日、世間はすっかりハロウィンの仮装ムード一色に染まっていた。
だが、我がAV部にとっては季節のイベントなど関係ない。相変わらず部室の古びたモニターの前で、新作動画の編集に追われている――はずだった。
「みんな、重大ニュースよ!」
部室のドアを勢いよく開け放って飛び込んできたのは、部長の宇喜多真琴だ。彼女はなぜか頭に悪魔の角のようなカチューシャをつけている。
「なんだよ急に。編集で忙しいんだけど」と俺ことコウタがため息をつくと、真琴はスマホの画面を突きつけてきた。
「今日さ、ハロウィンだから部活ついでに上野公園に行こうって話になったじゃない? で、ネットの噂で見つけたんだけど、上野公園の入口にあるあの卵型の有名な石――『上野恩賜公園』って彫ってあるあれ、実は『百魔石』っていう封印石らしいのよ!」
「は? 百魔石?」
「そう! 昔からそこに封じられた魔物たちが、ハロウィンの夜だけ仮装に紛れて動き出すっていう都市伝説があってね。部活のロケ兼調査として、ちょっと動かしてみようと思って!」
「おい、勝手に変な観光名所を動かすなよ! バカかお前は!」
俺のツッコミを華麗にスルーし、真琴は「すでに階節君と愛華ちゃんも現地に向かってるわよ! 出発!」と強引に俺の腕を引っぱった。
――かくして、俺たちはハロウィンでにぎわう上野公園へと連行される羽目になったのだった。
夕暮れ時の上野公園。周辺は仮装をした若者や外国人観光客でごった返している。
京成上野駅の近く、例の卵型の石の前に到着すると、すでに元ラグビー部の階節と、巨乳美女の愛華が待っていた。
「お疲れっす! 噂の百魔石、さっきみんなで力を合わせてゴロゴロと転がしてみたんスけど、本当にすんなり動きましたよ!」と階節が筋肉を誇示しながら笑う。
「なんか、石の底から変な希ガスみたいなのが出てきて……すっごく空気が怪しくなってきたんです」と、愛華も胸元を抑えながら不安そうに呟く。
「なっ、バカお前ら本当に動かしたのかよ……!」
俺が頭を抱えたその瞬間、――ゴゴゴゴォッ!! と足元が凄まじい地響きを立てて揺れた。
例の「百魔石」の表面に刻まれた文字が怪しく赤く光り、ひび割れが走る。
「ふははははっ! 我を解き放ちし者たちよ、感謝するぞ!」
石の割れ目から、紫色の禍々しいモヤとともに、全身タイツのような奇抜な格好をした謎の魔物たちが次々と飛び出してきた。
ハロウィンの仮装パーティーとは到底思えないリアルな異形の者どもが、周囲の観光客に向けて一斉に襲いかかる。
「大変だ! 街が魔物たちにパニックにさせられてるわ!」と真琴。
「いや、お前が動かさなきゃこんなことにならなかったんだよ!」と俺。
その時、闇夜の向こうから、聞き覚えのあるトコトコという足音が響いた。
「やれやれ、これだから地球のゆとり世代の魔物は困るねえ」
見れば、いつものレッサーパンダ型ロボット、ポコスケが、ひょっこりと現れた。
「ポコスケ! なんでお前がここにいるんだよ?」
「決まっているだろ。超宇宙意識のセンサーが、上野の街からやたらと濃い『変態的な妖気』を感知してね。駆けつけてみれば、君たちがまた余計な封印を解いたってわけさ」
ポコスケは呆れたように頭を抱え、すかさず異次元巾着袋から怪しげな新兵器を取り出した。
「こうなったら、あの魔物たちの暴走を止めるには、彼らの『エネルギーの源』を直接吸い取って無力化するしかないね。……コウタ君、助太刀するよ!」
「おい、どうやってやるんだよ!」
「決まっているだろ、例の『あれ』さ!」
ポコスケが放り投げたのは、かつて稚内でも大活躍した『超電磁オナホール』のアップグレード版――『ハロウィン仕様・量子パルスオナホ』だった。
メカは宙を舞うと、一番凶悪そうな魔物(カボチャの頭をした巨大な巨漢魔物)の急所めがけて一直線に食らいついた。
「はうあっ!? なんだこれ、たまらんっ……! 体の芯から熱いエネルギーが吸い取られていくぅっ……!」驚いた前田利家のような顔だ。
カボチャ魔物は悶絶し、汁を流しながらその場で崩れ落ち、あっという間に小さな光の粒子となって消滅していく。
「すっげえ! ポコスケの道具、相変わらずエグいけど効き目バツグンっすね!」と階節が感心する。
「よし、残りの雑魚どもも一網打尽にするわよ!」
真琴の号令の下、俺たちは次々と現れる魔物たちを相手に――なぜか現場で大乱闘の末、強力なエネルギーを浴びせて次々と昇天させていくことになった。
小一時間ほどのドタバタの末、上野公園を暴れていた魔物たちはすべて浄化され、石の封印も無事に(?)元の状態へと収まった。
ハロウィンの仮装をしていた一般の人々は、「今のショー、めっちゃリアルで過激だったけど最高だったね!」と勝手に勘違いして拍手喝采を送っている。やれやれ、東京の人間はこれだからお気楽で助かる。
「ふう、疲れたわね……」
事件が解決し、すっかり夜が更けた上野の街で、俺たちは疲労困憊でベンチに腰掛けた。
「でも、いい映像が撮れたし、今度のAVの新作は『ハロウィン特殊部隊スペシャル』で決まりね!」と真琴は相変わらず元気いっぱいだ。
「疲れたご褒美に、みんなで温かいものでも食べに行きましょうよ」と愛華がほほ笑む。
「そうだな。じゃあ、近くの屋台で白子鍋でも食いに行くか」
俺が立ち上がると、ポコスケも「僕も参加するよ、もちろん奢りだよね?」とちゃっかりついてくる。
こうして、ハロウィンの夜の上野公園を揺るがした大パニックは、いつものように俺たちのバカバカしくも濃厚な青春(?)の一コマとして、幕を閉じたのだった。




